初めての巣に挑戦!
「このまま突っ込んで打ち落とすぞ!」
「うん!」
ドーラに指示して、巨大な蜂の巣へと飛んでもらう。
「『フレアアロー』!」
巣を守るように飛ぶ『バビー』を打ち落としながらも、徐々に距離が近づいていく。
よしっ! このまま進めばっ!!
そう思った瞬間だった。
「なっ!?」
「なにっ!? あれ!?」
蜂の巣からとびきりデカイ蜂が出てきた。
ただでさえ1メートル弱の大きさを誇る『バビー』。
だけど、目の前に出てきた蜂は、10メートルを越そうとしていた。
「あんなの! どっから出てきたんだよっ!?」
とりあえず、回避しねぇと。
「ドーラ! 1度離れるぞ!」
「う、うん!」
大きく旋回して、巨大な蜂から離れていく。
一応、後を追われるか危惧したけど、飛ぶ様子はない。
「オル。あの巨大な蜂は、なんなんだ?」
オルと合流し、地上へと降りた俺達。
突然出てきた規格外な蜂について聞いた。
「う~ん……分かんない」
どうやら、オルも知らないらしい。
「どうする? さすがに俺らだけじゃ、何ともならん大きさだぞ?」
「そうだよなぁ」
ドンの言う通りだ。あんなデカイのを相手にできる気がしない。
「リリンさん達が来るのを待つしかないかなぁ」
「それだけ余裕があればいいけど……」
「何言って……嘘だろ…………」
オルが、空を見上げながら珍しく消極的なことを言う。
つられて俺も顔をあげたが、……不味いことになっていた。
「分身……じゃないよなぁ…………」
とびきりデカイ蜂が、5匹に増えていた。おまけに、空を飛んでいるヤツもいる。
不味いとしか言いようがない。
「と、とにかく。1匹でもやっつけるしかなさそうだな」
「う、う~ん……倒せるかなぁ」
まぁ、不安だよなぁ。俺も相当無理をしないと倒せる気がしないし。
「ドーラ、アイツの背中に運んでくれねぇか? 何発か殴ってくる」
「りょーかい!」
ドーラに運んでもらい一番近くを飛んでいた蜂に降ろしてもらった。
幸い、『バビー』の群れはあらかた倒したので、襲われることもなかった。
「うるせぇな」
羽音が凄くうるさい。業務用の巨大な扇風機が、近くにあるみたいだ。
「『剛打連拳』!」
試しに、巨大『バビー』の背中を殴り付けてやる。
しかし、
「堅ぇ……」
1発殴ってやめた。
全然ビクともしねぇし、殴ってるこっちの方が酷いダメージだ。
「打撃がダメなら……『炎の鎧』! そんでもって、『フレアアロー』!!」
羽の付け根を狙って火矢を放つ。
しかし、燃えるどころか、着弾する前に火が消えた。
「マジかよ……」
いや、羽を狙ったのがダメだったんだな。
そう思い、足元を狙う。
背中なら燃えるだろ。
「『フレアアロー』!」
今度は着弾した。したけど、……
「燃えねぇなぁ……」
火花を散らして消火した。
どうやら、硬度も耐火も強いらしい。
「なら、斬ってやる!」
俺は、『水の羽衣』を発動し、右手を剣状に変形させる。
そして、背中を斬りつける。
「……1番効果があるけど…………」
深さ数ミリの傷が付いただけ。
とても殺せるような代物じゃない。
「どうすりゃ、いいんだよ!?」
魔物の背中で、頭を抱える俺。
そんなことをしても、なんら解決しねぇけど。
悩むこと数分。
「魔王様!」
ドンの背中に乗ったオルが、俺の元へと飛んできた。
「リリン達、地上部隊が来たよ!!」
その知らせを聞いて、安堵した俺。
ただ、場所が悪かった。
「うおぉ!!?」
突然、頭を押さえつけられた。
「魔王様ぁー!!」
オルが遠ざかっていく。
「いや、これは俺が上がってるんだな」
乗っていた巨大『バビー』が、高度をあげたんだ。
徐々に巣からも遠ざかっていく。
「ヤバイっ! このままだとっ!!」
空気が徐々に薄くなっていく。
周りの気温もガンガン下がって、耐えれないほどになってきた。
「『炎の鎧』」
体温だけでも確保しようと、全身を火だるまにする。
しかし、あまりにも空気が薄いため、なかなか燃えない。
「あっ……」
ヤバイ……意識が朦朧としてきた。




