初めての拉致に挑戦……
お久しぶりです。
なかなか更新できず、すいませんでした。
それでは、本編の方をどうぞ!
「ダメだぁ~全然やる気が起こらねぇ~」
何をしようにもダラダラしちまう。
頭では、もっとしっかりしねぇとって思うんだけど……。体に力が入らねぇとか、そんな感じでダラダラしている。
そもそも、魔力値がマイナスになってからの俺は、何処かおかしい。……具体的にどこってのが分からねぇけど。
「はぁ~……」
……ゴロゴロするかな。
俺は、芝生に大の字で寝転んだ。
成長した木々の間から見える雲は、ゆっくりと流れていく。
「いいなぁ~」
俺もあの水蒸気の塊みたいに、何も考えず、フワフワしていたい……。
「はぁ~……」
「重症だな」
木陰からシェリーと俺は、あのアホを見張ってたんだが……あんなにヤル気のねぇ魔王を見るのは、始めてだな。
「えぇ、そうですね。いつもは空回りしてそうなほど、元気とヤル気に満ち溢れていますのに」
隣にいるシェリーも同感のようだ。
「粗大ゴミよりもぐうたらできる余地があったなんて」
「……誰が粗大ゴミだ」
「あら失礼しました。生ゴミ様」
俺の事だとは自覚はしていたが、改めて言われると腹が立つな。
「それよりも、こんな森の中で戦うのですか? 相手は『赤』なんですよね?」
柄にもなく心配か? まぁ、それでも
「問題ねぇよ。『赤』は、戦闘大好きだが、それ以上に紳士だからな」
……たぶん。
そのアホが寝返りをうって、俺たちの方に背中を見せた。今がチャンスだな。
「そんじゃ、……思いっきり殺ってくれ」
「……字が違いますよね?」
そう言いながらも、シェリーは盾を出現させ、あのヤル気なしぐうたら野郎の後頭部を思いっきり殴った。
「叩き起こすとは、正にこの事だな」
雰囲気の変わったアホが、立ち上がる。
ただ、後頭部にタンコブが出来ているため、正直笑っちまいそうだ。
怒っているせいなのか、元々なのか、余分な魔力が体から溢れているんだろう。こうして正面に立っているだけで暑い。
「それで? 叩き起こされた気分はどうだ? 『赤』?」
「ふんっ。悪くないな。久方ぶりに外に出れたんだ。それも気の利くことに、闘いまで用意されとるんだ。悪い気はしない」
お気に召したようで何よりだな、この戦闘狂が。
「悪いが、話が先だ。お前が乗っ取っている体の奴が、魔力不安定に陥っている。……心当たり…………あるだろ?」
俺は、確信をもって聞く。
オルと限界解放状態だった時の事を聞いて、だいたい理解している。
『視界が赤くなった』
そう聞いて、俺の思い当たったのは、コイツだ。
「ふっ。心当たりはあるが、……タダで教えると思うか?」
そう言って魔王は、両手を胸の前辺りで構えた。
……ファイティングポーズってやつか。戦う気満々だな。
「シェリー!」
「承知しております! 『ビッグシールド』!!」
シェリーの一言で、魔王の前に背丈を越える大きさの分厚い盾が出現する。
だが、
「『火炎・剛打連拳』!」
それを気にせず、両手に炎を宿して、殴り付けてくる。
ーードゴンッ! ドゴンッ!!
鋼鉄を殴ってるだけなのに、何て音をさせてやがるんだ!?
「ふむ。……さすが、魔王七つ道具の1つだ」
ホント……じゃなきゃ、俺らは殺られてたぞ。
「シェリー、準備は任せたぞ!」
俺は、片手で持てる程の大きさだが、銃身が長いため、いびつな形をした拳銃を両手に一丁ずつ持ち、魔王の背後へと回り込んだ。
「悪いが手加減なしだ! 『アイスパレット』!!」
俺は、水属性の魔力で作成した銃弾を2、3発撃つ。
「この程度の魔力弾で、我が倒せるとも?」
いや、思ってねぇよ。
現に、弾は当たる前に全て蒸発してるしよ。
「チッ!」
「舌打ちしてないで、弾を撃ちなさいよ!」
せっせと準備をしているシェリーに文句を言われる。
「言われんでも分かってるっての! 『アイスパレット』!!」
俺は、性懲りもなく氷の魔弾を打ち続ける。
その様子に疑問を抱いたのか、魔王が口を開く。
「2代目は、知将だと聞いたが…………勘違いだったか?」
「うるせぇ! ほざいてろ!!」
口を動かしながらも、こっちは必死に魔弾を放つ。
……まだか!? シェリー!?
それから、数分間。
無駄な足掻きだと知りながらも、ひたすら氷の魔弾を打ち続けた俺は、魔力切れを起こしかけ、動きが鈍ってきた。
魔王もそれなりに魔力を消費しているはずだが、元々の魔力保有量が違う。
「もうそろそろ……終わらせるとしようか」
ヤバイ! 一気に熱量が上がった!
魔王が身体中の魔力を上げたためだろう。
俺は、大技だと予想して、一度距離をとった。
が、
「……逃がすと思うか?」
「っ!?」
突然、体が重くなる。
「『威圧』……か……」
マジかよ……初代やアホに比べて、確かに魔力は少ねぇけど、……そこまで差は無かったぞ?
『威圧』は、相手の魔力に干渉して、身動きを鈍らせる技だ。
対応策も、
「一発、貰っておけ。……『獄炎剛打』!」
魔王は、俺を紫色の炎をまとった拳で殴りつけた。
「ぐっ!!?」
「ほう……。これを防ぐか」
俺は、凄まじい抵抗を両腕に受けながらも、魔王の拳を相棒で受け止める。
だが、あまりに酷い一撃に、一歩も動けねぇ状態まで追い込まれちまった。
「……やばいな」
正直、ここまで焦ったのは、初代魔王が討たれたとき以来だ。
俺の額から、冷や汗が流れ落ちる。
「準備できましたわよ!」
絶体絶命を覚悟した俺の後ろから、シェリーの声が響く。
「よっ、よし! ぶちかませ!!」
シェリーの合図に直ぐに応え、大量の水を魔王に放った。
今の魔王なら、大ダメージなはずだ!
「くっ! ……小癪な真似をっ!」
「俺は、強くねぇからな。頭を使わねぇと生きていけねぇえんだよ!」
すかさず、片方の武器を地面に捨て、両手でしっかりと構える。
「『アイスパレット』!!」
俺は、引き金を引き、氷の魔弾を撃った。




