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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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初めての面接に挑戦!

お久し振りです。

今回は、キャラクター紹介込みの短編です。

本当なら、メイド隊に属しているキャラクター全員を紹介したいのですが、…………文字数の関係と作者のスタミナの関係で複数回に分けたいと思います。

…………めっちゃ、長いです。

では、どうぞ!

「はーい、次の方。どうぞ~。」

俺、棚部 亮は、長机の上に置かれた書類を見ながら、扉の向こうに待っているであろう人物に入室を促した。

「失礼します。」

見慣れた人物は、まるで初対面かのように、扉の前で丁寧にお辞儀をして部屋の中央にポツンと置かれた木製の椅子の右隣に立つ。

「名前と出身をどうぞ。」

まぁ、ほとんどの人がわかったと思うけど、……俺、面接官をしているんだ。

「はい。クサリ・スクス、魔界出身です。」

「どうぞ、掛けてください。」

マニュアル通りに名前や出身を聞いてから椅子に腰かけるように促す。

どうだ、これが!マニュアルの力だ!……めっちゃ、頼ってます、クサリさん……。

なぜ、俺が面接の真似事をしているか?

その謎を解くために、5時間ほど時が遡る。


魔王城に帰ってきて、早速メイド隊とクサリさんが、79ヶ所の領土をどうするか、会議を開いた。

その会議の結果、俺を除くみんなで各領土を管理することになった。

……なぜ、俺が除かれているか。別に、虐められている訳じゃない。……たぶん。まぁ、真面目な話、後数週間でいなくなるので、頭数に入れない方針になった。

そんな中、クサリさんから話があると言われて、現在、朝食中。

「魔王様。姫騎士領と勇者領の同盟と、急激に領土が増えたため人材が不足しています。このままでは、いづれ破綻します。」

向かいに座るクサリさんから、現状の人手不足を訴えられた。実際、メイド隊のみんなが、せっせっと慌ただしくしている。

……正直、何もしていない俺は、罪悪感が募るばかりだった。

「で、具体的に人材補給って何すればいいんだ?」

俺の質問にクサリさんが、ニヤリとする。……嫌な予感がするのは、気のせいでは……ないです……よね。

「魔王様には、従業員募集の選考に参加してもらいます!」

な、なんでそんなに気合を入れていらっしゃるのでしょうか?

「選考に参加って何をすればいいんだ?」

「私たちメイド隊の面々で1次、2次の審査をし、最終選考に魔王様の目で判断して頂きます。」

え?そんなに本格的にするの?

「なお、募集の知らせは、先日から行われています。募集自体も複数回に分け、最終的に100名前後を予定しております。」

「そんなに人手が足らないのか……。」

知らなかったし、知ったことで罪悪感が増した……。

「で、でも、俺は、面接なんてしたことねぇけど……。」

「そうですね。では、練習をいたしましょう。」

れ、練習と来ましたか……。

「私を含めたメイド隊の皆さんで、魔王様を相手に面接を行います。」

なぜか楽しそうに面接官の練習方法を語りだすクサリさん。

「魔王様には、マニュアルによる対応とそれ以外の臨機応変さを練習してもらいます。」

そして、ために貯めた次の一言が、俺のやる気を一気に落とした。

「1週間の面接官育成強化マニュアルによる特別トレーニングで!!」

「…………え……。」

ほっこりとしたクサリさんをよそに俺は、地獄の1週間の始まりを思い、肩を落とすのであった……。


この会話をしてから、3時間ほどの特別トレーニングを施されてから最初の面接相手として、クサリさんが相手になるとのこと。

「魔界では、なにを?」

必死に覚えさせられたマニュアル通りの質問を教官にぶつける。

「はい。一族の長の身の回りの世話を中心に人事、軍事、経済、商業を少々回していました。」

今更だけど、とんでもないスペックだよな。

少しひるみながらも次の質問をする。

「御両親は何を?」

そういえば、メイド隊の皆のこと、誰一人詳しく知らないんだよなぁ。

いい機会だから、ついでに自己紹介をしてもらうと思って頑張ろう!

