再び、拉致に挑戦!
お久しぶりです。
なかなか更新できなくてすいません。頑張って更新していきますので、楽しみにしていてください。
それでは、本編の方、どうぞ!
「はぁ、はぁ、……つ、着いたぁ」
スパインさんから逃げるように飛んできた俺は、山小屋の前で大の字に寝転がった。
もうヘトヘト。1歩も動きたくない。
「はぁ……はぁ……」
魔王城からここまで、歩いてくる分には、こんなに疲れない。多少の汗を掻くくらいだ。
だけど、『風の羽衣』で移動するとなると、話は別だった。
うさぎ跳びみたいに、膝を曲げ伸ばししないと進まない。……つまり、魔王城からココまでうさぎ跳びをしてきたわけだ。おかげで、飛びかたのコツはつかめたけど。
「あ、魔王様。お帰りぃー」
山小屋の中からヒョッコリ顔を出すオル。どうやら、中に入れてもらえたらしい。
今朝はオルも俺も、小屋の中に入れてもらえなかったから、少しは落ち着いたんだろう。
「お帰り……じゃ、ねぇだろ」
早々に逃亡しやがって。……まぁいいや。
「ドーラは?」
「それが、……家の中に居ないの」
「いない?」
大の字になっていた俺は、嫌な胸騒ぎを感じながら、山小屋の扉を開いた。
小屋に着いてから、早くも30分が過ぎた。
どこを探してもドーラの姿がない。
「出掛けてるだけかなぁ?」
「……そうだといいんだけどなぁ」
どうにも嫌な予感がする。そして、今までの経験から、こういうのは大概当たる。
「魔王様、外が騒がしくない?」
「……そうだな」
オルに言われて耳をすませると、バサバサと羽ばたいているような音が聞こえる。しかも複数だ。
「オル」
「うん」
オルを背中にオンブして、戦闘に備える。
「扉、開けるぞ?」
木製のドアノブに手を当てて、外が覗ける程度にゆっくりと扉を開いた。
「おい、居たか?」
「いや、見当たらねぇぞ?」
アイツら……いったいなんなんだ?
青いウロコで身体中を覆っているのと、ドーラが竜になったときのような姿をしている。たぶん竜族なんだろう。それが、2体もいる。
誰かを探しているみたいだけど……。
「魔王様」
俺とオルなら問題なく対応できるだろう。
そう結論付けた俺は、大きく扉を開いて外へと出た。
「誰か探してるのか?」
なるべくフランクに喋りかける俺。
「「いたっ!!」」
「「へぇ?」」
俺の姿を見るなり襲いかかってくる竜族の男共。
「探してたのは俺かよ!?」
太い幹のような脚で捕まえようとしてくる1頭の竜。
「『ビッグシールド』!」
その竜と俺の間に大きな盾を出現させる。
捕まえようとしていた脚は盾に阻まれ、ガリガリと鉄を削るような音をたてる。
もう1体は盾の横へ移動して、同じように俺を捕まえようとしていた。
「悪く思うなよ……『剛打』!」
しかし俺は、タイミングを見計らってカウンター気味に魔力の込めた拳を腹部にいれる。
「ぐぶっ!!?」
見事にはいった一撃で、竜族の男は泡を吹いて気絶。起きるまで時間がかかるだろう。
「あと一匹!」
オルの体制と拳を構え直し、残り1頭をしっかりと見る。
「……………………」
「どうした? 捕まえないのか?」
黙ってしまった相手を軽く挑発する。
しかし、竜は突っ込んでくるどころか、ニヤリと笑みを浮かべた。
「姉さん! 今ですっ!!」
突然、叫ぶ竜。
何かの合図なのかと周りを見渡す。
そして、――――ソイツは、俺の背後から襲ってきた。
「隙ありぃ!!」
「なんのっ! 『硬』!!」
左腕を掲げて、身体中に魔力を注いで固める。
ガリガリと聞きたくない音が頭上から聞こえる。けど、痛みはない。完璧に防げている。
「ちっ!」
