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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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初めての共闘に挑戦!

お久しぶりです。

今回は、『ガルナ』編の戦後処理の話です。

どうぞ!

俺、棚部(たなべ) (りょう)は、『ガルナ』を出て、次の勇者領である『ジェナム』へと向かうための馬車を待っていた。

「それにしても、こんなとこを馬車が通るのか?」

隣で新聞を読んでいるクサリさんに聞く。

ちなみに、この新聞は、大陸で最も情報量が多い新聞だそうだ。

「本数は、少ないものの『ガルナ』の兵士達が、よく利用する馬車駅です。……あと15分くらいですね。」

見渡す限り草しかない景色の中、ポツンと4人くらいしか座れないベンチで、俺とクサリさんの2人だけで馬車を待つ。

俺は、やることがないから、ボーっと青空を眺める。

……清々しいほどに青い。

クサリさんは、熱心に新聞を読んでいる。それこそ、新聞に穴が開きそうなほどだ。

何で、こんなに真剣に読んでいるかというと、『ガルナ』の領主が、誰かに殺されたからだ。

しかも、首から上が無かったらしい。……俺は、直接見ていないから分からないけど。

「そういえば、ウサギの女性に会えましたか?」

う、ウサギの女性と言うのは、獣人族のウサギタイプの人のことだ。

「あれは、ウサギの女性じゃない!お、俺は、断固として認めん!!」

話は、少しだけ(さかのぼ)る。


『ガルナ』から解放された奴隷達と一緒に獣人族の村へと帰ってきた。

「とりあえず、メイド隊に連絡をしておきました。」

クサリさんは、連絡用の魔道具を使って、魔王城へと連絡をいれた。

内容は、『ガルナ』へ勇者を派遣することと領主の変死についてだ。

今は、トビーの家でお茶を飲んでいるとこだ。

「お前ら、呑気(のんき)にお茶なんか飲んどるなよ!奴隷達の割り振りを手伝えよ!」

言われた通り、呑気にお茶を飲んでいるところに、ガジーが、怒鳴り込んでくる。

「手伝えって、どうすりゃいいんだよ?」

ちなみに、今、割り振っているのは、元奴隷達の仮住まいの家だ。

俺とクサリさんは、この村について、知っていることは少ない。ましてや、家についてなんて、外観くらいしか分からないから、家の割り振りなんて無理だろ?

ガジーにその事を伝えたが、それならと別の仕事を渡してくる。

「なら、仕事の割り振りをやってくれ。そっちならできるだろ。」

本来なら、そんなに仕事もないのだが、元奴隷達の労働精神が、凄まじく、何でもいいから仕事を寄越せ!って感じなんだとか。

そこで、急遽、今まで出来なかった仕事や人手が不足している仕事を洗い出し、それを割り振ることになった。

ガジーは、仕事の一覧が書かれた紙束を机の上に叩きつける。

「頼んだからな!」

……怒ってんのか?

ガジーが、扉を勢いよくバンっと音をたてて閉める。

まぁ、回りが動き回っていて、自分だけなにもしないってのも気が引けるしな。……やりますか。

俺は、椅子から立ち上がり、紙束を持って外へと向かった。

クサリさんも手伝ってくれるのか、席を立つ。

「魔王様。その紙に書いてある仕事には、何があるのですか?」

そういや、俺も把握していないな……。

クサリさんの問に紙をしっかりと見る。

「えっと、薪拾いに食料調達、あと、簡単なモンスター狩りかな?……他にも色々あるな。」

ほい、と紙束を渡す。

「……確かに色々ありますが、……どれもそんなに人が要りませんね。」

まぁ、確かにな。

「そもそも、これだけの仕事をいつまで行うのかが、問題ですね。」

「確かにそうだな。モンスター狩りなんて、狩りすぎても問題だしな。」

一見、害しか与えていないモンスターだが、実は、その地域で役立っている場合もあるらしい。

例えば、毒を撒き散らす植物が生息している地域が、存在するのだが、その植物は、地下水の除染をしてくれるらしい。そして、その水は、他の動植物の生態系に欠かせないものとなっている。

