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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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再び、戦後処理に挑戦!

俺 棚部(たなべ) (りょう)は、目を閉じながらも思っていたことを口にした。

「……何度目だよ……。」

しかも、今回のベッドは、今まで味わったことがないほどのフカフカ具合だ。

まさに高級ベッドの名が相応しい逸品(いっぴん)だといえるだろう。

目を開けると、やっぱり知らない天井だった。というより、ぐるりと周囲を見渡してみるけれど、かなり広い部屋のようだ。天井には、シャンデリアのようなものがつりさげられている。床は、青色を基調とした柔らかそうな絨毯が、敷き詰められている。白いユリの花のような絵柄が、描いてある絨毯だ。

壁側には、クローゼットだろうか。横にスライドしそうな扉が、複数ある。

どこかの城の客間をイメージさせる。……城の中に入ったこともないけど。

とりあえず、なぜ、こんなベッドに寝かされているかを思い出してみるか。


確か、クサリさんが、処刑されそうなのを助け出そうとしたんだよな。

そしたら処刑台のクサリさんは、偽物で本物のクサリさんを助けようとして、敵の魔法で気絶したんだっけ?

何となく思い出したけど、ここってどこ?

「ようやく目が覚めたんだね。」

気絶する前までの記憶を思い出していると、開けっ放しの扉の方から声をかけられた。

確か、クサリさんの隣にいた人かな?

「……ここは?」

「あたしの城の客用の部屋よ。魔王君。」

俺の事を知ってるのか。

「クサリさんは?」

「あのメイドは、ほんとに優秀ね。今、あたしのとこのメイド達を教育しているところよ。」

どうやら、無事のようだ。

それじゃ、本題に入りますか。

「あんたが、『聖女』でいいのか?」

白地に青を基調とした色のドレスを着た女性は、イタズラを楽しんでいるのか、ニコッとした笑顔で自己紹介をしてくれた。

「えぇ、そうよ。あたしが、姫騎士領のトップ『聖女』のアリアナ・ブレアス・ピトア。アリアナでも聖女でも構わないわ。」

「そうか、ならいくつか聞きたいんだけど……。」

「大丈夫よ。同盟の話と公開処刑ごっこの話でしょ?」

「……あぁ、そうだよ。」

なんで、同盟の話まで知ってるんだよ。

もしかして、クサリさんが、単独で交渉したのかな?

「魔王領と姫騎士領の同盟は、頼みごとを聞いてくれたら手続きに入るつもりよ。頼みごとについては、あんたのとこのメイドにも伝えなきゃいけないから、後で伝えるわ。」

頼みごとって嫌な予感がするのは、俺の気のせいでしょうか?

「それと、公開処刑ごっこの方だけど、あれは、あんたの実力が知りたかったからよ。」

「人を殺そうとして、『ごっこ』で済ませる奴の気がしれん。」

まったく、腹を刺されるし、爆破されるし、津波に飲まれるしで、踏んだり蹴ったりだ。

……爆破は、俺がしたんだけどね。ちなみに、自爆とも言う。

「でも、生きてるからいいじゃない。問題ないわよ。」

「………………津波に飲まれたところまで覚えているが、そのあとは、何かあった?」

「そうね……。強いて言うなれば、…………めちゃくちゃ強くなったくらいかしら。」

やっぱりと言うべきか何と言うべきか……。

「どんな風に?」

「水属性系統の魔法や技を使ってたかしら?といっても水属性上級魔法の『コキュートス』を1発だけ発動したくらいだったかな。」

今度は、水属性ですか……。とりあえず、クサリさんにもどんな風だったかを聞いておくか。

「まぁいいや。それよりも、そっちの頼みごとを聞きたいから、クサリさんを呼んでくれないか?」

「えぇ」っと短い返事を聞くと、呼び鈴を胸ポケットから取り出した。

……あんまり気にしていなかったけど、……胸でかいな…………。

「お呼びでしょうか。」

小柄なメイドが、突如として現れた。……どこから来たんだ?

「魔王のとこのメイドを呼んできて。」

「かしこまりました。」

黒地に白色のエプロンをした、いかにもメイドです!な聖女のメイドは、忍者のように足音も立てずに消えるように去って行った。

…………クサリさんもすごいけど、ここのメイドの方が、すごくないか?

「消えるように去っていく方法をあんたのとこのメイドから教わったそうよ。」

まじか!?クサリさんに教われば、1日足らずでそこまで上達するの!!

「1日であそこまで行くならすごい……。」

「……1日であんなのになるわけないじゃない…………。」

「へぇ?」

「あんたは、1週間もこの客間のベッドで寝ていたのよ。」

………………………………。

「嘘でしょ!?」

「ホントよ。もう公開処刑から1週間も経っているわよ。」

まじでか!?

……ってなると、勇者領の力試しの期限が、……あと2週間とちょっとってことか…………。

「無理じゃねぇか!!」

「……そんなに大きな声で叫ばなくても、問題ないわよ。ちゃんと聞こえているから。」

あと2週間でどうやって5つも領土を落とすんだよ!

