初めての2代目魔王に挑戦!
お久し振りです。
ブックマークが、増えたり減ったりして、喜んだり悲しんだりしていますが、めげずに更新していきたいと思います。
階段を昇り2階へと来た。来たんだが……誰もいない。
……このまま階段を上がって、書斎へと突入するか。と思ったのだが、
「オル。すまんが、ちょっと寄り道するぞ。」
「うん?いいけど、何処に行くの?」
「俺の部屋。ちょうど、この階の西側にあるから、傷の手当てをしてから3階の書斎へ行こう。」
うん、わかったとオルの返事を聞いて、俺の部屋へと一応、慎重に向かった。
俺の部屋の扉を開けると、見知った顔が、俺の部屋を荒らしていた。
「……おい。何してんだよ。」
「……パパ…………。」
「お、お前ら!?な、なんで!?は、はは、速すぎるだろ!!?」
すごい勢いで慌てふためいているガスターの姿がそこにあった。……手に1冊のエロ本を持って。
「……はぁ。」
何をしたかったのか知らねぇけど、なんでエロ本を持って俺の部屋にいるんだよ……。
呆れて、ため息をついていると、ガスターがとんでもないことを言い出した。
「お、オル!こ、こいつの部屋にこんなモンがあっただんだ!!」
そう言って、高らかに手に持っていたエロ本を掲げた。
「おい!嘘つくな、嘘を!!俺は、そんな本を1冊も持っていねぇよ!!」
だいたい、どこに売ってるんだよ!?町の本屋には、少なくともなかったぞ。
……探してねぇからな。ただ、視界に入らなかっただけだからな。
「パパ!」
「は、はい!!」
オルが、ガスターを咎める。
「見せて!」
……咎める?
「いやー、オルにはまだ「み・せ・て!」……はい。」
いや、俺もオルには、早すぎるものだと思うぞ。教育上、全然よろしくない本をガスター(オルの保護者)が、オルに手渡す。
オルは、手渡された本の表紙を穴が開きそうなほど見ている。……睨みつけているが、正しいかな?
「魔王様。」
「な、何でしょうか?」
にっこりと笑いながらオルが聞いてくる。
「この表紙のような女の人は、好みのタイプ?」
……目だけ笑っていない。どこかで見たような笑顔だった。
…………確か、そんな顔を見た後は、命の危機に襲われていたなぁ。
「い、いいえ、滅相もございません!」
「フフフ。魔王様、本当のことを言ってね?……龍族の里では、巨乳好きを公言されてたよね?」
表紙に書かれている女の人は、お姉さん系でしかも、巨乳の美人さんだった。
……オルとは、スタイルもタイプも真逆の人物が載っている。
「そ、そうだったけなぁー?」
い、一か八かのとぼけた不利だったが、……結論から言うと、シェリーさんとの戦闘よりひどい怪我を負った気がする。
「おめぇ!来るのが早すぎるんだよ!!もっとゆっくり来やがれ!!」
「うるせぇ!おめぇこそ!!なんで人の部屋を荒らしてんだよ!!常識を考えろ!!バーカ!!」
「うるさい!」
俺とガスターは、オルの目の前で正座をさせられていた。
「「はい。……すいません。」」
……足がしびれてきた。っていうかよ、こんなところで油を売っていていいのだろうか?
怪我の手当てをしに来たはずなのに……怪我が増えてるし。
「パパ。」
「は、はい!」
ビクビクしすぎだろ、ガスター。……まぁ、気持ちは、痛いほど分かる。
「何で魔王様の部屋を荒らしていたの?」
ニッコリ笑顔で問い詰めている。こ、これが、俗に言う尋問かぁ。……このあと、俺も受けると思うと悲しくなってきた。
「ち、違う!あ、荒らしていた訳じゃない!!オルの教育に相応しくないものが、この部屋に有るかもしれんと探っていただけだ!か、家宅捜索だ!!」
俺は、容疑者か。何にもしてねぇのに。
納得はしていないが、これ以上拷問もとい、尋問してもしかたないと判断したのか、オルが勝手に判決を言う。
「判決、有罪。向こう1ヶ月のトイレ掃除を命ずる。」
「な、なんだ……トイレ掃除1ヶ月か。なら問題ねぇや。」
さらに続けてオルが言う。
「なお、執行中は私とのおしゃべりを一切禁ずる。」
うん?黙々とトイレ掃除をしてればいいだけじゃねぇか。結構優しい判決だなと思っていたのだが、隣の奴は、真っ白になっていた。
「はぁ………………。」
このまま死ぬんじゃねぇかなと思った。
「次は、魔王様だね。」
「お、お手柔らかに……。」
口調は可愛らしいものの、全然目が笑っていない。
……こっちの世界の女性は、表情が豊かだなぁと、内心思いながら震えていた。
「これは、魔王様のもの?」
そう言って、俺の目の前にさっき持っていたエロ本を投げ付けてくる。
「ち、違う!俺のじゃねぇ!」
これは、マジだ。本当に俺のじゃない。
「大体売ってる場所すら知らねぇのに、どうやって仕入れるんだよ?」
俺のもっともな反論にオルは、首をかしげるだけだった。
「じゃあ、……これは、何?」
そう言って、もう1冊の本を投げてきた。
裏返ってしまったため、表紙が見えない。俺は、表紙を見ようとその本を手にした。
「うぐっ!」
俺の腹にオルの右ストレートが決まった気分だった。
「ねぇ?魔王様?……それは何?」
「こ、ここ……これは…………。」
そう、それは、俺がこっちに来たときに持ってきた、唯一のお気に入りの……
「エロ本……だよね?」
「…………はい。そうです。」
何故だ!?あんなに巧妙に隠しておいたのに!?っと言うより、いつ見つけた!?
「幼女貧乳ものでなく、お姉さん巨乳もののエロ本の所持。よって、有罪。向こう1ヶ月、オルと常に一緒にいること。」
へぇ?ただ一緒にいればいいのか?
だが、そんな簡単な話でなかった。
「魔王様、一応確認しておくけど、お風呂やトイレ、寝るときも一緒だよ?」
「いや、トイレは…………はい。」
反論しようとしたら、オルが微笑んできた。……めっちゃ怖い!
背中の辺りが、ゾクッとした!
「異議ありっ!」
ガスターが、右手を高らかに上げてオルに抗議しようとしたのだが……。
「………………。」
……無言だった。目すら合わしていない。
「お、オル?……あのーオルさん…………?」
「………………。」
あまりにも無言だから、剥製かと思った。
「オル様!お願いします!!せめて!せめて、目だけでも会わせて!!!」
……とうとう、懇願し始めたよ。……これでも、2代目魔王なんだよなぁ。
「うんじゃ、魔王様。3階の書斎に行きましょう!」
「お、おう……。」
痺れた足でなんとか立ち上がり、オルをオンブする。
「ま、待って!待ってください!!オルさまー!!!」
…………ガスターの叫びは、扉によって遮られた。




