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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
27/179

はじめての告白に挑戦なの!

お待たせしました!!

何と5,000ビューを超えていました!

毎回毎回、短いし、更新も不定期だしと文句も多いかと思います(むしろ、文句しかない?)。

ですが、ここまで読んできた皆さん!

心から、感謝しています。ありがとうございます。

これからも、今まで以上に面白いものを書いていきたいと思いますので、温かく見守っていてください。

感想などもくれると嬉しいです。

では、本編をどうぞ!!

――魔王の戦死より3週間前


あたしは、カルラ!

あたしまだ、10歳だけど、戦場では大活躍しているの!

今日も家の裏側にある洞穴に盗賊団が、住み着いたから退治するように頼まれたの!

本当は、ママと遊ぶ約束をしていたんだけど、3代目魔王が、異世界から召喚されたってお仕事に行っちゃったの……。

ママは、姫騎士領の中で一番強いからその分、皆のために頑張っているの。

それは、わかっているの。だけど…………。

「約束していたのに…………。」

今は、盗賊団退治に集中しようっと。


盗賊団が、住み着いたと言われている洞穴に到着したあたしは、一応デュランダルを出せる準備だけをして、中へと入っていった。

中は、ロウソクの火でそこそこ明るい。おかげで、奥へ奥へとズンズン歩いていける。

それにしても、……ママってば、あたしの事を可愛いって言いながら、全然遊んでくれない。

『聖女』っていう立場が忙しいってことは、分かっているの。街の皆のためにお仕事しなきゃいけないことも。

だけど、約束を守ることも大事じゃないの!?「おい。」

全く、いくらママが偉いからって「おい!」

あたしとの約束を破るなんて!「おい!止まれよ!」

「うん?」

気配を感じさせずにあたしの正面におじさん達が、現れた!

「いつの間に!!」

「結構前からだ!おちびちゃんが、止まらずズカズカ入ってきたんだろ!!」

あたしの身長は、おじさん達に比べれば小さいかもしれないけど、おちびちゃんって!

「なにしに来たんだ?ガキが、来るとこじゃねぇぞ!」

ムカッ。

「誰が、ガキよ!あたしは、カルラ!ここに住み着いた盗賊団を退治しに来たのよ!!」

「俺達を退治するだと?ハッ!笑わせるなよ子娘が!」

奥の方から一際低い声であたしをバカにする笑い声が聞こえてきた。

すると、周りのおじさん達も笑いだした。

ムカムカッ。

「笑ってられるのも今のうちよ!現れなさい!デュランダル!!」

怒りに任せてデュランダルを顕現(けんげん)させる。

「もう!許さないから!!」

一番近くにいたおじさんを(つか)で殴り飛ばす。殴り飛ばされたおじさんは、壁にぶつかって伸びてしまった。

一瞬の出来事で笑っていたおじさん達もあたしを警戒するようになった。

「てめぇ!よくもやりやがったな!!」

「殺してやる!!」

怒っているおじさん2人を最初に殴った人と同じ要領で倒す。

「うるさい!」

後頭部を柄で殴ったためか、気を失ってドサドサっとその場で崩れ落ちるおじさん達。

その様子を見ていた盗賊団の仲間達は、怖くなったのか、弓を構え始めた。

「あんなガキンチョになめられたままでたまるか!」

もう堪忍袋(かんにんぶくろ)の緒が切れちゃったわよ!!

「カギンチョ言うな!!」

一気に近づいて、デュランダルで殴り飛ばす。

両刃(もろは)だけど、剣の幅が広いから(たいら)な面で殴ったの!

殴った勢いで吹っ飛んで、壁にドンッ!とすごい音をたててそのまま動かなくなっちゃった。

「ひぃ!」

「まだやるなら、相手になるわよ!」

盗賊団退治もこれで終わりね!

後は、街の警備隊に逮捕させるまで見張っていればいいだけ。

「はぁ~。」

終わったと思ったら、また、思い出しちゃった。

「お嬢!どうしたんですか?」

「オジョウ?」

なにそれ?

