初めてのモンスターに挑戦!
「ドーン!」
「ドッドーン!!」
竜の子が、俺に対して、体当たりをしてくる。
「も、もう無理!これ以上は、死んじゃう!」
きゃっきゃ言いながら、それでも容赦なくぶつかってくる。
向こうとしては、ただ、じゃれあっているだけだが、竜なんだよ。子供でも、竜なんだよ。そんでもって、俺は、人間なんだよ。
「パワーが、違うんだよ!!」
「ドーン!!」
「ぐふぇ!」
も、もう無理。
「コラー!あんた達!何してるの!」
ドーラが、子供たち(それでも、俺と同じくらいの大きさ)を注意する。一応、お姉さんのような立場らしいので子供たちは、素直に言う事を聞いてくれる。聞いてくれるのだが……。
「もっと本気でぶつからないと!魔王様に失礼でしょ!!」
何処を注意してんだよ!?死ぬよ!俺!!
真に受けた子供らは、助走して、タックルを仕掛けてくる。
「ドカーン!」
口で発している効果音が、変わった。
ぶつかった衝撃は、乗用車で跳ねられたみたいだ。……跳ねられたこと無いけど。
「も、もう無理。」
吹き飛ばされ、民家の壁に激突し、立ち上がったら、また、別の方から同じように…………集団リンチか!!
そんな子供らからの集団リンチもとい、歓迎のタックルが終わり、裏山で何が起きているのかを聞くことになった。
なったのだが…………。
「……目のやり場に困る。」
ドーラよりも体型のいい女性が、いや、女性しかいない。きょ、巨乳だらけだ。本当に目のやり場に困る!
ちなみに子供らは、男女関係なく外で元気よく遊んでいる。
「むー!!!」
おかげで、オルに足をガシガシ蹴られている。い、痛いです、オルさん。
「そ、外も中も危険じゃねぇか……。」
こうなったら、オルを説得して、中で休もう!幸い、部屋の中では、集団リンチは起きないみたいだからな。
「お、オル。あのな、確かに男は、おっぱいが大きい方が、好きな奴が多い。だけどな、心から好きな女性なら、おっぱいの大小に関係なく愛せるんだよ。」
…………何を言ってるんだろうな、俺。
こんな下手くそな説得だが、オルは、興味を引いたようで俺に質問をしてくる。
「なら、魔王様は、胸が小さい方が好きなの?」
「いや、巨乳派だな。」
このあと俺は、目の前が真っ白になった。
「話を整理すると、裏山でモンスター狩りをしているようね。」
「しょうなんでしゅか(そうなんですか)。」
俺の顔は、原型をとどめていられないほど膨れ上がっていた。
き、記憶が曖昧だなぁ。何でこうなったんだっけ?
思い出さない方が、幸せな気がするのは、何故なんでしょうか?
「と、とにかく!そのモンスター狩りが、終われば、男の竜が戻ってこられるという事ね。」
竜でも手こずるモンスターを俺らが加わっただけで、どうにかなるんだろうか?
「それじゃ!裏山に案内します!」
そう言うとドーラは、ボフッという音と共に竜の姿になる。
「乗ってください!」
いやー、できれば遠慮したいなぁー。
「ささっ!魔王様!」
ドーラに催促されて、渋々乗る。……目をつぶっておこうかな?
「それじゃ、お願いします。」
はいはーい、と元気に応えて翼を羽ばたかせる。
「うんじゃ!行くよー!」
体がフワッとする。ヤバい!ヤバい!!マジでダメなんだよ!高いところ!!
落ちないように必死にドーラにしがみつく。
「魔王様。もしかして、……高いところが苦手?」
スパインさんの質問にコクコクと首を縦に降る。それを見たオルが、イタズラをしてくる。
「や、やめろ!マジで!!」
オルが、横からグイグイ押してきた!ま、マジで洒落にならんから!!
「フッフーン!気持ちー!!」
ドーラは、軽快に空を飛んでいる。なんでも、竜族の間でむやみに飛ばないよう言われているらしい。
なので、こんな用事が無い限り、飛ぶことがなく、楽しいのも分からなくはないのだが、
「宙返りは、やめろ!!」
ジェットコースター並の運転をするドーラに俺がキレる。おい!マジで!やめろ!!
「とうちゃーく!」
「魔王様。着きましたよ。」
ユサユサと揺らされるが、立ち上がるのも難しいくらい疲弊していた。
「か、かか……帰りは、ある、歩いて帰る。」
絶対乗らねぇ!