終わった……。あの国王たちに笑われる結末が見え始めた……。


そんな絶望的な未来を予見していたら、扉から見知った顔が、現れて声をかけてきた。

「魔王様!」

「クサリさん!」

公開処刑ごっこのメインヒロインが、やっと帰ってきた。

「1週間も寝込むなんて、時間ロスもいいところです!」

……あって早々に怒られた。

「けれど、ご無事で何よりです。」

「津波に飲まれた時は、死んだと思ったけどね。……それよりも、今回も何かあった?」

「はい、魔王様。今回は、拳や脚などの部分的な部位のみでしたが、氷を身にまとっていました。」

はぁー。やっぱりな。

そうじゃないと俺は、ベッドの上で寝てるなんてありえないからな。

「その話は、後でするとして、聖女。」

俺が、呼ぶと「うん?」といった感じで首をかしげている。

「頼みごとの内容を話してもらおうか。」

「えぇ、いいわよ。まぁ、簡単に言うとこの領土が、侵略されそうなの。」

………………。

俺は、ポカーンとしてしまった。

クサリさんも唖然とした様子で聖女を見つめている。

「……どこに?」

「娘に。」

………………。

「自分の娘に領土侵略されるってどうゆうことだよ!?ってか、娘がいるのかよ!?」

「えぇ!今年で10歳になる天使ちゃんよ!!」

聖女のテンションが、急上昇し、少したじろいでしまった。

「……何が原因なのでしょうか?」

あきれながらもクサリさんが、聖女に尋ねる。

「さぁ?反抗期かしら?」

「反抗期で侵略されてたまるかよ……。」

少しだけ頭が痛くなってきた。

「……10歳の娘の侵略を止めることすらできないのか?」

「あたしと娘を戦わせる気!?そんなこと、天地がひっくり返ってもありえないわ!!むしろ、娘と一緒に戦う方を選ぶわよ!!!」

…………。

「いきなり、聖女が戦わなくていいだろうが。……近衛兵とか。」

「魔王様。それは、無理かと思われます。」

なぜかクサリさんから、返答が来た。

「なんで?」

「女狐の娘は、あの国王の近衛兵を100人ほど集めても片手で勝てるほどの強さでございますから。」

女狐って、……因縁でもあるんですか?

それよりも、クサリさんが、冗談を言うなんて珍しいな。けど、

「ハハハッ。…………クサリさん、もう少しマシな冗談を言ってほしいですね。」

そんなことあるわけないじゃないか。まだ10歳の女の子だよ。

そんなこと……。

俺の否定もむなしく、クサリさんは、首を横に振る。

「事実です。」

短く、鋭い、まるで鋭利な刃物を彷彿(ほうふつ)とさせる返答に俺は、頭を抱えるのであった。

「それで、頼み事というのは、その侵略を止めろということでしょうか?」

「えぇ、そうよ。ただし、娘に傷の一つでも負わせたら、……あたしがだまっていないからね。」

いや、無理でしょ。俺より遥かに強そうな女の子を無傷でって…………。

「クサリさん。」

「何でしょうか?魔王様。」

「も「ありません。」と…………。」

とうとう、単語すら言わせてもらえなくなったな。

「なにも、拘束して連れてこいなんて言ってないじゃない。むしろ、拘束なんかしたら、ただじゃおかないわよ……。」

睨みながら言ってくる聖女だけど、……無理だから。

「説得して、侵略そのものを無くせばいいのよ。」

「それなら、聖女が直接、会って言った方が、効果的じゃないのか?」

そんな俺の意見に聖女は、首を残念そうに横にふった。

「残念だけど、あたしがここを離れるわけにいかないのよ。領土内の政治だとかなんとかでね…………。」

相当忙しいんだな。俺は、クサリさんやメイド隊の皆が、不甲斐ない俺に代わり、政治をしてくれているから、問題ないけどな。

将来的に、俺も政治を勉強しないとな。

「……わかった。その頼み事を引き受けよう。」

「魔王様、よろしいのですか?」

「もちろん、タダでとは、いかねぇよ。こっちの頼みも聞いてもらわないと。」

「そっちの頼み事って、勇者領を落とすことかしら?」

っ!!何で知ってんだ!?

言った覚えがないんだけど。

驚いた俺に聖女は、種明かしをした。

「そこのメイドから、聞いたのよ。同盟もその事が、あるからでしょ?」

クサリさんが、言ったのか。なら納得だ。

「期間が、かなり短くなったけど、大丈夫なのか?」

2週間で5つ以上の領土を落とすなんて無茶苦茶なこと言っているのに。

「まぁ、大丈夫でしょ。あたしのとこの親衛隊でも出せば。」


俺たち魔王領の頼み事についての詳しい話し合いは、取りあえず、聖女の方を片付けてからとなった。

今更、反故(ほご)にされるなんてことは、考えたくもないが。まぁ、あの聖女の態度なら、問題ないだろう。

そして、俺とクサリさんは、聖女の娘であるカルラ・ブレアス・ピトアによる『聖都フィノ・ベルン』の侵略を阻止するべく、そこから、徒歩で3時間ほどの丘へと向かっていった。

……結構近いな。

次回は、3代目魔王が、召喚されてから最初の戦争までの2週間の間に起こったことを書こうと思っています。短編的なものです。

何かと忙しくなっているので、投稿が遅れるかもしれません。

ご了承ください。

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