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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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初めての城に挑戦!

前回の続きです。

追剥に襲われてからは、特に問題もなく移動してきた。


クサリさんの後を歩いていくと、煉瓦で舗装された大きな通りについた。露店からいい匂いが漂ってくる。

そういえば、朝食がまだだった。

「クサリさん。すこし、よっていっていいですか?」

「はい、かまいません。ここまで来れば、先程のようなことにはなりませんので。」


了承を得たところで、うまそうな匂いの元へ。


「へいらっしゃい!」

「これください。」

俺は、肉汁が滴れているソーセージのようなものを頼んだ。

「はいよ!一つ100(ゴールド)だ。」

しまった!金なんかない!!

「魔王様。こちらをお使いください。」

クサリさんが、財布ごと渡してきた。けど、どれを渡せば、100Gになるかが分からない。とりあえず、金貨を1枚渡してみるか。ゴールドだし……。

「もしかして、そこにいるのは、メイド長さんかい?」

店主が、クサリさんに対して声をかけてくる。

ひょっとして、クサリさんって有名?

「はい、そうでございます。部下は、役立っておいででしょうか?」

「役立ってるもなにも大助かりさ!!お陰で売り上げがうなぎ登り!あの働きに対して少ないんじゃないか心配なくらいさ。」

クサリさんと店主の話に全くついていけない。そもそも、部下って誰?クサリさんの?

「役立っておられるのならば幸いです。」


話についていけず、呆けていると、店主と目が合った。

「ところで、隣にいるのは、メイド長の旦那さんかい?」

ブッ!!彼女すらいないのに旦那扱いされてしまった!!!

正直、クサリさんは、かなり美人だからうれしいけれど、

「いいえ、違います。新しい魔王様でございます。」

…………デスヨネ……。

あっさりと否定されて閉まったことに少しショックを受けた。…………彼女が欲しい……。

「へぇ~。こんな弱そうなので大丈夫かね?あと2週間前後ってところだろ?」

なに?『2週間前後』って?なんか嫌な予感がする……。

「…………。大丈夫だと思います。…………きっと。」

(ねぇ。クサリさん。2週間後に何かあるの?)

店主に聞こえないようにぼそぼそ質問する。

(その件も、後ほど説明いたします。)

俺に対して公開される情報が、少なすぎる。

まぁ、情報以前に今朝こっちの世界に来たばかりだから、しょうがないけど……。


グゥ~~~~。……お腹が鳴ってしまった。

「まぁ、頑張ってくれ。それは、サービスしとくから。」

「ありがとう!」

いくら払えばいいのかわからないため、恥をかかずに済んだ。……正直、今のお腹の音で十分恥ずかしいけど…………。


――――――――――


「こちらが、我々の住居『魔王城』でございます。」

町の大通りを抜けて、草原をはさんだところにそれなりの広さを持つ建物が表れた。ただ、

「ウワァー。スゲー。…………ボロボロ。」

あまりのボロボロさについ本音が出てしまった……。

「申し訳ございません。先日、いろいろとありまして、立て直しの目途(めど)が立っておりません。」

一応、住む分には大丈夫そうだけど、2階建て・6部屋のボロアパートを連想させる外装だな。

ところどころ、外壁の塗装が剥がれている。

内装は、外装からは想像が付かない程きれいだった。ピッカピカ。大理石の床が、光沢を帯びてまぶしいくらいだ。

「クサリさん以外にも、ここで生活している人がいるのですか?」

確か、魔王直属メイド部隊だっけ?『部隊』っていうくらいだから、30人くらい住んでるのかな?

けど、町でのクサリさんの有名人ぶりを見ると、もっといそうな気がするけど……。

「はい、私以外にあと15人のメイドがおります。それ以外の方は、おられません。」

…………。つまり、クサリさんを含めて16人のメイドさんと一つ屋根の下で過ごすことに……。

おっと!!イケナイ想像をしてしまった!!!