そんな顔で見ていたら、盗賊団のリーダー格が、前に出てきて、

「あっしらは、お嬢の強さに惚れやした!お嬢のためなら、たとえ、火の中!水の中!どこへでもお供いたしやす!!」

って言ってきたわ!どうしよう?帰ってもやることないし、遊び相手になってもらおうかな。

「いいわ!なら、あんた達を鍛えてあげるから、覚悟しなさい!」

いい暇潰しになりそう!


「ほら、そこ!ちんたら走らないの!」

「へ、へ~い。」

体力作りのために洞穴の周囲を10周くらい走らせ中。

あたしも一緒に走っていたんだけど、周回遅れが続出して、テンションがだだ下がりするから、監督してくれって懇願されちゃったの!

「後、1周走ったら、あたしと組手をするから頑張って!」

「…………へい。」

「遅い順に組手だからね!!」

だらだら走り始めたから、脅してあげたら、皆が一気にダッシュし始めたわ!

そんなにあたしとの組手が、嫌なのかしら?


「ほら!次!!」

「うりゃ!」

宣言通りに、遅い順に組み手を開始したんだけど、個人の能力は、あたしより下。デュランダルすら、無しで勝てちゃうほど。

集団戦闘の技術を特訓した方がいいのかな?

「遅い!甘い!」

木刀を振りかぶってあたしの脳天を狙った攻撃は、降り下ろす速度が遅く、外したときの対処まで考えられていないから、回避と同時にカウンターをもらうのよね。

ついでに一撃を入れる。

「グッ!…………ウッ!」

「あんな大きな振りを始めから出したら、避けてくださいと言っているようなものよ!」

どうやら、気絶しちゃったみたい。

「……それじゃ、集団戦闘の特訓でもしようか?」

「集団なら、負けねぇだろ……。」

「でも、お嬢が相手だぜ?」

「いや、でもこの人数だぜ。いけるだろ。」

大の大人が30人ほど、円形に集まって、あたしに勝てるかどうかの相談を始めちゃった。

「デュランダルは、使わないから、安心してね。」

一応、あたしの特訓も兼ねているから、なるべく、デュランダルを使わないようにして、基礎体力の向上を目指しているの。

「よし!おめぇら!お嬢に良いとこ見せてやろうじゃねぇか!!」

「「「「「オゥ!!」」」」」

とりあえず、やる気になってきたみたいね!

「それじゃ!かかってきなさい!!」


10分後。

「これで最後の1人!」

相手の背中から、両手の(てのひら)で魔力を叩き込む。すると、殺さないまでも、気絶させるほどの威力が、出るの。

「………………しまった。」

あまりに白熱しちゃって、手加減抜きでやっちゃった。

「今日は、ここまでかな?」

気絶させちゃったから洞穴に運ばなきゃ。


気絶した人達を洞穴の奥にある部屋へと運び、あたしも休憩することにした。

休憩するのに選んだ部屋は、洞穴の一番奥にあるそこそこ広い部屋なの。床には、虎の毛皮でできた絨毯(じゅうたん)()かれていてその上でゴロゴロしているの!

「き~も~ち~い~い!」

ホントにフカフカなの!

「早く起きないかしらね~。」

暇だわ。ママとも遊べないし、街でも攻めちゃおうかしら?

「あれ?案外、いい案!?あたしって天才!!」

でも、あたし1人じゃ流石に攻めきれないし……。

「お嬢……。スイヤセンでした。」

「あっし等が弱いばかりにお嬢の相手がしきれやせんで……。」

あ!!

「そうじゃない!あなた達がいるじゃないの!!」

おじさん達は、「はぁ?」といった顔をしていた。

「もし、今日のが不甲斐ないと思うのなら、明日からあたしが、本格的に鍛えるから、覚悟しなさい!!」

あたしによる、ママのための、盗賊団の強化訓練が、幕を開けたの!!


――魔王の戦死より2週間前


特訓を開始してから1週間が過ぎた。

魔力による肉体強化を全員が習得して個人の戦闘能力が、飛躍的に伸びたの!

まだ、あたしとの1対1での戦闘は、誰にも負けていないけど、30分くらい闘えるおじさんも出てきたのよ!

