再び、魔力抽出に挑戦!
早朝からのクサリさんの魔法講座を終えた俺 棚部 亮は、昼食を食べようと、クサリさんと共に書斎を出た。
食堂に向かうと何人かのメイドさんが、困った様子でたむろっていた。
「どうされたのですか?」
クサリさんが、一番手前にいたメイドさんに声をかける。
「メイド長……。それが、食材が、底を突いたようなのです。」
えっ!食材が底を突いたって、もう食材がないってこと!?
「どう、いたしましょうか?メイド長?」
クサリさんが、思案する。残り2週間の間は、できるだけ戦闘訓練に力を入れたほうがいいと俺は思うが、『腹が減っては戦はできぬ。』っていうし……。
「……そうですね、資金の都合で買い足すのも控えたいところですから、山中まで行き、そこで食材調達をいたしましょう。今から移動し、本日の分のみを調達いたします。メイド隊のみなさんを呼んできてください。」
「「「「はい、わかりました。」」」」
山中までって……、この辺に山なんかなかったような?
「クサリさん。山中って?」
「はい、魔王様。ここからおおよそ10キロ先に山があります。そこで食材を調達いたします。」
……お昼は、ぬきかな?……仕方ないか。
「それでは、魔王様。少々お待ちください。30分ほどで戻ってまいりますので。」
「え?30分??」
「はい。今城にいるメイド隊の全員で向かえば、30分程度で食材調達が完了します。戻り次第、昼食の準備をいたします。」
「…………はい。」
改めて、クサリさん改めメイド隊のみんなのスペックが、すごいことを実感する。
クサリさんより少し背の小さいメイドさんが俺に向かってお辞儀をする。
「それでは、ご主人様。行ってまいります。」
「いってらっしゃい。」
『ご主人様』って響きは、少し照れくさい。悪くはないけど、恥ずかしいものだな。
そんな俺にメイドさん達が、丁寧なお辞儀をして一人ひとりが竹でできた籠を背負って走り去っていく。
…………誰一人として、視界にとらえることが出来ないくらい速い……。
「……いま、鬼ごっこをしたら、確実に負けるだろうな……。」
まぁ、どうでもいいけど……。
「さぁーて。俺も始めますか!」
俺は、メイド隊が食材調達に出てから魔力抽出室へと移動した。
この城で現状の俺にできることは、かなり限られている。その限られた中での一つがこれだと思う。
「使い方は、なんとなく教わったし、一人でも大丈夫だろう。」
液体状の魔力が流れ出てくる蛇口のような分部に鉄製のカプセルを設置する。そして、赤色の把手と黒色の把手を椅子の近くまでもっていく。余談だが、この把手は、椅子に座っている状態で二つともを両手で触らなければ魔力を吸収されることがないらしい。
俺は、部屋の中央付近に用意された木製の椅子に腰を掛け、2色の把手をそれぞれの手で握った。
「実験のときは、黒色の把手を触っているだけで1個のカプセルを3分で満タンにしたから……。」
握った場合は、もっと早く満タンにできるんじゃないか?
そう思って、俺は黒い把手を握る。
ドドドドドドドドッ!!!!
…………とんでもない勢いで魔力があふれ出てくる……。
ホースで水をぶちまけているかのような勢いだ。
唖然としてみていると、もうカプセルが満タンになろうとしていた。
いやいや、勢い良すぎでしょ!!
あまりの抽出量に体調に変化がみられなくても何らかの異常がありそうな気がしてしまう。
……大丈夫だよね。……俺…………。
そんな俺の気も知らず、カプセルが満タンになったので次のカプセルに切り替える。
把手を床に置き、椅子から腰をあげ、満タンになったカプセルを保管用の部屋に持っていき、からのカプセルを同じ部屋から持ってきては、機会にセット。椅子に腰を掛けてから、2色の把手を再び握る。
この作業をメイド隊たちが帰ってくるまでひたすら行った。
――――30分後――
「なんて無茶なことをしているのですか!魔王様!!」
むちゃくちゃ怒られた……。
まぁ、さすがに30分で80個ほどの銀色のカプセルが液体で満たされてるから、体に異常がなくとも心配はされるだろう。
「……だって、途中から楽しくなったから……。」
「魔王様は、ドМなのですか!えぇ!!」
……あまりにもポンポン満タンになっていく様子が、思ったよりも滑稽だったから…………。
調子に乗って、1個当たりの補給の時間をより短くするよう頑張った結果がこれだ。
作業をより効率的に行うには、どうするといいかを考えながら行動したら、1個当たり20秒ほどで設定、抽出、補間が行えるようになっていた。
「……まぁ、反省を一様しているようなので、今回は大目に見ますが、心配をかけるのは、ほどほどにしてください。」
「…………はい……。」
「それでは、昼食にしましょう。」
お説教に30分もかけられたため、結果的にお昼時になった。ほんと、腹減って死にそう……。