昔、その植物を全滅させたら、悲惨な結末を迎えたため、毒を撒き散らすが、無くてはならない植物ということで再度、植えられたとか。

「他の仕事も場合によっては、1度で終わるモノもございます。」

仕事がないってより、人が多すぎるのか……。

「なぁ、『ガルナ』って、今どうなってるんだ?」

「今は、勇者の到着待ちで私達が、攻め込んだ状態のままです。もしかして、」

「あぁ。そこの管理を任せられないかなってな。」

そこそこ広いし、管理は、半永久的に必要だしな。

「そうですね…………不安要素もありますが、提案だけでもしてみましょう。」

俺達は、元奴隷達の仕事を割り振るために村の広場へと向かった。


そして、広場についたのだが、

「お、押すな!な、並んでくれ!!頼むから!!」

「順番に!順番に並んでください!!」

……戦場だった。

まるで、バーゲンセールのおばちゃん達が、我先に欲しいものを勝ち取ろうと必死になっていた。

まぁ、この場合は、仕事なんだけどな。

「ま、魔王様!」

クサリさんが、人だかりに飲まれていく。

お、俺も無理!助けて欲しいくらいだった。

「おい!あっちに魔王様がいるぞ!!」

「わぁ!ほんとだ!!」「魔王様だ!」

「ちょ!お、お前ら!ま、……。」

……俺も人混みに飲まれた。


なんとか這い出た俺とクサリさんは、族長の家に一時退避する。

「た、大変な目に遭った……。」

「はい、魔王様。……想像以上でした。」

また出ていっても、同じことになるだろうと思い、中でどうやって割り振るかを考えることに。

「もう、こっちで誰が、何をするかを割り振るか?」

「ですが、人物像が分からなければ、振りようがありません。」

……そうだな。

子供にモンスター退治は、危険だな。

「……こういうのは、どうでしょうか?」

クサリさんのアイデアは、こうだ。

まず、どんな仕事があるのかを報せる。

知ってもらった上で、自分が、どの仕事をしたいのかを選んでもらう。

仕事によっては、人数制限なんかもあるから、その制限を越えていた場合は、抽選で選ぶ。

抽選を逃した人は、他の仕事へとついて貰うことにする。

これを割り振りきれるまで行う。

「……手間は、かかるけど、……無難な策かな?…………これでいくか。」

「では、準備と元奴隷の方々に詳細を知らせてきます。」

あぁ、と短い返事をするとそそくさとクサリさんは、出ていく。

俺か?俺は、待機することに専念する!


……まぁ、そんなわけもなく、仕事内容の説明などを手伝ったりしてるわけなんだが、

「魔王様!握手してください!!」

「さ、サインください!!」

「あー、はいはい。1人ずつ、順番にな。」

なぜか、握手会となっていた。

ちなみに、元奴隷の6割から7割くらいが女性であり、割り振りが決まった人たちが、俺の握手やサインを求めて並んでいる状態だ。

つまり、今の俺は、モテモテだ!

人生で初めての経験だ!この勢いで彼女でも出来ないだろうか!?

……出来ないわな。

「お、いたいた。魔王、ちょっといいか?」

後ろからトビーと……じょ、女性2人が近づいてくる。

「あ、握手なられれ、れ、列を並んでくれよ。一応、順番だからな。」

俺が動揺しているのが面白いのか、クスクス笑う女性。

「そんな堅いこと言うな。一応、お前の師匠なんだ、それくらいいいだろ?」

いや、でもね。こっちにも現実を受け止めるだけの準備とか心の準備なるものが、必要なわけなんだが……。

そんな俺の心の声も聞こえるわけもなく、トビーから女性の紹介を受ける。

「ウサギ系の獣人のノーラとポーラだ。お前の戦いぶりに惚れたそうだ。」

やだ~とかも~とか言って、今時の女子高生の様に否定している。……今時の女子高生ってこんな感じか?

「ま、待て!師匠、う、うさ…………ウサギ系!?」

俺の動揺は、ピークだった。


ここまで、あえて彼女達の容姿に触れていなかったが、それは、俺があまりにも弱いからだ。…………主に精神が……。

その彼女達(パ ン)容姿(ド ラ)の箱を開けようじゃないか!!

まず、ノーラの紹介だ。

目は、丸くそこそこ大きい。鼻の先が少しだけ黒くなっているが、それ事態は、不思議と違和感を覚えるほどじゃない。

特徴的な耳は、頭のてっぺんからピンッと伸びている。

実にウサギの女性だと言える。…………首より上は。

簡単にいうと雪ダルマだ。真ん丸なのだ。

俺が想像していたモノとは、大きくかけ離れている。


次にポーラの紹介だ。

こちらの目は、閉じているのか開いているのか分からないほど細い。けれども、どこか暖かい印象を与えてくれるそんな顔立ちだ。耳もノーラと同じく、頭から出ているのだが、彼女の耳は、左右に垂れ下がっている。ツインテール見たいに見える。

こちらも非常に可愛らしい。…………首より上は。

先程も言ったが、雪ダルマだ。真ん丸なのだ。

「し、師匠……ちょっと。」

俺は、グロッキー状態だったが、師匠を呼び出す。

彼女達にちょっとすまんと言いつつ、俺の側へと来る師匠。

「なんだ?」

「ウサギ系は、みんな、あんな感じなのか?」

俺が、すがるように聞く。

頼むから、否定してくれ!!

「あぁん?まぁ、個人差はあるが、だいたい、あんな感じだな。」

……希望は、入っていなかった。

「もしかして、おめぇは、もっとエロいのを想像してたのか?」

「あ、あぁ……そうだよ。もっと、肌色な感じだと思ってたよ……。」

胸の辺りや手首足首にウサギの毛がついていて、その他は肌色だと思っていたよ!

「まぁ、夏場になれば、肌をさらすようになるからな。その時期は、色っぽいのは、間違いねぇな。」

そ、そんな……。

「夏まで待てるかよ……。」

意気消沈していた俺だが、彼女らにサインと握手をして、仕事の割り振りへと戻った俺であった。


「未だに夢なんじゃないかと思っているよ……。」

「ま、まぁ、魔王様。一時期とはいえモテモテになられたので良かったではありませんか。(……カルラ様に聞かれたら、……)」

慰めの言葉をかけてくれるクサリさんだが、後の方が聞こえなかった。

「あ、魔王様。馬車が来ましたよ。」

だいたい、1キロくらい離れたところに馬車の影が見える。

とても長く感じた『ガルナ』攻略も終わり、残り1週間程度しかない。

「ところで、ここから『ジェナム』までどのくらいかかるの?」

肝心なことを知らないので、クサリさんに訪ねる

「はい。5日です。」

…………へぇ?

「あと何日「7日です。」あり…………。」

おい!2日で攻略するのかよ!!

締め切りに終われる感覚を初めて体験しました。

……もっと余裕が欲しい!!

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