集団なら、1時間でもまだ大丈夫になったの!

今は、お昼休憩をしているところで、あたしは、一番奥の部屋でどうやって街を攻め落とすかを考えているの。

ドンドン。唯一のドアが、荒々しくノックされる。

入っていいと声をかけたら、後衛に選ばれた4人のおじさん達が、ぞろぞろと部屋に入ってくる。

「お嬢!聞いてくだせぇ!!」

「うん?どうしたの?」

嬉しそうな顔をしたおじさん達が、自慢げにあたしに告げてきた。

「とうとう、中級魔法が使えるようになったんですぜぇ!!」

「と言っても、4人分の魔力を合わせないと使い物にならないですがね。」

「へぇー!すごいじゃない!!どんな中級魔法なの?」

中級魔法が、使えるようになるまでは、だいたい2週間から1ヶ月半くらいかかると言われているの。

なのに実際に魔力を用いた訓練を初めて、いくら4人分の魔力を合わせたからといっても、1週間で中級魔法が使えるようになるなんて、かなりの成長といってもいいわよね。

もちろん、とてつもない練習や特訓をしていれば、期間は、グーンと短くなるけど。

「説明するよりも見た方が早いですぜ。」

自信満々に言うおじさん達。これで不発したら大爆笑しちゃいそう。


早速、どんな中級魔法を扱えるようになったのかを確認するために洞穴の外にやってきた。

「じゃあ、見ているから。実際にやってみて。」

おじさん達は、うなずくと円形に向かい合って、左右の人と両手をつないで詠唱を始めた。

両手をつなぐことにより、各々の魔力を補い合いながら中級魔法に必要な魔力量までため込むのだろう。


あたしが習ったのは、『魔力保有量』と『魔力供給量』の二つの数値により、『魔力の使用効率』が決まるの。

『魔力の使用効率』が高ければ高いほど、高度な魔法を高確率で発動することが出来るようになるの。逆に言えば、これが足りないと、いくら詠唱しても発動しないの。

『魔力保有量』は、体内にどれだけの魔力を持つことが出来るかの量で一般的に人間は、50から60くらいの数値を出しているの。

『魔力供給量』は、魔力を体内にどれだけ効率よく取り込めるかの量を表していて、こっちは、30から40くらいのだったはずなの。

『魔力保有量』と『魔力供給量』は、個人単位での数値だけど、『魔力の使用効率』は、使用するときにどのように使うかで変化するの。

今やっているように、複数人で同じ魔法を詠唱し、発動するときの使用効率は、単体で発動するときよりも人数の1.5倍ほどよくなるの。

だけど、問題点もあるの。同じ魔法を1発だけしか発動できないことや、詠唱のタイミングがずれてしまうと発動しなかったり、慣れないとなかなか難しい技術なの。


「お嬢!発動しますから見ててくだせぇ!!」

「うん!わかったわ!」

発動させるために魔力を一気に上げたのが、4人の周囲に展開された魔法陣の輝きによってわかるの。

「「「「『エクスプロージョン』!!」」」」

4人が、火属性中級魔法の名前を叫ぶと、50メートルほど離れた木の根っこの辺りで爆発を起こしてそのまま倒した!

「すごいじゃない!!」

正直、想像以上に使いこなしている。4人での中級魔法の詠唱と特定の位置への座標指定、それから、魔力の使用効率をきちんと1に近づけようとしている。

ちなみに、魔力の使用効率は、1に近づくほど魔力を効率よく使用していることを指すの。1より少ないと不発の可能性が高くなって、1より多いと燃費の悪い発動の仕方になるの。


嬉しい話は、後衛組だけじゃなかったの!!