「はい。母は、とても優秀なサキュバスとして、活躍しておりました。」

へぇー。そういえば、クサリさんは、サキュバス族だったっけ。……色気は、あまりない気がするけど。

「父は、母の右腕としてサポートに徹していました。」

さ、サポート?いったい何をサポートするのだろうか?

気になるけども、深く聞いたら、やばい気がするので次の質問。

「将来は、何をしたいですか?」

心なしか、この質問でクサリさんの目が輝いた気がする。

「はい!魔王様の身の回りのお世話を一生涯!させていただくことです!!」

かなりの力説をされた。……このまま1時間くらい語りだしそうな勢いだ。

そっちの方が、何かと幸せそうな気がするけど、その後が怖いので最後の質問をする。

ちなみに、最後の質問は、受験者に対して一番聞きたいことを聞く、って言うなんとも厄介なものなんだけど……クサリさんに聞きたいことは、まぁ、事前に考えてあったりする。

「クサリさん。」

「はい。」

正直、特別トレーニングを3時間にもわたって教え込まされた鬼教官を前に、こんな質問はどうかと思うけど、……俺は、やるぞ!

「サキュバスなら、あの有名な噂は、……本当ですか?」

ゴクリッ……。

「あの有名な噂と言うのは、男性の生命エネルギーを性的に摂取することでしょうか?」

「は、はい。」

あまりにも直接聞き返されたので、恥ずかしくなった。

「噂自体は本当ですが、少しだけ誤解が混ざっています。」

「ご、誤解と言うと?」

ゴクリッ。

「実は、性的なことをするのは、ごく一部であり、その他は、かなり奥手なのです。」

「へ、へぇー。」

そうなんだ。知らなかった。

「以上で面接を終わります。ありがとうございました。」

知りたいことも聞けたし、マニュアル通りに終わりを告げる。

クサリさんは、椅子の横に立って、一礼をすると扉まで歩いていき、

「失礼します。」

と言って、部屋の戸を静かに閉めた。

正直、めっちゃ緊張した。クサリさんだからってだけでなく、もう、なにを聞いていいのかが分からなくなりそうだ。

おまけに、これで採用するかどうかも採点しなきゃいけないなんて、

「重労働だな。ほんと……。」

一息ついていると、トントンとノックされる扉。

「はい。どうぞー。」

染み付いた掛け声で、入室を促す。

「失礼します!」

面接には、不釣り合いなほど明るく元気な声で入室してくるのは、とんでもない人物だった!

「なんでだ!?」

「てへぇー。来ちゃった!」

「いや!来ちゃったじゃねぇだろ!?…………てか、なんでここにいるんだよ?」

「え?だって、ほら。」

そういって、右手に持っていた紙を俺に渡す。

なになに、『新規メイド隊募集中!そこのあなたも3代目魔王様のために力を尽くそう!!』

「これが、どうしたんだよ?」

「ほら、ここ見てよ。」

そういって、カルラが、紙の下の方を指す。

刺されたところには、『※魔王領以外の方も絶賛受付中です。詳しくは、1次面接のときに説明をいたします。』と書かれていた。

「ちょっとー。クサリさーん。どういうことですかー?」

いくら同盟を結んだからって、魔王のメイドをしたがる人なんているのか?

……そこで俺は、数時間前の会話を思い出した。

『なお、募集の知らせは、先日から行われています。募集自体も複数回に分け、最終的に100名前後を予定しております。』

……魔王領だけじゃ、最終面接まで100名を残すには、それ以上の人を集める必要がある。そんな人を集めるのに、魔王領だけで事足りるだろうか?

