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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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久しぶりのベッドに挑戦!

 ここ最近なかったんだけど……気がついたらベッドの上だった。

「………………たしか、蜂の駆除をしてた気がするんだけど」

 体を起こすと少し手首が痛む。

 どうやら、殴ったときに当たりどころが悪かったみたいだ。捻ったみたいなズキズキとした痛みが脳に届けられている。

「あぁ! 魔王様ぁ~!」

「おう、おはよう。心配かけたみたいだな」

 オルが部屋に飛び込んでくる。

 手に持っていた桶は、水が入ってたみたいで……部屋がぐしょ濡れだった。

「もう! 心配したんだよ!? お空にビューンって連れてかれちゃったんだもん!」

「……その後、どうなったんだ?」

 かなり久しぶりに記憶が飛んでいる。

 たぶんだけど、『誰か』が俺の体を使ったんだ。

「分かんない」

「わかっ……そりゃあそうか」

 息が出来ないほど上空にいたんだし。誰かが見ているわけないよなぁ。

「あっ? ……ダーリン、起きた?」

「おう、ドーラもおはよう」

 いつも元気なドーラが、大人しく思える。

 俺の見間違いか?

「ダーリンは、ドーラのこと……必要?」

「…………………………」

 ドウイウコト?

 必要ってのは、…………本当にどういうことだ?

 俺が返答もせずに悩んでいると、ドーラは悲しい顔をして部屋を出ていってしまった。

「あっ! おいっ!!」

 いったいなんだったんだ?


 腹が減っていたので、ドーラを心配しながらも、朝食を済ませた。

 さて、腹も満たせたことだし、

「オル。ドーラのことなんだけど、何かあったのか?」

「……魔王様って女心が分かってないよね」

「はぁ? オンナゴコロ?」

 なにそれ? 美味しいの?

 そんな冗談は口にしなかったけど、確かによく分かってないと思う。自覚があるだけマシだと思うけど。

 そんな俺にプンスカ怒っているオル。

「そうだよ! 女心が分かれば、ドーラの気持ちだって簡単に分かるはずだよ!!」

 そう言われてもなぁ……ドーラの場合は、竜心なんじゃねぇの? どっちにしろ、全く分からないけど。

「とりあえず、山小屋に行くか」

 たぶん、そこに居るだろうと、適当に思いながら足を進める俺とオル。


 そして早いことに、何も分からないまま山小屋へとついてしまった。

 ただ、ドアが開かない。

「おーい、ドーラ。中に入れてくれぇ」

「イヤ!」

 ドンドンと扉を叩くけど、全く開く気配がない。

「なぁ? せめて、何が気に食わなかったのかくらい教えてくれねぇか?」

 理由すら分からないんじゃ話し合うことすら難しい。

 そう思って聞いたんだけど……

「自分の胸に手を当てて考えてよっ!!」

 ……怒鳴り返された。

 言われた通り、手を当てて考える。

 記憶のある間では思い当たる節はない。

 少なくとも、ドーラに何かをしたつもりはない。

「……もしかして、気絶した後に何かあったのか?」

 そうだとしたらお手上げだ。

 その時の様子を知ってるのが、誰もいない。


 ……………………誰もいない?

 なら、なんでドーラは怒ってるんだ?