お昼を食べ終わってから1時間ほど、魔力による肉体強化をさらに応用した特訓をしていたの。

内容は、意外と簡単なのだけど、実践するのがなかなか難しいの。

魔力による肉体強化は、魔力を体中に送り込んでスタミナの補強に使うだけなのに対して、その応用は、必要な部分を限定して行う必要があるの。

「これを『魔力による分部強化』というの。」

分部強化のメリットは、魔力領の消費を抑えることと、少量の魔力でも全身を強化しているときと同じ効果を発揮できることにあるの。もちろん、送る部位によっては、効果が期待できない場合もあるけどね。

例えば、速く走るのに全身を強化するのと、脚を強化するのと、腕を強化するのでは、走れるスピードと魔力の消費量が、変わってくるの。

腕を強化しても速く走れないでしょ。けど、全身を強化すると魔力の消費が大きくなっちゃうの。

だから、目的に合わせて限られたの魔力をいかに効率よく使うかが、戦闘時間の延長につながるの。

あたしも苦労して習得した技術だけど、あるのとないのとでは、雲泥の差が出てくるの。


「とりあえず、脚にだけ集中して!ダッシュ10本いくわよ!!」

「「「「ウッス!!」」」」

どこか体の一部だけに魔力を送ることが出来れば、まずは、上出来。問題は、その部位だけでなく、全身のどの分部でも魔力が送れるようになることが今の目標なの。目標は、高く設定しないとね!

……現状では、誰も分部強化が出来ていないけれど。

今日も無理かなっと思っていたんだけど。

「ありぃ?…………お嬢?」

不思議そうな顔をしながら、あたしに声をかけてきた。

「どうしたの?」

「とりあえず、見てくれ。」

もしかして。できたのかしら?

そんな期待をしながら、分部強化が出来ているかを『サーチ』を使って見てみる。

「行きますぜぇ!」

魔力を体中に送り込んでいる。勘違いだったのかなと思ったら、少しずつだけど、上半身の魔力が、下半身へと移動しているのが分かったの!

「うん!いいよ!その感じで!!ダッシュしてみて!」

言われた通りにダッシュをしたおじさん。

「お嬢!今までよりも上半身が軽いです!!」

魔力による全身の肉体強化は、強化しただけ、体に負荷がかかってしまう。それに対して、分部強化は、櫃よな分部だけに負荷がかかるので、全身強化時よりも負担が、少ないの。

それを体で感じているのね。

「今の感じを忘れないでね!」

「はい!お嬢!!」

周りで休んでいたおじさん達も自分のことのように嬉しそうに、はしゃいでいたの。


今日は、1人だけだったけど、分部強化が成功したの!

この調子で、全員ができるようになれば、街を攻め落とすことも夢でなくなるの!

「ママを楽にさせるために、絶対に攻め落とすんだから!!」

そんな決意をして、今日は、終わったの。


――魔王の戦死まで12時間


全員が、分部強化を覚えることが出来たのは、皆が必死に特訓をしてくれたおかげだと思うの。だから、

「明日の朝!『聖都フィノ・ベルン侵略計画』を開始するわよ!!」

明日の早朝から、街を囲うように建てられた壁をデュランダルで切り裂いて、そこを突破する。

城までを一気に通過して、城を制圧するという、あたしらしく、そして、天才的な閃きにより、編み出された完璧な作戦よ!

「明日は、かなり早くから行動するから、今日1日は、特訓をしないで、体力の回復に全力を注ぐわよ!」

オー!と気合十分な掛け声を聞いてあたしは、お昼寝タイムへと移行したのだった。


――魔王の戦死まで30分


「盗賊団に告つぐ!貴様らは、完全に包囲されている!武器を捨て!おとなしく投稿とうこうしなさい!!」

う~ん。もう、なによ……。

入口の方から大声で何かを叫ばれているのは、わかるが、誰が叫んでいるのだろうか?

「魔王様!何を言っているんですか!?」

「一度でいいから、言ってみたかったんだよ!!」

どうやら単独じゃないようだけど、あぁもう!おかげで目がさめちゃったじゃないの!!

「っと犯人は、供述きょうじゅつしており、盗賊団との話し合いは、出来なくなった様です。以上現場からでした。」

イライラしたあたしは、一番奥の部屋から勢いよく飛び出して、

「うるっさぁーーーい!!!」

思いっきり怒鳴ってやったの!!ホント『近所迷惑』って言葉を知らないのかしら!!