確かに領土は急増したが、そこに住んでいる人が全員、魔王領になったことを歓迎しているわけじゃねぇし、もっというと、今住んでいるところから、引っ越す人達もいないわけじゃない。

結果的に、魔王領以外の人員にも声をかけなければ、人なんか集まるわけがない。

しかも、都合のいいことに魔王領と姫騎士領、勇者領は、同盟を結んだばかり。もっというと、目の前にいる、このお転婆(てんば)娘が、姫騎士領内で俺の噂を広めに広めて、姫騎士領に入るのにいつも苦労している。……嬉しいことだけど。

「それで?面接って魔王様がしてくれるの?」

「はぁ!?いや、まだ俺、特訓中なんだけどうおっと!!!」

この部屋唯一の扉から、俺の顔のすぐ横通りに抜けて(避けなければ、頭が消えていただろう)、同じくこの部屋唯一の窓から、金ぴかの槍が、かなりの速さで通り過ぎていく。

恐る恐る、扉の方を見ると、……目を輝かせて見守っているお方がいた。

何してんだ、あの親バカは……。

「と、とにかく!俺の特訓が、終わるまで、面接はないから!」

い、命の危機を感じながらも、強く言い聞かせる。

「なら!このあたしに!まっかせなさーい!!」

両手を腰に当てて、発育途中の胸を張りながら、自信満々に言い放つカルラ。……嫌な予感しかしない。

「何を任せればいいんだ?」

「あたしも魔王様の特訓に、……つ、付き合ってあげるの!」

「丁重にお断りさせていただきます。」

ノータイムで断る。たぶん、俺の人生で、これ以上ないほど、懇切丁寧にお断りをする。

……あまり、雑に断ると俺の命が、無くなるからな。

下げた頭をそーっと上げる。……目の前にいたのは、

「ちょーっといいかしら。いやー、うちの娘が可愛がられているなんて情報を得たもんでね。様子をちょっと見に来たんだー。あたし。」

笑顔満天の聖女がいた。目だけ笑わないって、そんな器用なことよく、出来ますねー…………聖女様。

「ママ?なんでいるの?」

「うん?何でもないわよ。ちょっとあっちに行ってなさい。」

娘に優しい母親は、俺に対しては、般若(はんにゃ)のごとく怖い顔を向けてくる。

「おい!どういうことだ!あぁん!?」

「い、いや、……俺の……面接官と……しての……特訓で…………はい。」

こ、怖ぇーよ!めっちゃ怖い!!今まで戦闘で死にそうなこともあったけど、そんなのと比較にならねぇよ!

「あたしの娘が、恥ずかしそうにしながらも!健気(けなげ)に!おめぇのために!!頑張ろうとしてるのが!!分からねぇ分けねぇよな!?」

「は、はい。」

俺は、胸ぐらを掴まれたあげく、睨みつけられる。もはや、聖女とは思えなかった。もう、ヤクザだよ!鬼だよ!!

「お、……僕の特訓に……協力させてほしいのですが……娘さ……カルラ様をお借りできますでしょうか?」

所々で胸ぐらを掴む手の力と目力がパワーアップした。もう、ガクブルですよ。今日俺は、死ぬんじゃないかと思ったよ。

「うん。いいわよ。あたしの可愛い娘を貸してあげる。カルラー。」

機嫌を直した聖女は、溺愛している娘を呼びに部屋を出ていく。

た、助かった……。


「そ、そんじゃ、入室するところからやってくれ。……面接の方法ってわかるよな?」

「うん!大丈夫!!」

元気よく部屋を出ていくカルラ。……ホントに大丈夫か?

