『ガルナ』の領主を討ちます。
『ガルナ』編・完結です。
東の城門で魔王様と別れた私 クサリ・スクスは、城内部へと進んでいました。
「領主の部屋は、3階ですが、肝心の領主はいるのでしょうか?」
「さぁな。行かなきゃ分からん。」
先程からトビーの様子が、おかしいと思うのですが、……気のせいでしょうか。
「トビー?何か気になることでも?」
「いや。……何でもねぇ。何でもねぇんだ……。」
……怪しいですね。本当に何もなければいいのですが。
城門から城までの間に気絶した兵士が、山のようになっていましたが、戦えそうな兵士は、誰一人いないようでした。
……これを魔王様が、1人でやったのかと疑ってしまうほどです。
「ここの兵士は、どのくらいの強さでしたか?」
「………………。」
「トビー?」
呆けていたのか、突然呼ばれたことに驚くトビー。
……本当に大丈夫なのでしょうか?
「あ、あぁすまん。少しボーっとしとった。もう年かもしれんなぁ。」
「しっかりしてください。ここは、仮にも敵地なのですから。」
「すまんすまん。……と言ってもほとんどの兵士は、魔王が倒しちまってるんだ、心配要らねぇさ。」
あまりにもあっけらかんと答えるトビーにやれやれですね。
城内に入る前に一度地図で確認する。
「3階に行くためには、東側の階段と西側の階段を交互に上がる必要がありますね。……2階より上は、行ってないと魔王様が、おっしゃっていましたね。」
1階と地下は、探索したと聞きましたが、2階から兵士は、降りてこなかったのでしょうか?
「何にしても、出会ったら対応するしかないわなぁ。」
「そうですね。……なるべく温存しておきましょう。」
トビーから、あぁと同意を得られたとこで、城内に侵入します。
城内に入り、東側の階段まで進んできましたが、兵士が1人も見当たらないのは、魔王様が兵士全員を気絶させたからでしょうか?
「……あまりにも、警備が手薄な気がするのですが。」
「確かに、怪しいな……。気をつけて進むぞ。」
気を引き締め、いざ、2階へ。
2階の造りは、少し複雑で、碁盤のように格子状に通路があり、小さな部屋が、いくつもあるのですが。
「迂闊に通路を歩くとトラップが、あるそうなので、気を付けてください。」
「あぁ、分かっとるよ。……この階にも、兵士が見当たらないな。」
トビーの言う通り、少なくとも、周囲に兵士がいる気配すらないです。……部屋にこもっているのでしょうか?
通路を決まった通りに歩く2人。……まるで、消えたように兵士に会いませんねぇ。
「……ここの警備は、本当にどうなっていやがるんだぁ?誰1人、会わねぇじゃねぇか。」
「こちらとしては、ありがたいことこの上ないですが、……不気味ではありますね。」
力を温存できることは、ありがたいのですが、兵士が、誰1人いなくなる状態には、寒気を感じます。
……怖じ気付いている場合じゃないですね。
「いきますよ。」
「あぁ。」
3階は、領主の部屋とそこに通じるベランダがあるくらいです。目的の領主の部屋は、階段を上がって、すぐです。
「ッ!?」
「これは!?」
予想もしていなかった出来事に、固まる2人。
領主の部屋には、所々血の池が出来ており、壁にも血が飛び散っている。何より、首より上がない、胴体だけの遺体が、そこら中に……。
ですが、何よりも衝撃だったのは、
「あ、あれは、領主の遺体でしょうか?」
「……あの状態じゃ、誰かなんて分からねぇが、たぶんそうだろうな。……服が、周りと異なっている。」
領主の机の前に領主であろうモノが、血の池の真ん中で座っていました。
……拷問でも受けたのか、爪が剥がれ落ちており、両手両足には、長剣が1つずつ刺さっている状態で、……首が、ありませんでした。
「一体、誰がこんなことを?」
「……魔王じゃねぇよな?」
「な、何を言い出すのですか!?ま、魔王様が、こんなことをするはずがありません!!」
2人は、その場を逃げるように、離れました。
「ど、どうかしたのか?2人とも、顔色が悪いぞ?」
東側の城門まで戻ってきた私とトビーは、城内で何があったのかを魔王様に伝えました。
「首なしの遺体か……。気味が悪いな。」
「人間の仕業なのかどうかも怪しいところだな。」
「……ここで考えていても仕方ないですね。とりあえず、今ここにいる皆さんを獣人族の村まで案内しましょうか。」
悩んでいてもしょうがないので、ここにいる皆さんと『ガルナ』を離れることに。
ちなみにですが、ここにいる皆さん以外に捕まっていないかを調べたのですが、どこか他の場所に連れていかれたのか、……どこにもいませんでした。
「一先ず、終わりましたね、魔王様。」
「……あぁ。なんかやるせないけどな。」
それはそうですよね。なんせ、領主は、何者かに無残にも殺されているんですから。
「『ガルナ』は、どうすればいいんだ?」
「そうですね。……『ペルン』か魔王領本領に連絡を入れてもらいましょう。」
「あぁ、そうか。あとは、勇者たちに任せるってことか。」
「そういうことです。では、次の領地『ジェナム』へと向かいましょう!」
「おう!」
獣人族の村をさっそく出る私と魔王様でした。
それにしても、誰が『ガルナ』の領主を……。
次は、短編の予定です。
お楽しみに!