――魔王の戦死後。クサリ・スクスの後頭部に矢が放たれた後に話が戻る。


「やったぞ!」

「集団でかかれば、俺らでもお嬢の力にもなれるぞ!!」

歓喜の声が上がっている。あたしでも魔王を倒せた……。

そのことしか、頭になかったのがいけなかったと思うの。

「おいっ!あいつ、動いてないか!?」

「あん?後頭部をぶち抜かれて、死なねぇ生き物なんかいるかよ。」

魔王のとこのメイドが、後頭部を矢で貫かれて死んだと思っていたの。

けど、実際は、そうじゃなかったの。

「おめぇら、なにを…………。」

盗賊団のリーダーだったおじさんが、恐怖に支配されて、動けなくなったところをメイドが、目にもとまらぬ速さで、拳を腹に入れた。

あたしでも、目で追えなかったから、他の人では、到底無理。

「さ、『サーチ』!」

何なの!?あのメイドは!?

知るためにも、『サーチ』を発動する。けど、わかったのは、驚愕の数値だけだった。

「…………魔力量……1万越え…………。」

どうあがいても勝てないことが、わかってしまったの。

「………………コロス。」

「お、お嬢を守れ!!」

皆が私を守ろうとして、メイドと私の間に入ろうとするものの、

「……おい!誰か!助けてくれ!……俺の体が動かねぇんだ!!」

畜生(ちくしょう)!!俺もだ!」

「こんな時に!誰でもいい!お嬢を……お嬢を守れ!!!」

メイドから発する魔力が、あたしを含めて、体を固定している。

「い、『威圧(いあつ)』……。」

この人数を身動き1つとれないようにするなんて!

初めから使えたわけじゃなさそうだけど、魔王の死が、可能にさせたのかしら。

「お嬢!!逃げてくだせぇ!!!」

「お嬢!!」

そこらじゅうで、私に逃げるように叫んでいるけど、あたしすらも動くことが出来ない。

「くっそぉぉおおおお!!!」

「お願いだ!!お嬢の命だけは、取らないでくれ!!!」


「………………。」

皆の意思も無駄にメイドは、無言であたしの目の前へと歩み寄ってくる。

あと少しで、あたしは、死ぬの?


「嫌よ!まだ、まだママを楽にさせていないんだもん!!デュランダル!!」

唯一の希望といえるのは、デュランダルが、まだ顕現されたままであること。


「お願いだから、何とかしてよ!」

まだ死ねない。まだ、死ねないの!


あたしの希望もむなしく、メイドは、目の前へと着いてしまった。

「…………シネ。」

メイドが、構えたと途端に魔力量が跳ね上がる。調べた時よりもまだ上がるっていうの!?


もう、死ぬのね。あたしは、目をつぶってママへ聞こえないけど、

「ごめんなさい。」

とつぶやいた。あたしの最後の言葉になるかな?

メイドの拳が、あたしの腹部へと勢いよく突き出された。


「こらこら、幼い子供を本気で殺そうなんて、物騒なことをしていますね。」

物凄い音が、お腹の辺りでしたのになんともないのは、あたしが殺したはずの魔王が、メイドの攻撃を片手で防いでいたからだと、恐る恐る目を開けて確認した。

「う……そ。」

腹部を一突きされて、血の池ができるほど値がなくなっていたのにもかかわらず、魔力量1万を超える数値をたたき出したメイドの攻撃を片手で止めるなんて。

「どう……して?」

あたしは、涙をボロボロ流していたと思う。もう自分でも何がなんだかわからなかった。

唯一分かったのは、魔王様が、あたしを助けてくれたこと。

「聖女からの依頼では、この子を傷つけずに街へと帰る事だったと思いますが?」

「…………ジャマダ……ドケ……」

相変わらず、メイドは、片言で先ほどまでの冷静さを失っているようだった。

「彼が死んだの時の怒りで、『魔王七つ道具』のリミッターが外れているようですね。仕方ありません。」

そう言うと、魔王様は、メイドの腹部に掌を当てて、

「『光封(こうふう)』」

短い技?の名前を言うと、メイドが、ガクッと崩れ落ちた。

「ふう。これで、こちらは、いいでしょう。さて、」

一仕事終えたような溜息をつくと、あたしの方に向かって歩いてきた。

今は、あたしの方も動くことが出来るけど、なぜだか、動いちゃいけない気がしたの。

「すみませんが、デュランダルとお話しさせてもらいますね。」

うん?お話?