敵は、舌打ちをしながらも、俺の背後に着地する。
俺はその隙を逃さず、攻撃に移る。
「『剛打』!」
魔力を右腕に集中させ、体を捻り、右腕を振り抜く。
しかし、相手は、俺の頭上を越えて、俺が気絶させた男共の前に立っていた。
「おい、あんた達、シャキッとしな! 男の癖にだらしがないよっ!!」
「すいません。姉さん……」
「面目ねぇです……」
言葉だけを聞いているとヤクザ映画を見ているみたいだ。
ただ、気を抜くことが出来ない。あの女の人だけ、格が違う。
本気でやっても勝てるかどうか分からねぇ。クサリさんなら勝てるかもしれんけど。
「まぁいい。そこで寝ときな」
女は、俺の方へ向き直り、突然指を指してきた。
「あんた! なかなか言い腕じゃないかい!」
「お、おう」
なんか誉められた。
「だけど、……だからこそ許せないね」
拳をプルプル震わせながら俺を睨む女性。目線だけで人を殺せそうだ。
ただ、
「ちょっと待て。……俺、なんかした?」
恨みを買うようなことをした覚えがない。……強いて言うなら、ドーラに心配をかけたことぐらいだろうか。
「……あんた、惚ける気かい!?」
「惚けるも何も、身に覚えがないんだよ」
懸命に伝えると、納得した……のかな? 依然として拳は握られたままだけど、対話に応じてくれるようになった。
「……いいだろう。教えてやろえじゃないかい!」
女は、腕捲りをして言う。
「あたしの娘を傷物にしたそうじゃないかぁ!」
「「………………………………………………はぁ?」」
キズモノ?
あまりにも突飛な単語にオルとハモった。
「あたしの娘って、誰だよ?」
「あたしはドーラの母親だっ! 知らねぇとは言わせねぇぞ!!」
「「ドーラの母親!?」」
おいおい! ドーラの母親って、こんな感じなのか!?
あのノンビリマイペースな性格からは、想像できない母親だ。
ドーラは全体的に丸いけど、この人は尖っている。性格も体型も、似ているところを探すのが難しい。
その事実に唖然としていると、オルが背中を降りていく。
「魔王様……」
「ど、どうしたんだよ?」
今、オルの力がないとピンチなんですけど。
「ドーラとやっちゃったの?」
「やっちゃった……てのは、キズモノの事か……?」
俺が恐る恐る聞くと、オルは静かに首を降る。
「してない! 断じてしてない!!」
残念なことに俺は童貞のままだ。……記憶が確かなら。やばい、すごく不安になってきた。
「……本当に?」
「……あ、あぁ! 本当だ!!」
本当に自信がなくなってきた。大丈夫だよなぁ。俺。
「テメェ! なに無かったことにしようとしてんだ!!」
「事実! なにもないんだよ!!」
誰でもいいから話を聞いてくれぇ!
「「最低!」」
なぜかオルとドーラの母親がハモった。しかも、俺への罵声で。
「勘違いだ! ってか、ドーラに聞いてみろよ!?」
そうだ! そもそも、ドーラに言うことがあって来たんだ! こんなところで罵声を浴びに来たわけじゃない!!
「そうだ、ドーラは何処に行ったの?」
オルが正気に(元々正気だったけど)戻る。そして、ドーラの母親に聞く。が、
「あんたらが誘拐したんじゃないのかい!」
「いや! してねぇよ!?」
どうしてそうなるんだよ!?
「ってか、そっちも行方を知らねぇのか!?」
ってなると本格的に心配になってきた。
「……ちょっと、休戦だ。オル、ドーラを探すぞ」
「う、うん。分かった」
オルの生返事を聞いて、母親に背中を向ける。
「待ちなっ!? どこ行くんだい!?」
「悪いけど話は後だ! ドーラを探す方が先だ!」
俺はドーラの行きそうなところを当たることにした。
無事……だよな? ドーラ……。