部屋を出てから、30秒くらいで扉をノックする。

「はい、どうぞー。」

なんだか、気が抜ける。……抜いた瞬間、俺の魂も抜かれそうだけどな。

「失礼しまーす。」

俺の入室許可を受けて、扉を静かに開けて入室してくるカルラ。いつものお転婆な様子からは、全く想像できない。

カルラは、椅子の横に立つと出身と名前を告げてお辞儀をする。

「姫騎士領、聖都フィノ・ベルンから参りました。カルマ・ブレアス・ピトアです。」

いや、普通すぎて、本当に本物かどうか疑わしくなってきた。

「どうぞ、おかけください。」

「失礼します。」

会釈をして、木製の椅子に腰を掛ける。

まぁ、これは、俺の特訓なので気を引き締めて、とりあえず、マニュアル通りの質問をっと。

「聖都フィノ・ベルンでは、何を?」

「主に盗賊やモンスター狩りをしていました。時々、親衛隊や護衛兵と訓練をしていました。」

うん。間違いない。カルラ本人だろうな。お転婆(てんば)感が、満載な返答をもらった。てか、近衛兵の訓練もしてたのかよ。

「御両親は、何をされていますか?」

そういや、カルラの父親は、見たことも聞いたこともないな。

「はい。ママは、姫騎士領の聖女として、領土管理と財政などをしています。」

まぁ、今は、扉の後ろにいるけどな。……下手な質問したら殺されるな、これ。

「パパは、魔界とこの大陸と神界(じんかい)を行ったり来たりしています。」

……何をしているのか、全く分からねぇな。遊びほうけているのか?

まぁ、パパさんについては、この際どうでもいい。それよりも、最後の質問だ。……本当に俺の命が、(かか)っているからな……真面目なので行こう。

「何か特技はありますか?」

まぁ、これなら問題ないだろう。

「はい!24時間耐久モンスター狩りやあたし対聖都の軍などで、無傷で勝利することが出来ます!!」

そ、それは、特技なのか?まぁ、ともかくこれで質問は、終わったから、あとは退出を願うだけだ。

「そうですか。ありがとうございました。以上で面接は終わります。」

「えー。もっと話そうよー。魔王様ー。」

「いや、これは、俺の面接官としての練習だからな。色々な人とやらないと練習にならんから。」

カルラは、「ちぇー」とか言って椅子から立ち上がり、扉から出ていく。

「ふぅー。疲れた。」

正直、今の面接が、とっても緊張した。クサリさんの時と違って、命の危険もあったしな。


数分後、再び、この部屋唯一の扉がノックされる。

「どうぞー。」

正直、クタクタだったけど、1週間後には、全く知らない人達を相手にして、今より多い人数を相手するんだよなぁー。

「……失礼……します。」

扉を開けて入ってきたのは、周りからムーちゃんと呼ばれている小さいけど、実は、力持ちの娘だ。

「名前と出身をどうぞ。」

……そういえば、メイド隊の人達の名前って、あんまり知らないんだよな。

……確か、この特訓中でメイド隊全員が、面接相手になる予定だから、ちょっと覚えてみようかな?

「……ムーちゃん…………魔界……出身。」

「いや、ニックネームじゃなく、本名を教えてくれるかな?」

「…………ムーちゃん。」

首をかしげながら、同じ名前を告げる。……もしかして、本名なのか?ま、まぁ、いいか。次にいこう。

「お座りください。」

コクっと頷くと椅子に腰かける。……何となくだが、一番の強敵な気がする。

「魔界では、何を?」

「…………お昼寝。」

お、お昼寝って……。

「ご両親は、何をされていますか?」

「…………お昼寝。」

で、デジャブか?……3人で川の字ってことなのか?

全く、予想外の出来事で頭がパニック寸前だったが、こんな面接で凄く気になることが……。

「一日のどれくらいを……お昼寝に?」

この質問を聞いてから、いきなり手を見て、指を折っていくムーちゃん。

「……………………指……足りない……。」

そう言うと、俺の方をジーっと見てくる。

「……指を貸せばいいのか?」

コクコクと頷くムーちゃん。……かわいいなぁ。

両手を広げて、見せる。……両手で足りないほど寝てるのか?むしろ、そんなので生きていけるのか?