「オル。俺ってどうやってベッドに運ばれたんだ?」

 オンブされているオルに聞く。

 すでに俺の背中は、オルの特等席となっている。

「えーっと、地上まではリリンとドーラで、そこからはスパインが運んでたよ?」

 つまり、リリンさんは何かを知ってるはずだ。

 ばずなんだけど………………

「聞きにくいなぁ~」

 何で、よりにもよって、リリンさんなんだよ。

 なんか、運命的な何かからイジメられてるとしか思えない。

「しょうがない。リリンさんに話を聞きに行こう」

 俺とオルは山小屋を後にして、魔王城へと引き返した。


 手がかりを求めて、魔王城に戻ってきたんだが……甘い香りで城内は満たされていた。

「朝はこんな匂いしてなかったぞ?」

「う~ん。美味しそうな匂いだね? 魔王様」

 オルは目を細めて匂いを堪能している。

 確かに綿菓子のような、ハチミツのような……そんな甘くていい匂いだ。

「……とにかく、リリンさんの所に行くか」

 魔王城、リリンさんの書斎へと行くために階段を昇っていった。


「次、城下町に100個よ! 急いでっ!」

「それはぁ~、墓場に届ける分ですぅ~」

 リリンさんの書斎は、壮絶な仕分けが行われていた。

 2番じゃダメなんですか? の方じゃない。どこにどの物を運ぶかの仕分けだ。物までは分からないけど、この匂いからしてお菓子だろうか?

 そんな怒号の飛び交っている部屋には、肝心のリリンさんがいない。

「すいません、スノキーさん。リリンさんがどこに居るか知りません?」

 たまたま近くにいた雪女のスノキーさんに行方を聞く。

「さぁ~? お外にぃ~散歩でもぉ~してるんじゃぁ~ないでしょうかぁ~?」

 いつも甘ったるい口調のスノキーさんだけど、今日は1段と甘ったるい気がする。匂いのせいだろうか?

「そうですか。ありがとうございます」

 その場を離れようと、まわれ右したとたんに……蜘蛛の糸で拘束された。

「す、スパインさん……?」

「……………………………………」

 無言でにっこり微笑むスパインさん。

「手伝って?」

「…………はい」

 有無を言わせない重圧で、首を縦に振らされた。


「速度か落ちてるわよっ! もっと速くっ!!」

「無茶言わないでくださいよぉー!?」

 これでも、相当頑張ってるんだよっ!

 今作ってる(と言うよりは包装している)のは、ハチミツでできた石鹸だ。

 『バビー』が大量に蓄えたハチミツは、食べたり飲んだりして消費しているらしいんだが、それでも追い付かないらしい。

 だから石鹸にして、各地域に配ろうというのだ。

 ……なんで消費しているのかだって?

 俺にもよく分からん。

「せめて、私の半分の速度は出しなさいよっ! じゃないと日が暮れるわよっ!!」

「半分って……」

 1秒で3個ペース……ですけど?

 腕が2本しかない人間になんて注文するんだ!?

「とにかく、もっと速く手を動かしなさいよっ!」

 なんか今日のスパインさんは、怒り気味だ。

 この甘い空間でストレスがたまってるんだろうか?

 ちなみに、スパインさんは辛党だ。辛口ではないけどな。

「そこのは、墓場の追加分よ! あと300は出るからっ!」

 墓場で石鹸って……どこを洗うんだよ。墓石?

 やたらと墓場に届けられる石鹸を案じながらも、手を動かして包装していく。

 そういや、ドーラをほったらかしたままだ。

 だからといって、この場を逃げる……もとい、抜け出せねぇし。

 仕方ない、後でスパインさんに怒鳴られるとしよう。

「『水の羽衣』!」

「魔王君? なにしてんの?」

「いや、逃げ出そうと思って」

「……………………」

 にっこり笑顔で『威圧』してくるスパインさん。

 俺の体にスパインさんの魔力がまとわりついて動きを封じようとしてくる。

 だけど、

「そんじゃあ!!」

 俺は平然と走って部屋を出ていく。

「あれっ!? 私の『威圧』が効いてない!!?」

 後ろでスパインさんが驚きの声をあげていた。

 ここ最近気づいたんだが、『水の羽衣』を発動していると魔力による拘束が効きにくくなる。

 まぁ、俺の『威圧』も効きにくくなるから、一長一短ってところかな。


 部屋を抜け出した俺は、城の外へと出た。

 気絶した後に何が起こったのかを知っているはずのリリンさんを探すために。

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