久しぶりのお転婆娘に挑戦!
「あのアホ! 加減を知らねぇのか!?」
姉さんを魔王城へと送り届ける途中。待ち伏せをしていたのか知らねぇけど、ブカブカの学ランを着た国王と戦闘することになった。
色々言いたいことはあるが、……今は、それどころじゃない!
「姉さん! 一時撤退するぞ!!」
「言われなくても分かっているわよ!」
そりゃ、そうだな。スゲー空気だもん。ピリピリしている。『サーチ』を使えなくても、ヤバい空気を全身で感じる。とにかく、今は逃げる!
「勝手に逃げないでもらいたい。せっかく盛り上がってきたんだから」
反転して逃げようとした矢先に、国王が俺らの逃げ道を防ぐようにして立ちふさがる。
だが、
「予想済なんだよ!! 『両手・剛打』!!」
ふり返りざまに指を組んで、魔力でガッチリ固めた両手を横に振りぬく。
逃げるのは、フェイク。両手だけに魔力を込めると攻撃する気満々に思われるから、セリフと共に体中に魔力を込めたんだよ!
「……そう来るのもね」
国王は、半歩バックステップして、俺の攻撃範囲から逃れた。
だけど国王、……一人忘れていねぇよな?
「『ハンマー』!!」
「グッ!!?」
俺の後ろにいた姉さんは、俺の肩を使って上空に飛び上り、銀色に染まった脚を振り下ろして国王に一撃を食らわせた。
国王もガードしたようだったが、バックステップをしたばかりで踏ん張りがきかなかったようだ。後ろに転がるようにして、ダメージを和らげた。
「……さすがに予想できなかっ………………」
国王は、立ち上がって拳を構えたところで、目を見開いて固まった。……どうしたんだ?
まるで見ちゃいけないモノを見てしまったかのような驚いた顔で硬直している。
「おじさん……何してるの?」
懐かしい声のした方を向くと…………クサリさんたちメイド隊が、いつも身にまとっている紺色ベースのメイド服を着たお転婆娘の姿があった。
横には、クサリさんがいた。ペアルックみたいだ。
「ち、違う! こ、これには、訳があるんだ!!」
慌てて弁明し始める国王。
そういや、カルラがここに来ているって聞いたばかりだったな。なんだっけ? 拉致されたとか言われたっけ?
「ねぇ……あの子は誰?」
1人で呆れていると、姉さんがクサリさんの隣にいるお転婆娘の紹介をしろと服を引っ張ってきた。
「あー……姫騎士領のトップに聖女って役職があるんだけど、……その独り娘だ」
俺が簡単に姉さんに説明していると、カルラはトコトコ走ってタックルを決めた。
「魔王様!」
「ひ、久しぶりだな」
身長のせいで、鳩尾辺りにすさまじいダメージが来る。……痛い。
「……この女性は、誰ですか?」
カルラは、頭をこすりつけるようにグリグリする。おかげで俺のHPが、ガリガリ削られている。
そんな状態で、姉さんを見る。……なんか、怒ってねぇか?
「お、俺の実の姉だ」
「魔王様の……お義姉さん?」
……なんか、ニュアンスが……まぁいいか。
「さぁ! カルラ!! おいで!!!」
国王は、片膝をついて、両手を大きく開いた状態でカルラに声をかける。
だが……
「魔王様! 魔界は、どんなところなんですか? 魔王城でいっぱい聞かせてください!!」
……ガン無視。ちょっとかわいそうに思えてくる。……いや、さっきまで殺そうとしてきた相手だから、まったく思わないけど。
カルラに腕を引かれて、城下町へと連れてかれた。
国王は、その場で放置プレイの刑に処され、俺と姉さん、クサリさん、カルラの4人で城下町を通り抜け、魔王城へと帰ってきた。
「ってか、なんでカルラがいるんだ? 姫騎士領の方はいいのかよ?」
「はい! ママに許可をもらってお仕事に来ました!!」
今は、食堂でカルラに色々と聞いていた。
ザッと聞いた感じだと、聖女から魔王城で仕事をしているクサリさんに修業を付けて貰えってことらしい。……クサリさんは何を思い出したのか、話の途中から体長を崩して部屋の掃除へと向かった。
カルラの話より掃除の方が心が安らぐらしい……。
「それで? 魔王様のお姉さんは、どうしてこちらに?」
「わからん」
「はい?」
「誰かが、何のために、俺の姉さんをコッチに呼んだのか、分からねぇんだよ」
俺の話に姉さんもうんうん頷いている。
そして、当の本人は、あっけらかんと
「まぁ、いいんじゃない? 死んでないし」
っとか言う始末。もっと現状を……って言いたいところだけど、自分にも思い当たる節があるため言わないでおく。
もうそろそろ、連載を始めてから1年が経とうとしてます。
……なんか、やりたいなぁーと思って、ただ今準備中なので、楽しみにしていてください!




