はじめて、魔王様に挑戦なの!
「『三点突き』!」
デュランダルで魔王様に攻撃するものの、簡単に避けられちゃう。
「『バインドチェーン』!」
「『甘い……』」
呆れたように呟きながら、クサリんの攻撃が、魔王様の体をすり抜ける。なによ!『ファントム』って!反則じゃないの!
あたしの攻撃は、全部避けるくせに、それ以外の攻撃は、今みたいに体を透過させちゃうの!
「このままでは、こちらが不利になる一方ですね。」
クサリんの言う通りなの。魔王様は、魔力を使いたい放題で、こっちは、そんなに使えないの。
「『もう、終わりか?……なら、こちらから行くぞ。』」
また、詠唱を始めたの!?
「不味いですね。」
クサリんが、詠唱を聞いてから眉間にシワがよったの
「不味いって、何が?」
「今詠唱している魔法です。……恐らくですが、土属性上級魔法『グラビティ』の詠唱かと。」
「『グラビティ』って、ペチャンコにされちゃう魔法だよね!?」
「ペチャンコって…………そうです。」
うん?どこか違ったのかな?
「なんとかして、詠唱を妨害しなければ!」
確かに。そんなの使われちゃったら、戦えなくなっちゃう!
「クサリん!行くよ!!」
詠唱の妨害をするため、デュランダルを構え直して魔王様の元へと走り込む。
「『猪突』!」
詠唱中の魔王様は、さっきと同じようにあたしの頭上を飛び越えて、デュランダルをかわす。
けど!
「クサリん!!」
「『チェーンデストラクション』!」
アンリミテッド状態で鎖の束を魔王様にぶつける。
だけど、『ファントム』が発動しているから、魔王様の体をすり抜けて、あたしの方に鎖の束が迫ってくる。
「カルラ様!」
魔王様!見ててくださいよ!!これが、あたしとクサリんのコンビプレーです!!!
鎖の束が、床に突き刺さりアーチ状を作り出す。あたしは、その鎖の束に飛び乗り、デュランダルを構えて走り出す。
「『猪突』!」
鎖の束を足場にして、魔王様を背中から襲う。もちろん、これもあたしを飛び越えるようにしてかわそうとするけど、
「ふぅっっっん!」
クサリんが、魔王様へと鎖の束で道を作る。あたしは、そのままの勢いで鎖の道を走り、構えたデュランダルが、魔王様をとらえる!
「『ぐぅう!』」
デュランダルが直撃する手前で体を半回転させ、なんとか回避する魔王様。もうちょっとで致命傷を与えられたのに!……でも、詠唱は止められた!
「どうよ!あたしとクサリんのコンビプレーは!」
鎖の束は、消えて地面に着地するあたしと魔王様。
「『……ふん。たかだか、かすり傷程度だ。何ら問題ない。』」
余裕ぶっているようだけど、この作戦で攻めきってみせる!
「クサリん!もう一回!」
「はい!行きます!『チェーンデ』っぐふぅ!」
「『させると思うか?』」
魔王様の拳は、いつの間にか、クサリんの腹部にあった。全く見えなかったの!?
50メートルくらいの距離を一瞬で詰めたの!?
「クサリん!!」
「す……みま…………。」
そのままクサリんは、気絶しちゃった!?
ど、どうしよう!?あたしって、めちゃくちゃピンチじゃない!!
「『あとは、お前だけだな。』」
クサリんを床に放り投げるとあたしの方を向く。
ま、不味いの!単調な攻撃は、全く当たらないし、かといって、デュランダルで細かい動きなんて、今のあたしには出来ないの!
「……それでも!」
諦めるわけには、いかないの!あたしは、デュランダルを構える。
絶体絶命の大ピンチだけど、クサリんの分まで頑張るの!
「『猪突』!」
当たらないと分かっているけど、……足にありったけの魔力を注ぐ。
当たれと願いながら、……大きく一歩を踏み出す。
魔王様を取り返すのと思いを込めて、……デュランダルを前に突き出す!
「『いくら、速くても、単調だから、避けられる。』」
これで、3度目なの。だけど!!
「こんのぉぉぉぉおおお!!!」
トップスピードを維持した状態で、無理やり跳ぶ。デュランダルが重いためか、縦に回転をしながら、魔王様を切りつける。
「『ぐっふぁ!』」
あたしの粘りが、予想外な軌道をしたためか、デュランダルが魔王様を斬りつけた。
「うっく!!」
回転していたせいで、着地に失敗しちゃったけど、魔王様に何とか攻撃できた。
「もう、1回!」
立ち上がり、着地の時に手放しちゃったデュランダルを拾い上げながら魔王様の方へと走る。
「『そう何度も、同じ手を、食らうと思うか?』」
「取り返すまで!何度でもやってやるわよ!!『猪突』!」
トップスピードに入りまた避けられると思った。しかし、
「『黒炎の鎧』!」
魔王様の体が、黒い炎で包み込まれる。今度は、避けないの!?
「うりゃぁぁぁぁああああ!!!」
魔王様の胸辺りをデュランダルが突き刺す……はずだった。
「な、なんで!?」
この世の物質なら斬れないものはないと言われているデュランダルの刃が、黒い炎で防がれた。
「『……終わりだ。』」
引き抜こうとしても、びくともしない!ま、不味いの!!
「『死ね!!』」
魔王様は、黒い炎をまとった右手で、あたしを殴りつけた……。