「これくらい。」

俺の10本の指の内、7本を折ってそう告げる。

「……17時間……かな?」

コクコクと頷く。1日の半分以上を昼寝してたら、職業と……って言えねぇからな!?ま、まぁ、いいや。…………いいのか?

「これで、面接を終わります。ありがとうございました。」

終わりを告げると、コクっと頷き、椅子から立ち上がる。

テトテトと効果音を付けたくなるような歩き方をして、扉の前まで行き、一礼をしてから、部屋を出ていく。

「……なんか、呆気なかったな。」

だけど、あまり分からなかった。むしろ、謎が増えた気がする。


ドンドン。

荒々しく扉が叩かれる。ノックと言うより、壊そうとしているみたいだ。

「はい。どうぞー。」

扉を豪快に開けて入ってくるのは、褐色肌で赤毛のリンさんだ。……結構、豪快なんだよな、この人。

「失礼するぞ。」

……こんな態度で面接をしたら、クサリさんにボコられそうだよな。

「名前と出身をどうぞ」

「おっす。ゴブ・リン、魔界出身だ。」

こんなので大丈夫なのか?メイド隊によく入れたなぁーと失礼ながらに思ってしまった。

「どうぞ、おかけください。」

「うす。」

どっこいせっと言いたくなるような座り方をするリンさん。オヤジじゃないんだから、メイド服なんだし、もっとおしとやかにして欲しい。

「魔界では、何を?」

なんだろうな。カルラと同じような返答が来そうだなぁ……。

「あ、編み物や人形を作ったり……。」

「へぇ?」

よ、予想外なことを言われたため、思わず聞き返してしまった。

「だ、だから、編み物とか……。」

恥ずかしいのか、顔を赤く染めながらつぶやくような声で言ってくる。あ、編み物って、……なんだろう、こっちも恥ずかしくなってきた。

「ご、御両親は、何を?」

「りょ、両親は、魔界でふ、ふぁ、……ファンシーグッズの店をしています。」

……性格や日ごろの態度を見ているだけに今のリンさんの反応や発言にとんでもない違和感を覚える。

いやいや、まさか、あのリンさんから、ファンシーなんて言葉を聞けるなんて……。

少し感動していたが、次の質問は、もう決まっていた。と言うより、最初の質問でこれを聞かなければと思った。

「今までにどれだけ、編み物を作ったのですか?」

正直、人材確保に要らない質問だけど、……どれくらいハマっているのかが気になる。

「……10」

な、なーんだ、10コか。10コくらいなら、そんなにハマっている訳じゃないんだ。ちょっと安心した。

「億くらい作ったな、うん。」

…………。

「おーい。面接官?」

はぁ!……ちょっと、予想外過ぎる数字の単位にフリーズしていた。どんだけ、はまってんだよ!

「こ、これで面接を終わります。あ、ありがとうございました。」

「おう!サンキュー!」

照れ隠しなのか、入ってきた時よりも大きい声で言うリンさん。豪快な人だけど、何と言うか、かわいらしい一面を知れた。


トントンっと、扉がノックされる。

「どうぞー。」

もう何度目になるのか、慣れてしまったのと疲れてきたせいで声がたるんでいた。ついでに態度も。

「魔王様。少々休憩にいたしましょう。」

部屋に入ってきたのは、クサリさんだった。

休憩のためにティーセットをワゴンで持ってきた。なんか、メイドさんだな。いや、そうなんだけどな。

この1ヶ月間は、戦ってばかりだったからな。

「どうですか?少しは、慣れたでしょうか?」

「まぁね。最後の質問と採点をしながらってのはまだ、不安だけどな。」

実際、誰1人まともな採点が、出来ていない。

「まだ、時間がありますので、焦らずにしっかりとモノにして下さい。」

モノにするのは、いいけど、……そんなに重要か?俺が行う最終面接。けど、そんなことを聞いたら、お説教を貰いそうなので、口が避けても言えない。


「それでは、次の人を呼んで参ります。」

ワゴンと一緒にクサリさんが出ていく。確か予定だと、次は、吸血鬼の娘だったかな?

