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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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初めての奴隷解放に挑戦!

俺 棚部(たなべ) (りょう)は、奴隷解放のために『ガルナ』城内を探索していた。

ただ、兵士の量にうんざりしながらも帰りのことを考えて、なるべく、気絶させていこうと気合を入れなおしたところだったのだが。

城内に入り、すぐ目の前にある扉を思いっきり開く。……開いてから後悔したけどな、反省はしていない。

「また、勇者かよ!しかも今度は、兵士付きとか、シャレにならんからな!」

「『また』ということは、そうか。お前が、カズをやったんだな。」

一番内側の城壁付近で戦った勇者の名前は、『カズ』か。……なるべく早く助けてやってね、壁に埋まっているから。……なんて言えないけど。

「悪いけど、急いでいるから、ちゃっちゃと終らせる!『炎の鎧』!!」

「お前なんて、俺にかかれば、……ぐほぉ!!」

勇者のセリフを最後まで聞かずに殴り飛ばす。……ホントに時間をかけすぎるとろくなことがないからな。

兵士がわらわら集まってくるとか……。

「勇者『ボン』が、やられた!!」「な、なんて奴だ!」「化け物か!?」

誰が、化け物だ、誰が!

「総員、構えろ!!」「勇者『ボン』の敵!!」

……なんだろな、なんか同じ奴がいる気がするんだけど、……気のせいか?

全員が、銀ピカの兜と鎧を装備しているから、わからねぇけどな。

「お前らもそこらでのびていやがれぇ!!」

『剛打』で殴り飛ばし、壁にぶつかって気絶するというお馴染みの光景となった。

「ふー。さて、奴隷たちを探さないとな。」

こういう時って、牢屋にいるものなんだろうか?

とりあえず、地下を目指してみるか。……牢屋、あるかな?


『ガルナ』は、3重の円筒状の城壁に囲まれている。

そして、城内部は、地下1階と地上3階建てになっている。1階1階の広さは、あまり広くない。

っと言っても『ペルン』は、一軒家のような感じだったしな。城っていうと、聖都くらいしか知らねぇから、比較するのがバカらしいな。

城内部の地図も穴ぼこだらけであまり使えない。……なんでこんな地図を渡したんだよ、師匠は!

俺は、階段も梯子(はしご)も登っていないので、たぶん1階だな。

この穴ぼこだらけの地図を信じるなら、1階の中央の部屋が、ダンスホールのようなところで、かなり広い造りになっている。勇者と戦ったところだ。

そのホールを囲むように、カタカナのろの字のように廊下がある。

それで、地下へ行くには、西側か東側の廊下の突き当たりに階段があるらしいから、それを降りるってことだな。……たぶん。

「地下への階段は……。おっ!あったあった。」

ホールで勇者達と戦闘をして、西側の廊下を歩いていると、階段を発見した。……下にしか降りられないようだ。

「……地下へ行くには、ここしかないのか?」

まぁ、入ってから考えるか。のんきに地下へと降りていく。

地下へ降りたもののろうそくの火しかなく、そこはかとなく、暗い。

こんなとこで、『炎の鎧』を使うのは、やばそうだな。……目立つだろうなぁ。

近くにランタンでもと思って、探したものの、見つかりそうにないから、諦めて、進むことにした。

地下の造りは、地図でもよくわからなかった。

……穴ぼこの比率が、異様に高いんだよな。

俺は、ぼやきながらも、前絵と進んでいく。

5分くらいたった時だった。

「だ、誰かいるのですか?」

右前方から少女の声が聞こえた。……幽霊じゃありませんように。

恐る恐る近づいて見ると鉄格子のある、留置所です!(入ったことも見たこともないけど)っといった感じの場所に出る。

たぶん、奴隷達だろう。

「今、助けてやる。ちょっと離れていろよ。」

鉄格子の前まで来て、『剛打』を放とうとしたが、……これってやばくねぇ?

「どうかしたのですか?」

助け出されると思っていたのになかなか、出してもらえないことに疑問を抱いたのか、不安そうに少女が訪ねてくる。

「いや、あまり目立つと兵士が、わんさか来ると思ってな……。」

熱で溶けるかな?

