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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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初めての説得に挑戦!

「……で、コレはどういうことなんだ?」

 俺と俺の体を奪ったクロノワール。それから、いまだに肩を震わせているリリンさんは、ガスターとオルの前で正座をさせられていた。

 ちなみに、レムちゃんはヌイグルミ状態の俺に抱きついたまま寝ている。正直、俺にもたれ掛かるような格好で眠りについているから、膝がかなり痛い。神経がないから、イメージの問題なんだけどな。

 それと、オルの視線が怖い。自分の中にある綿のような物が減った気がする。

「ふんっ。なぜ粗大ゴミにそんなことを言わねばならんのだ」

 あ、粗大ゴミ扱いなのは、メイド隊での共通認識なんだな。

「……誰が粗大ゴミだ! 誰が!!」

 そう言われたので、俺はモコモコな腕を前に突き出した。他の2人も同じことを思っていたらしい。

「お、……お前らなぁ……!」

「ねぇ? パパ。そんなことより、どうしてこうなったのかだよ?」

「……それもそうだな」

 オルに宥められて落ち着きを取り戻したガスター。本当にオルに甘い。


 一通りの事情を説明すると、ガスターが確認のために口を開く。

「ってことは、アホの中に脳筋バカがいるんだな?」

「誰がアホだ!」「誰がバカだ!」

 2人で同時に異議を申し立てると、リリンさんとガスターの2人に指を指された。倍返しされた気分だ。……くそぉ。

「私の前で魔王さんを寝取ろうとするんだもん。ボート、嫉妬に狂った醜い女よ」

「黙れ! 貴様さえいなければ、初代様は私のモノだったのだ! ……それを貴様が…………!!」

 あ、あれ? 俺のご先祖様……だと思うけど、すんごいモテモテじゃねぇか? おかしいなぁ? 俺もその遺伝子、受け継いでいるはずなのに……全然モテていませんけど?

「おい、クロノ」

「なんだ、ゴミ屑」

「…………なんでこんなアホの体を奪ったんだ? もっといい素体ならいくらでもあっただろうに」

 素体ってのが、何を指すのか知らねぇけど。そんな疑問を吐き出したガスターに、嫉妬に狂うクロノワールが言い返す。

「はっ! 愚問だなゴミ屑。私が魔王様と1つになりたいからに決まっておるだろう。……本来ならば、初代様のお体が良かったのだが、その辺のゴミならばいざ知らず、初代様の死を愚弄するのは、本末転倒だ。……故に! この体で我慢しておるのだ!!」

 なんか……堂々とディスられた気がする。それと……クロノワールの愛が重い。

「……脳筋バカからYDB(ヤンデレバカ)になったな。おめでとう」

「うむ。もっと誉めるがよい」

 それは昇格なのか?

「……で? 俺の体、いつになったら返してくれるの?」

 コントの方にばかり話が進むから、肝心な内容が何1つ進んでいない。

「ふん。貴様はヌイグルミの方がお似合いだぞ?」

 この野郎……正確には女性だからアマァって言うのが正しいけど。

 仕方ない。正攻法じゃ無理っぽいから、『挑発されて、頭にきたからやってやったら元に戻っちゃった!? 大作戦』っでいこう。

「っとかなんとか言ってよぉ? 本当は出来ねぇんじゃねぇの?」

「……何を言ってるんだ。そ、そんなわけ無いだろう」

 よし。怒りでプルプルしている。あともう一押しすれば……いける!

「だって、バカだもんなぁ~仕方ないよなぁ~」

 どうだ!

「ふ、ふんっ! ば、バカにするなよ! ヌイグルミ風情が……と、言いたいところだが……きょ、今日は調子が悪いから明日にしようかなぁ~……なぁ~!」

 ……俺は気づいてしまった。

 い、いや、まさか! まさかだよね?

「もしかして……本当に出来ないわけじゃねぇだろうな?」

「そ、そんな訳ないだろ!?」

「なら、やってみろよ!? ねぇ! お願い! 証明したらもう一回体貸して上げるからぁ!!」

 クロノワールとのやり取りに、どんどん不安が募っていく。

「…………今日じゃないとダメ?」

「男の俺がやると気持ち悪いだけだし、物凄く不安になるから今やって欲しい。マジで」

 ぬいぐるみながら必死の形相で頼む俺に、クロノワールは現実の厳しさを教えてくれる。

「……やり方知らない」

「「「……ドンマイ」」」

 結果を聞いた俺を除く3人が口を揃えて言いやがった。

「やかましいわっ!! えっ? マジで無理なの出来ないの?」

 言い募るヌイグルミの俺に、俺の体を奪ったクロノワールが首をゆっくりうつ向かせる。

「ま、まぁ、ゴブリンのヌイグルミで良かったじゃない。スライムとかも可愛いけど、それって人気ナンバーワンなんでしょ?」

「そ、そうだよ! オル、大事にするよ!!」

「……ザマァ」

 リリンさんとオルが必死にフォローしてくれてる(ガスターはあとでボコってやる!)。

「……はぁ。まぁいいや。それよりもリリンさん」

「なによ?」

 俺が真面目なトーン(ヌイグルミの時点でシュールだけど)で口を開く。

「ドーラの行方ってどうなってるんですか?」

 そもそも、こんな事態になったのは神界の奴等がドーラを連れていったからだ。そう思わないとやってられない。

「ヌイグルミの魔王ちゃんが行っても無駄でしょ?」

「いや、そうだけど。体が返ってこない以上、どう足掻いても無理でしょ?」

 こうなったら、ヌイグルミの状態で助けに向かうしかない。

 そう思っていたんだが、予想外と言うか、やっぱりと言うか。

「……神界の奴等が関係あるのか?」

「あぁ? まぁ、ドーラって竜の女の子が神界に拉致されたらしいんだよ。そんで、向こうは俺を要求してきたわけだ」

 事情を知らないクロノワールにザックリと説明する俺。するとクロノワールの体から魔力があふれでてくる。

「リリアーデ。その場所はどこだ?」

「はぁ~……あんたは本当に連中が憎いのね」

 呆れたように言うリリンさん。

「当たり前だ。初代様を追い詰めたのも、全てはオーディンのせいだ。奴を殺せるのならば、私は何でも利用する」

 瞳を真っ黒にしてそんなことを告げるクロノワール。……ちょっと怖い。

「まぁ、そんなところに仇が来るとは思えないけど。いいわ、取引場所に案内してあげる」

 それだけ言うと立ち上がるリリンさん。

「これが終わったら、先程の続きをするぞ。リリアーデ」

 つられるように俺の体が立ち上がる。

「よっしゃ! サクッとドーラを取り返すぞ!」

 そう言って、俺も……お・れ・もぉ!

「レムちゃん、起きて!?」

 お願いだから! ここで立てないとか、俺だけカッコ悪いよ!


 こうして、俺の体を占拠したクロノワールと共にヌイグルミの俺は、取引場所へと向かった。

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