「デュランダルさん。貴方の子供を守ろうとするために力を貸すことは、立派ですが…………」

魔王様が、突然、あたしの持っているデュランダルに話しかけ始めちゃった。

はたから見ていると、グチグチと愚痴をこぼしているようにしか見えないけど?

「またあとで、お話しするとしましょうか。それでは、『リバード』。」

また、聞いたことの無い今度は、魔法?の名前を呟いた魔王様。

すると、デュランダルが、強制解除されてしまった!

「うそ!」

「さてさて、本命の貴方にも『お説教』をしなければなりませんね。」

……さっきのデュランダルに言っていたようなことをあたしも聞くことになるのかな?

「お嬢!!」

「てめぇ!!お嬢に何しやがる!!」

どうやら、動けるようになったのは、あたしだけでなく、他の皆も同じようだった。

「まあまあ。落ち着いてください。私は、誰にも危害を加えませんから。」

皆が、今度こそはとあたしの前に立っている。

「皆!どいて!!」

あたしは、退くように言った。

「けど!お嬢!!」

「い・い・の!!」

魔王様の前まで来るとあたしは、頭を下げてあやまった。

「ごめんなさい!」

「はい。よく言えました。」

顔を上げると笑顔で魔王様が、許してくれた。そして、あたしは、もうすぐ魔王様が眠ってしまうからメイドともどもよろしくって頼まれちゃった。

「あんた達!奥の部屋へと連れていくわよ!!」

「ですが、お嬢。」

「ですがも何もないわよ!連れて行くったら連れていくの!!」

あたしは、皆に有無を言わせなずに、メイド担ぎ上げて、魔王様を奥の部屋へと案内した。


「へぇー。洞穴の中は、このようになっているのですか。」

「はい。一番奥の部屋だけ扉があります。」

その部屋で休んでもらう予定だ。

「そういえば、聖都を攻めるらしいけど、どうしてなんだい?」

うっ……あまり聞かれたくないことを。

「それは、……怒らないでくれますか?」

恐る恐る聞くと魔王様は、やさしい笑みを浮かべて、怒らないことを約束してくれた。


「ママと遊ぶ約束をしていたんだけど、それが、お仕事で遊べなくなっちゃったの。だから、ママを少しでもお仕事から休ましてあげたかったの。」

泣きそうになりながらも魔王様は、黙って笑顔のまま、しっかりとあたしの話を聞いてくれたの。

「……ママは、あたしよりも……お仕事の方が…………大事なのかな?」

「そんなことは、ありませんよ。」

魔王様が、ここにきてあたしの話に割り込んできた。

「少なくとも、あなたの説得を任された時は、あなたに傷一つ負わせたら許さないと本気で怒っていましたらからね。」

魔王様が、ママからの依頼を受けた時のことを少しだけだけど、話してくれた。

「そっか……。ママは、あたしのことを……。」

「それじゃ、聖都侵略を取りやめてくれるかな?」

あたしは、魔王様の方をしっかりと向いて大きくうなずいた。

「それじゃ、聖女の代わりに私が遊んであげよう。あまり時間がないが、何して遊ぶかい?」

「え?……それじゃあ、鬼ごっこ!!」

「そうか、鬼ごっこか。それなら、大勢のほうが楽しめるだろう。メイドは、ここに休ませておいて、みんなで遊ぼうじゃないか。」

あたしは、魔王様の提案通りに皆を呼びに行って、そして、

「今度は、魔王様が鬼ですよ!」

「あぁ!しまった。ジューウ、キューウ、……。」

魔王様が、眠るその時間ぎりぎりまで、皆で遊んだの!

カルラ視点で、長々とすいませんでした。

魔王が、死んだと思ったら、生きていたり、

クサリさんが、死んだと思ったら、生きていたり、滅茶苦茶強かったりといろいろありましたが、次回は、魔王視点でのお話になります。

いつ更新できるかわかりませんが、楽しみに待っていてください。

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