「10パーセント『フレア』!」

俺が調節できるギリギリの魔力で鉄格子を熱し始めるが、……赤くもならなかった。

「切断なら行けるか?」

『水の羽衣』を発動し、続けて『水の剣』を使う。

昔、テレビで鉄板を水圧で切っていたのを思いだし、やってみることに。

キンキン音が鳴るも、何とか鉄格子を切断する。

「出るのは、ちょっと待ってろよ。」

「う、うん。」

さっきの音で近くに兵士が来ていないかを確認する。

周囲をキョロキョロするが、……どうやら来ていないようだ。

「出ていいぞ。他の奴らも助けるから、騒がずに待っていてくれ。」

2人の少女と1人の女性が出てくるのを確認して、俺は、他の鉄格子を同じように切断していく。

「これで、全部か?」

男女、大人と子供を合わせてだいたい、70人ってところか。……どうやって移動しようか。

「くっそー。もう1人いればなぁ。」

ぼやいていてもしょうがねぇか。そう思い、来た道を引き返し、階段の場所まで歩を進める俺と解放された奴隷達。……今のところ、兵士が来る様子はないが、不安に思う。

階段を上がる前に一度立ち止まる。

「上の安全が確保できたら呼ぶから、少し待っていてくれ。」

「は、はい。」

そう告げると俺は、階段を恐る恐る上がる。……兵士がいませんように。


1階の階段付近には、幸いにも誰もいなかった。

「よし!上がってきてくれ!」

俺は、待機させていた奴隷達に上がってくるように伝える。

本番は、ここからだ。この大所帯を1人で守らなければならない。

ここから、抜け穴を通って出るのは、難しいな。

「あのー。ところで、貴方は一体?」

奴隷達の先頭を歩いていた男性に声をかけられる。

「俺か?俺は、3代目魔王をしている棚部 亮だ。」

そっけなく答えた俺は、周囲がビクッと固まったのを感じた。……まずったかな?

「ま、魔王!?」「どこに!?」「な、何だ?兵士たちか?」

一人また、一人とパニックに陥ろうとしていた。……まぁ、魔王って悪いイメージしかないからな。

この世界に来て、初めて恐怖された事に少しだけ、ショックを受けた。けど、

「怖がるのは、後にしてくれ。今は、ここを無事抜ける方が先だ。」

パニックは、少しづつ治まったものの、恐怖は、隠せないでいた。

「とりあえず、入り口に向かうか。」

奴隷達には、なるべくかたまって移動してもらうように告げる。そして、先頭を俺が、少しだけ離れて移動する。……仮に兵士達と戦闘になっても巻き添えを出さないようにするためだ。

城の入り口付近で一度止まる。こっからは、速さが求められる。

……兵士の姿を1度も見ずに来れたことを幸運と思うべきなのか?

「もうすぐ、城を出る。そしたら、東の城門まで走ってくれ。」

……緊張する。喉がカラカラだ。全員無傷で指定の場所まで行きたいけどな。……犠牲も覚悟しなければいけないのか。

「ふー。…………行くぞ!」

俺の掛け声と共に奴隷達が走り出す。もちろん、俺は先頭をなるべく離れないように走っている。

「いたぞ!」「あいつ!奴隷達を連れているぞ!」「殺せぇ!1人も逃がすな!!」

出て早々、城付近の捜索をしていたであろう兵士らに見つかる。

「殺させるかよ!『水の羽衣』!!」

体を水で覆い、すぐさま、右手を鉄砲の形にする。

「『アクアショット』!!」

水属性初級魔法の『アクアショット』を前方にいる複数の兵士に向けて放つ。

「ぐわぁ!」「どわぁ!」「ぐふぁ!」

城門の近くにいるからか、撃っても撃っても、どんどん出てきやがる。

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

悲鳴のした方を向くと、奴隷の何人かが集団から大きく離されていた。

何やってんだよ!振り向いたのと同時に走り出す。

「逃げ出す奴は、全員死刑だ!!」

「やめろって言ってんだろうが!!!」

100メートルくらいの距離を一気に詰め、奴隷を殺そうとした兵士にタックルを決める。

食らった兵士は、城の壁に激突して気絶する。

「立てるか!」

「は、はい!ありがとうございます。」

「いいから!早く!!」

急ぐように告げる。先頭集団からそれなりに距離が離れている。今では、縦長の状態で城門に向かっている。

……まずいな。離れれば離れるほど、守りにくくなる。

だからと言って、こんな敵地のど真ん中で止まるわけにもいかねぇしな。

「おい!お前ら!!ただで済むと思うなよ!!」

一番内側の城門で勇者が、構えていた。

おいおいおいおい!こんな時に勇者かよ!!

