久しぶりの魔法に挑戦!
…………なんだコレ?
起きたら、身体中が氷付けにされており、身動き1つとれない状態だった。
とりあえず、今の俺に出来るのは、知識の少ない(無いとは言わない)頭でこうなるまでの記憶を遡ることだった。
アンリミテッド状態だったのを解除して、城の復興作業をして、……そうそう、クサリさんがやって来たんだった。
そして、久しぶりに魔力値とかを計ったら、マイナスなんて値が出て……やる気が出ない俺は、森の中でゴロゴロしていたんだ。
それで………………どうなったんだ?
「ガスター、目が覚めたようですわよ」
俺の顔を除き混むようにしてシェリーさんが見てくる。
……どうやら、ガスターもいるらしい。
「やっと起きたか。寝坊助野郎が……」
お前に言われたくねぇよ! って言ってやりたいところだが、口が動かない。
ご丁寧に全身氷付けだから、口を閉じた状態で凍っている。……ってか俺、よく生きてるな。
「おいアホ」
誰がアホだ!
「とりあえず、『炎の鎧』をやれ。そのままだと、死ぬから」
ま、マジで!?
ガスターの言葉を聞いて、すぐさま『炎の鎧』を発動させる。…………って!! 今の俺は、口が動かねぇえよ!! どうやって、発動させろと!?
「おい、どうした? 速くしないと死ぬぞ?」
無茶言うな!
「ガスター。三代目は口が動かないから、発動できないのでは?」
シェリーさん、ナイス!
「はぁあ? アレは魔法じゃねぇだろ? 魔術の範囲なはずだから、口が動かせねぇでも発動できるだろ?」
えっ? そうなの?
「……知らなかったって顔をしてらっしゃいますね」
「……ほんとだな」
……メッチャ恥ずかしい!!!
「自分の術技くらい、ちゃんと把握しておけよ」
「………………」
ガスターに真面目に言われて、俺は黙るしかなかった。
「そんじゃ、シェリー……あとは頼んだ」
「かしこまりました」
ガスターは、シェリーさんに何かを頼んで、いつもより気だるそうにトボトボと歩いて、城へと向かった。
「では魔王様」
「はい」
「ちょっと、背中をお借りしますね?」
そう言ってシェリーさんは、俺の上着を捲り上げて背中に手を当てた。
「『サーチ』」
…………また、マイナスなんて値が出るんじゃないだろうなぁ。
だけど、気絶する前より体が軽い。気だるさが嘘のようにとれている。
「はぁ~。マイナスの値も始めてみましたが、プラマイゼロというのも始めてみます」
「うっ! ……あれ?」
ってことは…………
「シェリーさん、もしかして……」
「はい。測定した結果、魔力値ゼロですね。よかったですね」
うっし! …………ここは、喜ぶべきところ……だよな?
ま、まぁ、なんにせよ、魔力使いたい放題に戻ったんだ。良しとしよう。うん。
「それにしても、何で戻ったんですかね?」
「お礼なら、ガスターにでも言ってくださいね」
「……もしかして、氷付けにされたのと何か関係が?」
俺が訪ねると、シェリーさんは、フフフと笑って誤魔化すだけだった。
……ガスターに聞くの?
「なんにせよ、コレでいつも通りなんですよね?」
「はい。オル様とアンリミテッド状態にならなければ、問題ありません」
それから、数時間後。
俺とシェリーさんも魔王城へと帰ってきた。
「あっ! 魔王様!」
心配していたのか、俺を見つけたオルが、ダッシュで突っ込んできた。鳩尾辺りに強い衝撃が走る。……痛い。
「魔王様が氷付けになったって聞いて……それで……」
「あぁ、わかったわかった。この通り、俺は、無事だからな?」
今にも泣きそうなオルをなだめるように、俺なりの優しい言葉で言う。
相当心配してくれたんだな。
「それじゃあ魔王様!」
「うん?」
急に元気になったオル。元気なのは、良いことなんだが……ちょっと情緒不安定じゃないですかね?
「特訓です!」
「………………な「ドーラと一緒に空を飛ぶ訓練です!」………………はい」
どうやら魔力の次は、精神がマイナス値になりそうだ。