「楽しかった!帰りも乗せてね!」
「もちろん!」
オルとドーラは、波長が合うのかすぐに意気投合していた。
ボフッと音をたてて、人の姿になる。
「そんじゃ、ついてきて!山小屋の所に皆がいると思う!」
そう言って、先頭を歩き出す。
「さぁ、魔王様。頑張って!」
まともに歩けない俺は、どんどん離されていった。
「さ、先に行ってくれ。自分のペースで行く。」
それから5分足らずで、俺は、遭難した。
いや、確かに先に行ってくれと言ったさ。言ったけどさ、分かれ道の所に目印とか用意しとけよ!合ってるかどうか分からねぇだろうが!
そして、あちこち歩き回ったものの、山小屋らしき建物は、見えずに日だけが暮れようとしていた。
「…………何処だよ…………ここ。」
もう、泣きそうだった。
疲れてきたので、とりあえず座ってどうするかを考えることにした。
「どうするか。」
本当に困った。サバイバルの知識なんか全く無い。もちろん、山で遭難なんかもこれが初めてだ。しかも、モンスターが出る山で。
「今遭遇したら…………ヤバいな。」
…………これは、フラグって奴ですか?
目の前の草木が、ガサゴソ言い出す。
「は、ハハハ。」
乾いた笑い声しか出なかった。まぁ、何にせよ、戦えるように構えておく。
「来るなら来いよ!コノヤロー!」
そして、出てきたのは…………小さい、毛玉だった。
「な、なんだ?これ?」
直径10センチくらいの毛玉が、フヨフヨと浮いて、こっちに来ている。
「モフ。」
か、可愛いな。目がクリクリっとしている毛玉だ。
ちょっと、触ってみるか?そう思い手を伸ばしたら、俺と毛玉の間に盾が出現し、バチバチっとすごい音がした。
「ま、間に合ったー。」
オルがぐったりとしている。…………毛玉の生物は、居なかった。
「……け、毛玉ー!!」
「魔王様。あれが、今回の狩りの対象ですよ。」
え……う、嘘だろ?あんな、無害そうな生物を狩るの?
「あれに触れると放電しちゃうんです。この季節になると大量発生して、危険ですからこうやって、年に数回狩りをするんです。今年は、特に多いみたいですが。」
スパインさんからの説明で、あの毛玉が相当ヤバいことが分かった。もし、放置しておくと、里の方に流れていき、死者が出てしまう可能性があるんだとか。
「じゃ、どうやって狩るんだ?俺は、基本的に近距離タイプだぞ?」
「はい。魔王様は、オルちゃんをオンブしていてください。」
………………???何でオンブする必要があるんだ?
「それじゃ、私は、あっちの方を殺ってきますんで。」
「ちょ、ちょっと…………行っちまったよ。……本当にオンブするだけでいいのか?」
「うん!任しといて!!」
ほ、本当に大丈夫なんだろうか?
っと5分前の俺は、疑心暗鬼になっていたが、
「いけいけ!やっちまえー!」
「『バインドチェーン』!」
鎖を数十本放ち、毛玉を一網打尽にしていく。ただ…………
「なんか、モヤモヤするなぁー。」
「気にしない、気にしない。」
俺は、オンブをしているだけだし、可愛らしい毛玉を大量に葬っているし…………なんだろう?このモヤモヤ。
「会わせ技行くよ!『チェーンブレード』!」
太刀の柄に鎖を巻き付けて、毛玉達に向けて横に回転させながら投げる。う、うわー、何処でもバチバチ言ってるよ。
血飛沫の代わりに青白い放電だから、猟奇的じゃないだけ、マシだけど。
「魔王様?えらくない?」
「うん?いや、全然問題ないけど。どうかしたか?」
「うん、ならいいの。」
うん?座り心地が悪くなってきたのか?
「ちょっと休憩にするか?」
「うん。それじゃ、『スパーク』!」
オルは、手もとに水晶を出現させて、無詠唱で風系統中級魔法を毛玉の群れの中心あたりに放つ。
この水晶も魔王七つ道具の1つだ。特徴としては、所有者の魔力を底上げしてくれるものだ。
毛玉の群れは、突如現れた電撃に刺激され、連鎖するように放電して消えていく。
「そんじゃ、ちょっと休憩だな。」
そう言って、毛玉狩りの拠点の1つである洞穴を目指す。