「て、敵だ!」「に、逃げろ!!」「こ、殺される!!」

だめだ!もうパニック状態だ!……こうなったら、土壇場でやってみるか。

「全員、止まりやがれぇ!!!」

俺の怒号に東門のそばにいた奴隷達と兵士達、勇者の動きが止まる。

「こ、これは!?」

「師匠譲りの『威圧』だ!」

……成功したのは、初めてだけどな。

俺は、ゆっくりと勇者に近づいていく。……魔力を少しでも減らしたら、どうなるかわからねぇからな、慎重に、慎重にと。

「悪いが、伸びててもらうぞ!『剛打』!!」

フルパワーは、出せないが、力いっぱい勇者の腹を殴る。

ドコンっとすごい音はしたが、『威圧』のせいで吹き飛ぶことがなく、その場で気絶したのを確認した俺は、一先ず、そのまま奴隷たちに声をかける。

「ちょっとは、冷静になったか?お前たちを守るためには、なるべく固まってもらう必要がある。」

俺の声を体が動けない状態ながらも聞こうとする奴隷達。

「ここから出るには、そこにある扉を開ける必要がある。それを何とかこじ開けるから、その間は、少しだけ待っていてくれ。」

俺は、そのまま城門へと近づいていく。

「と、止まれ!」「勇者が、勇者がやられてぞ!!」「誰か!応援を呼んでくれ!!」

東の城門付近にいた兵士たちは、動けないことでパニック状態だ。

「お前らも、伸びてろ!」

1人ずつ腹部に拳を入れ、気絶させていく。

……本来なら、縛っといた方がいいのだろうけど、縄とかないしな。

「ふー。それじゃ、行くぞ!」

『威圧』を解くと、俺は、固く閉ざされている城門の目の前で、構える。

「フルパワー!『剛打連拳』!!」

ドゴン、ドゴンと物凄い音をたてる城門だが、5発殴ったところで、穴が開く。

「よし、このまま次の門まで行くぞ!!」

「か、解放されるぞ!」「俺たちは、助かったんだ!」

まだ、2つも城門が残っているのにはしゃぎ始める奴隷たち。……いや、もう元奴隷と言うべきだな。


数回、兵士達に遭遇したものの、素早く気絶させたためたいした怪我もなく、2つ目の城門を目指していた。

「魔王様!2つ目の城門が見えましたよ!」

「お、おう。ありがとう。」

突然、声をかけられ、驚く俺。さっきまで恐怖していたのに、今では、その恐怖もなくなっているようだ。

そして、ここまで来て、ふと不思議に思う。

「そういや、クサリさんたちが動いているのに、なんでこんなに兵士が来るんだ?」

……思い返してみれば、もう100人近くの兵士を気絶させてきている気がする。

ま、まぁいい。今は、脱出が先だ。


東側の3重の城壁を大胆にも門を破壊して、突破する俺と元奴隷たち。

途中で、兵士らに襲われたものの、死者や重傷者を出すことなく最後まで突破することが出来た。

すると、元奴隷の一部が、ここに残ると言い出した。

「いやいや、何言ってんだよ。とりあえず、今は、ここを離れようぜ。」

俺の説得にも首を横に降る。

「いや、まだ中に大勢の奴隷たちがいるんだ。」「そいつらを置いてけねぇよ。」

いや、わかっているけどよ。

「それは、俺が何とかするから。さっさとここを離れようぜ。なぁ。」

「魔王様は、もうすでに疲弊しております。」「そんな状態で探しに行かれるのですか?」

……まぁ、限界に近い状態だけども。

「俺たちなら大丈夫ですから!」「女子供だけを先に連れてってや。」

「いや、大丈夫でも何でもいいから、行くぞって!」

今にも兵士が来たらどうするんだ?

「もう!皆!魔王様を連れていくわよ!!」「「「うおぉぉぉ!!!」」」

「いや、お前ら!ちょ、待って!胴上げは、やめて!おい!おめぇら!おい!!」

……お祭りの神輿のごとく大勢に担ぎ上げられて連れられて行く俺。……なすすべなしだった。


「ってわけだ。東側の一番外側の城門付近にまだ、4、50人くらいいるから、そいつらともう一度帰らないといけないよな。」

俺は、移動しながら、クサリさんとトビーに現状が、どうなっているかを伝える。

「そうですか。では、残る敵は、『ガルナ』の領主と兵士らということですね。」

「……あぁ。そういうことになるな。」

なぜか、トビーが困ったような顔をしていたが、……気のせいか?

「さっさと終わらせましょう!魔王様!!」

「おう!」

再び、城内を目指して、走り出す。


東の城門では、ここに残った奴らに出迎えられていた。

「何で戻ってきたんですか!?」「少しは、休まれたのですか?」

……少し起こり気味の歓迎だった。

「現状は?」

なるべく早く戻ってきたけど、それでも、1時間とは言わないが、それくらい経っている。

「特になにもありません。言いつけ通りここで待機しておりました。」

「そうか。なら、お前らは、ここから離れろよ。」

そう言ったとたんに、元奴隷達が騒ぎ出す。……まあ、予想は出来てたけどよ。

「これから、領主を倒すから、人質にされても厄介なんだよ。なぁ、頼むから避難してくれよ。」

「魔王様。」

俺が、必死に説得しているのに後ろからクサリさんに声をかけられる。

「魔王様は、ここで待機していてください。」

「な、何言ってるんだよ、クサリさん。」

「もう、ヘトヘトじゃないですか。ですから、ここから先は、私達に任せてください。」

「だ、だけど。」

俺が反論しようとしたときに、クサリさんは、反則技を使う。

「解放された皆さん!魔王様をよろしくお願いします!」

き、汚ねぇ!!

声をかけられた元奴隷達は、

「おう!任せとけ!!」「美人メイドさんの頼みだ!何がなんでも休ませるぞ!!」

「ほら!魔王様もこっちこっち!」

……もう、俺に選択肢はなかった。

「……わかったよ。くれぐれも気を付けてな。」

「はい。行って参ります。」

クサリさんとトビーは、城を目指して走っていった。

『ガルナ』攻略まであと少し!

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