「魔王様、鼻の下が伸びていますよ……。」

……顔に出てましたか。


書斎のような部屋に案内された。この部屋もピカピカだ。

正面には、大きく立派な木製の机と椅子が置かれていた。向かいの窓から日の光がさして、机が光ってより高級感が感じられる。壁側には、本棚が置いてあるものの本自体があまりない。

俺は、椅子に腰を掛けた。

「さて、魔王様。まずは、緊急の用件として2週間後についてのお話をさせていただきます。」

「はい。」

……ゴクリ。あまりにも真剣な様子で話そうとするクサリさんの顔を見て、緊張してしまう。

「実は、魔王様を召喚する数日前に隣の『勇者領』の一領地から宣戦布告をされました。」

………………ハァ?ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセン。


「魔王様?」

はっ!とんでもない話に意識が飛びかけた。

「クサリさん。」

「はい、何でしょうか?」

「元の世界に帰る方法を教えていただけませんでしょうか。」

「残念ながら、魔王様。帰る方法は、ございません。」

…………デスヨネ。異世界召喚ものの話では、よくありそうですもんね……。

「…………。2週間後に、その『ユウシャリョウ』?から攻撃を受けるんですよね?」

「はい、正確には、『勇者領』の一領地からですが。」

「戦力差は、どのくらいあるのですか?」

「…………………………。」


アレッー、オカシイナ。今までテキパキ応えていたクサリさんが、この質問に対してものすごく困った顔をしたまま固まってしまったぞ…………。


「おーい、クサリさーん。」

「はぁ!失礼しました。密偵からの報告ですが、相手の戦力は、およそ……5千人……だそうです。」

「…………。」

『ゴセンニン』って何ですか?

俺の聞き間違いだったらいいのになぁ~。……まだだ、まだ希望を捨てるには、早すぎる。こっちの戦力が、5千人でなくてもそれに近い数字かもしれないし……。


「こっちの戦力は?」

「魔王様と私とメイド隊で……17人です……。」

美しい人生よ かぎりない喜びよ……。頭の中で色黒の有名人の歌が再生され始めた……。

ってもサビしか知らないけど……。もっというとこのフレーズだけ…………。

「……もしかして、メイド隊は、とんでもなく強いとか?一人一人が1000人の兵士相手でも勝てちゃうくらい?」

「…………。」


もうやめて!俺のHP(精神的に)は、もうゼロよ!!

……ホントに…………。

「ですが、魔王様。まだ、魔王様の力が、残されています!」

「いや、期待してるところ悪いけど……。俺、ただの人間だぜ……。」

「いえ、魔王様。まだ希望がございます。」


キボウ?何それ、オイシイの……。

何を期待しているのかなぁ?


「異世界から召喚された方には、その方特有の能力が、開花されるようです。」

「『されるようです』って、なんで誰かから聞いた感じなの?」

「……。実は、召喚魔法を行使したのが、今回が初めてでして、……。」

「……。要は、あるかどうかも、定かでないと……。」

「…………。ですから、これから魔王様のお体を調べさせていただきます。場合によっては、この危機的状況を打破する可能性が大いに残されております。」

「調べるって、どうやってですか?」

「魔法を用いて調べます。その名も『サーチ』です。」


ちょっとだけ、テンションが上がった。……さっきの話を聞かなければ、もっとテンションが上がって、恥ずかしい思いをしていたと思う。

「魔王様、魔法ですよ、魔法。」


ちょっとでも俺のテンションを上げようとクサリさんが、懸命に魔法をアピールしてくる。

「……。分かりましたって。その『サーチ』って魔法は、どんなのですか?」

「はい、『サーチ』は、相手の魔力値、属性、体力などの情報を数値化して知ることのできる魔法でございます。」

へぇー。健康診断のようなものかな?あんまり悪い数値がでないといいなぁ。

「それでは、さっそく行いたいと思います。魔王様、背中をお借りしたいのですがよろしいでしょうか?」

クサリさんに背中を見せると、手を置いてきた。ちょっとだけ、ドキドキする。

「では、『サーチ』」


背中の方からジワジワ温かくなってきた。

「終わりました、魔王様。」

「うん。で、どうなの?」

クサリさんが、怪訝そうに首をかしげている。

なんだろ、悪い病気でもあるのだろうか?


「魔王様。一つお聞きしますが、魔王様は、『人間』ですよね?」

「……へぇ?そうだけど……。」

もうやめてよ……。その確認は、ダメでしょ……。俺、人間ですらなくなるの?

「もう一度、お背中をお借りしてもよろしいでしょうか?」

「…………はい……。」

さっきと同じように、手を置いてきた。同じようにドキドキするけど、今度のドキドキは、心臓に悪すぎる……。

「終わりました、魔王様。」

「……。で、どうなの?」

「魔王様、少しお話しがございます。」


真面目な顔して、そんなこと言わないでほしい……。

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