再び、竜族に挑戦!
「ふぅー。結構疲れるな。」
毛玉狩り拠点の1つとなっている、洞穴を目指して歩いているんだが、……結構、疲れる。アップダウンが、激しいんだよな、この山。
「魔王様、あれだよ!」
オンブをしているオルが、崖の上を指差す。……崖かぁ。
「魔王様、ちょっと待ってて。」
「どうした?」
オルが、崖の手前で止まるように告げてくる。なんかあるのか?
「『チェーンシールド』」
鎖つきの盾を出現させるオル。盾の持ち手の部分に、鎖が巻き付いている。これで、どうするんだ?
「魔王様、鎖をしっかり、握っててね。」
「あ、あぁ。一体、何をするんだ?」
「まぁまぁ。口、閉じててね。えい!」
口を閉じて、鎖の端を手に巻き付けるようにして持つ。すると、オルは、盾を崖の上に向かって投げる。鎖は、ジャラジャラ音をたてながら、徐々にピンッと張ろうとしている。…………もしかして、このまま引き上げられる?
俺の予想は、見事に的中し、体を一気に持ってかれる。
「う、腕がぁあ!!」
ち、千切れる!痛い!!
こ、これなら、自力で登った方が、マシだぁああ!!!
「痛てぇよ!」
「ご、ごめんなさい。登るのは、大変だと思ったから。」
まぁ、悪気は無いようだし、許すけど。
腕をさすりながら、洞穴の中へと入っていく、俺とオル。
中では、男達が、傷の手当てや休憩をしていた。
「おぉ!お前が、3代目か!」
とびきり体格のいい男性が、俺らの方に歩いてきた。む、ムキムキだ!
「あぁ、棚部 亮っていう。回りからは、魔王って呼ばれてるけどな。」
「そうか!そうか!歓迎するぞ!魔王殿!」
ど、殿は、初めてだな。でも、歓迎されているのは、ひしひし伝わって………………サッ!
俺は、咄嗟に防御の構えをとる。わ、忘れるところだった!
『歓迎のタックル』の事を!
「うん?何を構えてって、あぁ!子供らのタックルか!大丈夫だ!大人は、誰もしないから、安心したまえ!」
な、なんだ、こ、来ないのか。だが、俺は、忘れていた。……彼女の存在を。
「ドーン!」
「ぐふぅあ!!」
奥の方から、勢いよくタックルを決めてきた。
防御を解いた上に気まで抜いていたため、クリティカルヒットする。
すっかり、忘れていたよ。ドーラは、初対面の時から、タックルをもらっていた。
「ゲガなーい?」
「お前のタックルが、ゲガの元だ!」
たぶん、今回の狩りで、一番のダメージを与えたぞ?
「ドーラ!魔王様は、ちょっと休憩するの。」
オルが、ドーラに注意する。……ここに来て、オルが優しく感じるよ。来るまでは、鬼かと思ったけど。
「ハッハッハ!子供は、元気なのが一番だ!」
……大人は、もう少し彼女の言動に気を付けさせてください。
「そういや、自己紹介がまだだったな!俺は、ドラコニアだ!里の長をしている!回りからは、ドンと呼ばれてるから、お前もそう呼んでくれ!」
「あ、あぁ。よろしく、ドン。」
挨拶を済ませると、洞穴の奥へと案内してもらった。
奥は、食堂のようになっており、煙がモクモクと昇っていた。
「これ、大丈夫なのか?」
窒息とかしないのか?
そんな心配をしたが、ドンは、問題ないと天井を指差す。
「細かすぎて見えねぇが、穴が無数に開いてるんだ!その穴から、外へと出ていく。」
結構、上手いこと出来てるなぁと感心した。
「それより、なんか食うか?材料は、そこそこあるから、遠慮せんでいいぞ!」
「そうだなぁ。動きっぱなしだったから、腹減ったな。何がうまい?」
「あぁー、そうだなぁ。どれもうまいが、オススメは、竜麺だな!ピリ辛のスープに細い麺を浸して、食べる食い物だ!」
う、うまそうだなぁ。
「ほんじゃ、それで!オルも、なにか食べるか?」
俺の後ろにいた、オルにも聞いてみるが、本人は、何を食べるか考え中なので、先に注文しておく。
「うーん。丼もいいなぁ。けど、こっちの定食も美味しそうだなぁ。」
「なんなら、2つ頼んだらどうだ?食べられなかったら、俺が食ってやるから。」
「へぇ!?いいの?そんじゃ、この丼と定食で!」
「魔王殿は、よく食べるんだな!」
ドンが、感心したように言ってくる。まぁ、ちょっと苦しいだろうけど、食べれない訳じゃないしな。
「最近の若い奴等は、あんまり食べないからな。張り合いがなくて困る!」
そんなこんなで、注文したものが出来上がり、席へとつく3人。
俺は、オススメの竜麺。ドンは、その特盛(麺が2倍)。
オルは、カツ丼と唐揚げ定食だ。
「「「いただきまーす」」」
ピリ辛のスープに麺を浸して食べる。…………う、うめぇー。
溜め息をつくように、感想が漏れる。
舌の上でピリっとするが、その刺激と麺のコシがいい!細いくせに、中々のコシだ!
「どうだ!うまいだろう?」
「あぁ、正直驚いたぞ。単なる浸け麺だと思ってたが、全然違った。こんなに細い麺なのに、うどんを食ってるみたいだ。」
ちょっと、オーバーかも知れねぇけど、それくらいの喉ごしだ。
「うーん!丼も美味しい!!」
横では、残すかもしれないと心配していたオルだが、今のペースなら、完食できそうだな。余程うまいのか、バクバク食べている。
「魔王様も食べてみる?」
そう言って、カツ丼をレンゲで一口分すくって、俺に食べさせようとしてくる。
「あーん。」
俺は、深く考えずに、オルから食べさせてもらう。
「これも、うまいなぁ!」
カツと卵が、ちょうどよく絡まっていて、出し汁とご飯もバランスがいい!丁寧に作られた逸品だ。
「か、から、唐揚げは?」
何故か、赤くなっているオル。どうかしたのか?
今度は、箸で唐揚げを1つつまみ、俺に食べさせようとしてくる。
「あーん。」
揚げたてなのか、湯気が余計に美味しそうに見せていた。
さっきと同じように、パクっと一口。
「ハ、ハフハフ!」
あ、熱い!予想より熱いが、少しずつ、噛んでいく。
噛む度に肉汁が、ジュワージュワーっと出てくる。
ヤバいな、この食堂の飯。どれもこれもうまいじゃねぇか!
「どうだ!自慢の食堂は?」
「本当にすげぇよ。正直、狩りそっちのけで食べていたいくらいだ。」
俺のべた褒めで気分がよくなったのか、ガハハと豪快な笑い方をするドン。
「た、大変です!」
食堂に、慌てて入ってくる男性。
「どうした!」
「ケマリが、かなりの勢いで増えてます!このままだと、処理しきれねぇです!」
「本当か!?……すぐに行く!動ける奴等に準備するよう言っておけ!」
「はい!!」
男性は、慌てて戻っていった。
「ケマリって、今狩っている奴だよな?」
「あぁ、そうだ。すまねぇが、魔王殿も出られるか?」
「あぁ、大丈夫だ!オル、行くぞ!」
「うん!」
俺たち3人は、ケマリ狩りへと向かった。




