召喚大会に挑戦!
「おいおい、マジで頼むぞ? おっちゃん」
今の俺には、おっちゃん発言に構ってられるほどの余裕はなかった。
「あ、あぁ……なんとか、頑張るわ……」
正直なところ、帰りたい。
ネグのくじ運により、クサリさんと当たるのは、決勝戦まで勝ち進んだ場合のみだ。
だけど、初戦が始まる前から、腹痛と頭痛で帰りたい気分だ。
「こりゃ、ダメだな。まぁ、その程度のおっちゃんだったってことか」
コイツ……言いたいことを存分に言いやがって! ってやる気を出させる作戦だろうが、今の俺には無意味だ。
むしろ出なくていいって言われたら、喜んで観客席に行くところだ。
「優勝賞金が凄いのになぁ~。残念だなぁ~」
「優勝賞金?」
なんだ、それ?
「いやいや、やる気のないおっちゃんには、手の届かない代物だから、気にしなくていいよ」
そう言われると、無性に気になる。
「分かった。やってやるから教えろ」
「初戦に勝ったら教えてやる。まぁ、スゲェお宝だから、期待しといて損はねぇぞ? この世の至宝って言えるレベルのな」
ヤバイ、俄然やる気が出てきた。
円形の闘技場に入ってから数時間。
俺とネグのペアは、8つあるうちの3つ目。Cブロックに割り当てられている。
クサリさん達は、Gブロックだ。
最初の内は、各ブロックでのバトルロワイヤル。
ステージの上にいる選手が、2組になるまで試合が続く。
相当な混戦となりそうだが、まぁ、参加者が500人を越えてるらしいから、仕方ないと思う。
「よし! おっちゃん! マジで頼んだぞ?」
「分かってるよ。あと、おっちゃん言うな」
俺とネグは、ステージへと上がっていく。
事前の資料には、ステージの広さやルールが記載されていたらしい。
らしいってのは、俺がこの世界の字や単位が分からないからだ。
「今のうちに確認しておけよ?」
「言われなくても分かってる」
目算で、1キロ四方ってところかな?
100人近くが一斉に乗れている時点で、かなり広いと思うけど。
所々、焦げた跡だったり、凹んだりしているが、このまま試合をするらしい。
「お待たせしました!」
穴が開くほど、ステージを凝視していた俺。
突然の大音量によるアナウンスに驚いた。
「これより、第3ブロックのバトルロワイヤルを開始します!」
もう!?
驚いている俺を放置して、ドラのような音が、周囲に鳴り響いた。
「おっちゃん!」
呆けていた俺の肩を叩くネグ。
どうやら、作戦を実行するらしい。
「おっちゃん、言うな! 『炎の鎧』!!」
未だにおっちゃんと呼ぶネグを背負う。
その状態で、得意技である『炎の鎧』をフルパワーで発動する。
「すげぇな!」
俺とネグを中心に2メートルほど離れた位置に、炎の壁が出現する。
魔王城での特訓で、こんな芸当も出来るようになった。
「感心してねぇで、早く準備しろよ?」
無尽蔵の魔力だが、俺の集中力という限界がある。
普段の使い方なら、3時間くらいは余裕だが、これだと10分持つかどうかだ。
「分かってるよ。あと……少しだ」
背中でコチョコチョと細工をするネグ。
分厚い火柱のせいで、外側の様子が全く見えない。
まぁ、いきなり5メートルの火柱が上がったら、驚いて逃げるだろうけどな。
「よし、出来た! おっちゃん、解除だ! 解除!」
だから、おっちゃんじゃねぇよ!
突っ込みをいれずに魔力を遮断する。
俺も手慣れてきたよなぁ。初めの頃は、水をかけて消火してたからなぁ。
焦げ跡だけを残して、火柱は消滅する。
あれだけいた選手が、4分の1くらいに減っている。
「おっちゃん! 上から来るぞ!」
まだ言うか!
俺は、ネグの警告を受けて、空を見る。
「すげぇな!」
肩から翼を生やした半鳥半人の人で、空が多い尽くされていた。
全部で、Cブロックの半分はいる。
「踏ん張れよ、おっちゃん」
「おっちゃん、おっちゃん言うな!」
イラついて集中できねぇだろうが!
ネグは、そんな俺の文句を聞き流し、準備していた筒を空にいる奴等に向ける。
「昼間の花火ってのも、いいもんだぜ」
言ってねぇで、早く撃てよ。
ネグは、マッチを擦って、筒の中に投入。
「発射!」
勢いよく飛ぶ火薬玉。
風を切る音で、耳がキィーンと使い物にならなくなる。
「テメェ! スゲェ音じゃねぇか!!」
説明には無かったぞ!?
飛んだ火薬玉は、上空にいた選手たちの目前で爆発した。
「たまや~」
いや、キレイな花火だけどよ。
巻き込まれてる人達のことを考えると、軽々しく言えねぇぞ?
「そんじゃ、おっちゃん。あとは、よろしく」
「はぁ? ……まぁ、いいけどよ」
ネグは、背中から降りると俺から離れていった。
今度こそ、4分の1くらいに減った選手らに向けて挑発する。
「かかってこいやぁー! 雑魚ども!!」
雑魚呼ばわりされたのが、気にくわないのか、全員が俺に注目する。
そして、
「『剛打連拳』!!」
目の前の選手達を場外へと吹き飛ばしていく。
綺麗に飛んでいくから、超気持ちいぃ!
後ろにいるネグは、なにも言えねぇみたいだがな。
予定を大幅に越えそうです。
6話までには……納めたいです。