どんな娘だったかなぁーと思い出そうとしていたら、トントンと扉がノックされる。

「はい。どうぞー。」

「失礼します。」

お辞儀をして、入ってくるのは、予定通り、モルモーさんだ。

名前は、……書類で知っていたんだけどなぁ。

「お名前と出身をどうぞ。」

「はい。モルモー・ヴァン・アラゴルムです。魔界出身です。」

「お掛けください。」

「失礼します。」

「魔界では、何をされていましたか?」

「はい。家事をしていました。」

「ご両親は、何をされていますか?」

「母は、専業主婦です。父は、商社で会社勤めです。」

おい。あまりにもフツーの面接で、トントン拍子で最後の質問になっちまったぞ!ど、どうしよう?

「……す、好きな食べ物は?」

「はい。トマトです。」

……終わったぞ。呆気なく終わっちまったぞおい。こ、これでいいのか?

休憩を入れる前が凄すぎてなんだか物足りないけど……。

「い、以上で面接を終わります。ありがとうございました。」

「はい、ありがとうございました。」

扉の前まで歩いていく、モルモーさん。

「失礼します。」

お辞儀をして、部屋を出た。

吸血鬼なのに、何だか…………フツーだったな。記憶に残りにくい、いや、逆に残るか?…………無理だな、すぐに記憶から消えちゃいそうだ。


モルモーさんの面接が終わってから、10分くらい経った。

「……全然来ないなぁー。」

次は、ゴルゴン三姉妹の二女が来るはずなんだけど……。

扉がノックされる気配が、微塵(みじん)も感じない。

「呼びに行くべきなのか?」

不安がっていたら、トントンと扉がノックされた。やっと来たか。

「どうぞー。」

「失礼するよ、魔王君。」

…………何故か、国王が入ってきた。

「いや!なんでだよ!?」

「ハッハッハッ。来ちゃった。」

「いや!来ちゃったじゃねぇだろ!?…………てか、なんでここにいるんだよ?」

……あれ?デジャブ?っと思ったが、そんなことは、どうでもいい。

「いやはや。こんな面白そうな催しをしているなら、一声かけて欲しいよ。」

全然、面白くないからな?うんざりしながら、国王に用件を訪ねる。

「で、何のようだ?結構忙しいから、なるべく手短に頼む。」

「うん?だから、君の面接官の特訓とやらに付き合ってあげようと思ってきたんだよ。」

ま、マジでか?……違うな。絶対面白そうだからとか、結構下らない理由だぞ。

「その目は、全く信用していないね。酷い!力を合わせて、女風呂を覗いたっていうのに!」

「こら!嘘をつくな、嘘を!お前1人で覗いて、勝手に自爆しただけだろうが!!」

共犯にされてたまるか!

「まぁ、そんなことはどうでもいい。」

…………なんだろう、今のやり取りだけで、スゲェー疲れた。

「それじゃ、もう一度、入るところからやるから。しっかり、面接官をするんだよ。」

なんか、勝手に始めようとしてるし……。そして、国王は部屋を出て、扉をノックする。

もうやる気は、なかった。……無視してやろうかとも思ったが、したらしたでうるさそうだ。

「どうぞー。」

「し、失礼します!」

ガッチガチじゃねぇかよ!緊張しすぎだろ!?てか、国王がこんなので大丈夫なのか?

「名前と出身をどうぞ。」

「ふぉ、フォテス・レックス、ゆ、ゆゆ、勇者領の王都レクサスの出身です。」

言い終わってから、実は演技でしたと言わんばかりに、にやけだす国王(ひまじん)。……本当に楽しそうだな、こんしくしょー!

