初めての害虫駆除に挑戦!
何度も言うけど、虫じゃなく魔物だからな。
「オル!」
「はい!!」
ドンの背中に乗り、縦横無尽に空を飛んでいるオル。
そんなオルに1メートル弱の蜂を投げ渡す。
「シュウ~ノウ~!」
どこかノリノリだった。
水晶を取り出して、投げ渡された魔物を消し去る。
「ドーラ! 次行くぞ!」
「うん! ガンガンいっちゃうよ!」
巨大な巣から離れた位置で、俺らは大量の『バビー』と格闘していた。
『バビー対策本部』からの指令により、俺とオル、竜属のドーラとドンが、実行部隊として任命された。
今は、退治の対象である『バビー』の巣へと向かって優々と飛行していた。
「ってか、俺ら2人したいないってどうなんだよ?」
城には暇人とかがいるだろうに。どうせ、自分の部屋でダラダラしてるんだろう。
「仕方ないよ。竜族で動けるのがドーラとドンの2人だけなんだもん」
「どういうことだ?」
他にも竜族ってたくさんいたよなぁ?
「他の奴等は、別の場所に遠征中でな。タイミングが悪かったってやつだ」
っと、ドンが説明してくれた。
「遠征って、どこに行ってんだ?」
「……遠征は、遠征だ」
いや、答えになってねぇけど。
どうも答えたくないらしい。これ以上聞くなと、目で訴えられた。
「でも、地上から魔法支援してくれるから、オルたち2人がメインってだけだよ!」
「まぁ誰もいないよりはマシかぁ」
ドーラ達の背中に揺らされること30分。
目の前には、巨大な花を咲かせた大樹があった。
花のサイズから大樹と思える部分は、茎に当たるんだろうな。
「でっけぇ花だな」
「『巨花』って品種だよ」
オルが目の前の花について説明してくれた。
1年中咲いているけど、季節によって大きく開かれた花びらの色が変わるらしい。
春は淡いピンクで、夏は爽やかな水色。秋は艶やかな紫に、冬は雪のように真っ白になるらしい。
「蜜は年中採れるのか?」
「ううん。春と秋だけ。『バビー』は、冬支度のために『巨花』の蜜を集めるんだよ」
俺は、へぇーと相づちをうった。そこまでの知識をよく頭にいれたもんだ。っと思ったら、小さなメモを持ってた。
そんな俺達は、『巨花』の横を通りすぎ、『バビーの巣』を目指した。
さらに飛ぶこと1時間。
途中で休憩を挟んで、ようやくたどり着いた。
ただ、……
「……俺ら2人で大丈夫か?」
「……ちょっと無理かなぁ?」
500メートルくらい離れているのに肉眼ではっきりと分かる。ここからで手のひらサイズだから、……相当な大きさだな。
そんな巨大な巣の周りを大量の『バビー』が忙しなく飛んでいる。
「遠くから1匹ずつ対処していくしかねぇかぁ」
「そうだね魔王様。ヒットアンドアウェイだね」
そうと決まれば話は早い。
俺はドーラの背中に、オルはドンの背中に乗って、空へと舞い上がった。
そして、話は冒頭に戻る。
まだかなりの量がいる。それに対して、こっちは4人。内2人は攻撃できないから、実際は2人だ。
「『フレアアロー』!」
フルパワーで5本の火矢を放つ。
狙いなんて定めなくても、数百、数千匹の蜂は、次々と燃えていく。
「オル!」
「分かってるよ! 『ワイルドウィンドウ』!!」
燃えて落下していく『バビー』の下でカマイタチが発生する。
巻き込まれた蜂は、抵抗することなくズタズタに切り裂かれて、燃えカスすら残さない。
魔王七つ道具の水晶の効果か。長い時間、同じ場所でカマイタチが発生している。
「今のうちだな。『フレアアロー』!!」
そこへ火矢を乱射する俺。
オルが発動した『ワイルドウィンドウ』の範囲が広いため、適当に撃ってもほとんど拾ってくれてる。
「よしっ! もう少し減らしたら、巣を狙うぞ!!」
「うん!」
『フレアアロー』と『ワイルドウィンドウ』の効果で大量のバビーは、残り百匹をきっていた。
俺は、だめ押しにと、火矢を放つ。
「くらえっ! 『フレアアロー』!!」
魔力を過剰に込めた火矢は、今まで撃っていた矢の5倍の太さとなり、7割り近くの蜂を燃やし尽くした。
「魔王様。そんなのができるなら、初めからやってほしかったの!!」
「ご、ごめん」
こうなると思わなかったんだよ。
とにもかくにも。これで巣に近づきやすくなった。
「さて、フィニッシュといきますか! ドーラ!」
俺は、ドーラに指示を出して、巣へと近づいてもらった。
その巣が、今まで以上の『怪物』であると知らずに……。




