久しぶりの姉さんに挑戦!
新キャラ投入!
どういう経緯でこうなったんだろうか。
元気にきゃいきゃい騒いでいる人物に頭を悩ませながら、久しぶりに食べられると楽しみにしていたクサリさんの料理を口に運んでいるんだが……箸が進まない。実際に使ってるのは、フォークだけど……。
それもこれも全部、姉さんのせいだ。
「いや~、うちの弟がお世話になったようで!」
「いいえ、こちらこそ。お世話になっておりますので」
目の前でクサリさんと……物心ついてから十数年間……ここ最近は、一人暮らしを始めたため、全然会っていなかった家族の顔が、目の前でお酒を飲み交わしている。
「姉さん……」
家に居たときよりガブガブ飲んでる。ただでさえお酒に弱いのに……。
「いやいや! 可愛い弟が……うっ」
案の定、姉さんの悪酔いが始まった。酔うと面倒になるんだよなぁ……。
「はぁ~」
俺のため息も気にせずに、姉さんは、クサリさんに絡んでいく。
「こ、こんな立派になって……」
今にもハンカチで鼻をかみだしそうな……そんな泣き方をした。
「はい、全くです」
姉さんの弟自慢に相づちを返すクサリさん。社交辞令じゃないなら、跳び跳ねたいほど嬉しい。
……それにしても、クサリさんは、お酒に強いなぁ。
横に転がっている空きびんの数を10程度まで数えてからやめた。……バカらしくなった。ボウリングなら3レーン分は出来るんじゃないかな?
姉さんは、コップ一杯で顔が赤くなっていたけど、クサリさんはいつも通りだ。
最初は「メイドたる者、お客様と同じ席でお酒を飲むのは……」とか何とか言っていたのに、姉さんのアクドイ進め方のせいでクサリさんも同じ席に座らされている。
金と人の使い方は、本当に…………ヒドイ。あと酒癖も。
「ところで……ここ、どこ?」
…………。開いた口が塞がらないってのを実感した瞬間だった。
俺の姉さんこと、棚部葵が魔界で発見されたのは、俺が氷漬けにされている間。クサリさんが魔界の魔王城をくまなく掃除しているときだったそうだ。
「それにしても、本当に驚きました。まさか……」
そうそう。俺も聞いたときは、驚いた。
「「天井に吊るされてたとは……」」
姉さんが、こっちの世界にいるのも驚いたし、おまけに天井に吊るされてたなんてな。心配そっちのけで大爆笑だった。
「それにしても、魔王様のお義姉さんですか…………」
なんか、オルのお姉さんのニュアンスが違うような……まぁ、いいか。
「それがねぇ! 聞いてよ!! あんたの寂しーい新居に電撃訪問したのよ! っで!! 玄関ドアをぶち破ったら」
「おい! 今、俺の部屋のドアは、どうなってるんだよ!?」
「なんか、天井に吊るされてたのよ!!」
俺の抗議を華麗にスルーして、トンデモ発言をする姉さん。
直す暇(直す気とも言う)なんて無かっただろうから、誰でも入れるようになってるんだろうなぁ。
「姉さん……飲み過ぎ「違う!!」……はい」
絶対に飲み過ぎな姉さんの発言に、水しか飲んでない俺は、頭痛がしてきた。
ドアをぶち破って、こっちに来たって……なに? 俺のマンションの扉は、何処でもドアなんですか? 異次元までこれちゃうんですか? ってか、ならなんで俺はってなるよね?
一応、召喚されてこっちに来てるからね? 正式な手続き……と言えるのか怪しいけど、呼ばれてきてるからね? ジャジャジャジャーン! だからね? ハクションだからね?
などなど、色々と思うところがあったが、姉さんは、本当にドアをくぐった(ぶち破った)瞬間、天井にって状態だったらしい。
「それにしても、何故でしょうか? 誰かが召喚の儀式なるものをしたのであれば、その方のそばに召喚されるものですが」
黙って話を聞いていたクサリさんが、疑問を口にする。
「その召喚の儀式ってのを誰かがしてたんじゃないの?」
と姉さん。
いきなりこっちに来たのに柔軟に対応しているのは、さすが兄弟と言うべきか……。
「いいえ。葵様が、こちらに召喚された正確な時間は存じませんが……少なくとも、城につかえているメイド隊、リリン様、粗大ゴミ、オル様、ドーラ様は、外出中でした」
「粗大ゴミ?」
「気にしなくていいよ、姉さん」
俺が言うとフーンと言って、本当に気にも留めない態度を示した。今更というか、俺が言うのもなんだけど…………ひどい扱いだよなぁ……。
「それに、召喚の儀式では、かなりの魔力を消費します。実際に魔王様をこちらに召喚したときも、動くのが辛いほどでしたから……」
アレ? その後、チンピラ集団を簡単にあしらっていたような…………。
「どちらにせよ、こちらから亮様たちの世界へ帰る算段は、今のところありませんので……」
クサリさんがものスゴーク申し訳なさそうな顔をする。
「あぁあ、そんなのどうでもいいよ? 不出来な弟もこうして元気なようだし、問題ない! 問題ない!」
……俺が言うのもなんだけど、……お気楽だなぁ。
「で、ですが…………分かりました。微力を尽くしますので、それまでは、こちらの方で精一杯、お世話させていただきます」
クサリさんが微力だったら、俺なんか……顕微鏡でも見つけられないんじゃ。
「っで、ここが姉さんの寝室」
翌朝。
俺は、姉さんを連れて城のあちこちを紹介していた。俺自身、あやふやな場所があるから、覚えるいい機会だと思いながら、姉さんを連れてまわること約3時間。
昨日は、食堂で酔い潰れていたのと、突然の訪問で部屋の準備が出来ていなかったため、普段俺が使っているベッドに運んだ。
俺? 俺は、床で寝たよ? おかげで、身体中が痛い。
「いやー……なんか悪いね?」
「お礼ならクサリさんとリリンさんにしてよ」
姉さんが酔いつぶれてから、クサリさんがリリンさんに事情を説明した。
リリンさんも「部屋も余ってるし、全然問題ないわよ?」と言って、快く? 了承してくれた。セキュリティとしてどうなんだ? って疑問を持ったのは、俺だけだろうか?
「分かってるわよ」
まぁ、社会人だし問題ないだろ……とは思うけど……姉さんだからなぁ………………。
「あんた……実の姉を疑うのも失礼じゃないの?」
「う、疑ってねぇし!」
「まぁいいけど。案内ありがとね。それじゃ!」
姉さんは、言いながら俺の腕をつかみ
「昼御飯に行こう!!」
食堂へと引っ張られた。……いや、いいんだけどね。