「お掛けください。」

「失礼します。」

突然、真顔になって、椅子に座る国王。な、なんだ?まぁいい。気にしててもしょうがない。さっさと終わらせる!

「王都では、何をされていましたか?」

「はい。現在進行で、国王をしています(キリ!」

ま、真顔で言われるとイラッとくるな。……ホント。

「ご両親は、何をされていますか?」

すると突然、オイオイ泣き出した国王。な、なんだ?なんで泣き出したんだ?

「お、お母さんは、……ヒック、……川で洗濯を……ヒック……お、おと、……お父さんは、……ヒック…………山に芝刈りをしています。」

……コイツ、ウゼェー。なんで泣き真似しながら、嘘ついてくるんだよ。泣き真似、要らねぇだろ。

「まぁ、2人とも王都で隠居生活しています。」

俺が呆れていたら、さらっと言いやがったよ。本当に何なんだ!暇か!暇人にもほどがあるだろ!?

色々と言いたい事があるけど、グッと我慢して、最後の質問をする。

「……どうやってここまで来たんだよ。」

「あぁ。ちょっとエクスかリバーで。」

「おい!たかが移動するのに、そんなもん使うなよ!ちょっとそこまで、みたいな軽いノリでそんな物騒なモン使うんじゃねぇよ!!」

俺は全然、覚えてねぇーけど確か、俺が暴走した時で久しぶりに抜き放ったらしい。……人生で2回目らしい。それを、たかだか、移動のために……。

「みんなも絶句していたよ。いやー面白かったよ、その時のみんなの顔!」

ハハハっと笑う国王。規格外だな、本当に。

「おっと!もうこんな時間か。いや、楽しい時間は、あっという間に過ぎていくもんだね。では、帰るよ。」

「おう、さっさと帰れ!」

冷たいなぁーとぼやきながら、部屋から出ていった。……なんか、一番疲れた。


国王の冷やかし、もとい電撃訪問から、5分くらいに本来なら30分前に面接に来るべき人が来た。

「何かあったのか?」

「い、いえ!ちょっと、お仕事でして。お待たせして、すいません。」

まぁ、無事なら問題ないけどさ。

「と、とりあえず、入室から(おこな)いますね。」

そう言って出ていくテンノーさん。ゴルゴン族特有の蛇の体で、蛇行しながら扉を出ていく様子は、まるでお尻を振っているように見えた。……いやらしい目では見てないからな!

部屋を出てからすぐにノックの音が聞こえる。

「どうぞー。」

「失礼します。」

椅子の横まで、クネクネしながら移動するテンノーさん。……どうやって椅子に座るんだろうか?

「名前と出身をどうぞ。」

「はい。テンノー・スネク。魔界出身です。今日は、お願いします。」

腰と思われる部分から体をキレイに折ってお辞儀をするテンノーさん。

3姉妹で、全員メイド隊に属している。テンノーさんは、3姉妹の2番目にあたる。

「おかけください。」

失礼しますと言って、木製の椅子に蜷局(とぐろ)を巻くようにして座る。座るであっているのか?気になるけど、質問、質問っと。

「魔界では、何をされていましたか?」

「はい。彫刻をしていました。」

へぇー。彫刻かぁ。

「ご両親は、何をされていますか?」

「母は、彫刻家で、父は、陶芸家です。」

げ、芸術一家なのか。俺は、さっぱり分からないから、凄いとしか言えないけどな。お姉さんも妹も芸術をしていたのかな?……ちょうど、最後の質問だし、聞いてみるか。

「3姉妹とも、彫刻とかしてるんですか?」

「う、う~んと…………してないです。」

そ、そうなんだ。な、なんか気まずくなったなぁ。さっさと終ろう。

「い、以上で終わります。ありがとうございました。」

「ありがとうございました。」

椅子から立つ?とお辞儀をして、扉までニョロニョロ歩き?部屋を出ていった。

ある意味、動作に疑問を持つ人だったなぁ。立つとか座るとか。

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