初めてのゲリラに挑戦!
お久しぶりです。
まだ、完結もしていないのに、新連載をスタートしました。
「ドラグリア」の方も感想を聞けると嬉しいです。
クサリさんの公開処刑当日。俺 棚部 亮は、観客席で周囲を覆われている闘技場に気合を入れてやってきた。
公開処刑を見学する人は、まず受付で武器を所持していないか、簡単なボディチェックを受ける。俺は、素手で戦うので武器の類は、もっていない。
チェックを受け終えた俺は、案内に従って観客席へとやってきた。
なるべく前の方へと移動しておく。少しでも早く、クサリさんの処刑を妨害できるようにするためと俺自身が遠くから眺めていられるほど余裕がなかったためだ。
一番前まで来たけど、中央までそれなりに距離があるな……。
だいたいだが、500メートルくらいだろうか。中央にギロチンのようなものが設置されていた。
周囲の人たちが、俺の気持ちも知らずにがやがやと騒いでいる。
――魔王の側近が、ついに殺せるぞ!
――これで、魔王が誕生しなくなる!!
……正直、聞くに堪えられない。
だが、ここで騒ぎを起こせば、助けられるものも助けられなくなる。
心苦しいが、ここは、我慢だ……。
「皆様!お待たせしました!!」
突如、アナウンスが入りが静かになる。俺も心の準備をし、アナウンスを聞く。
「これより、魔王の側近の公開処刑を執り行いたいと思います。」
アナウンスとともにクサリさんと処刑執行人と思われる人物2人が、中央の処刑台に出てくる。
行くなら今だ!
俺は、目の前の自分の腰より少し高い塀を越えて、中央の処刑台に向かって走り出した。
「まったぁあああああああ!!」
俺の叫び声に反応した処刑執行人の2人は、こっちを向きいつでも剣を抜けるように臨戦態勢をとる。
「止まれ!!」
うち1人が、俺に向かって叫ぶが、そんなの気にしない。むしろ、
「『フレア』!!!」
思いっきり攻撃をしてやった。
「うわぁ!!」「貴様!覚悟しろ!!」
味方がやられたのを確認してから、剣を抜き俺に向けてくる。
「お前らなんかに構ってられるか!!『フレア』!」
「ぬわぁ!!」
処刑執行人2人を簡単にやっつけると、クサリさんの元へと近づく。
「大丈夫ですか!?クサリさん!!」
「…………。」
「今助けますからね!!」
俺は、急いでたせいか、フード覆われた顔を確認もせずにロープを解く。
グサッ。
「……クサリさん…………何を……?」
突如、腹を果物ナイフのような短い刃物で刺される。
「……残念ながら私は、クサリではない。」
「お前は、……誰だよ…………。ぐっ!」
ナイフを引き抜かれて、刺された部分から血が勢いよく流れ出す。
「貴様になのる名などない!死ぬがいい、魔王!!」
……いつから、俺が魔王だとばれていたんだ?
「クサリさんは、……どこだよ!」
痛みで意識が飛びそうになるが、それでも助け出そうと気合を入れなおす。
「メイドの土産だ。あそこにいる。」
剣先で刺す方を向くと、クサリさんの姿を視界にとらえる。
良かった、無事みたいだ。
「どうせ貴様は、ここで死ぬのだ。助けられない自分の弱さを呪うがいい。」
俺を殺そうと剣を振り上げる。
「それは、……どうかな!『フレア』!!」
「なに!!」
炎が俺の体を覆い隠すことにより、剣が振り下ろされることはなかった。
「……刺されたところも、回復もしとかないとな。」
炎に包まれながらも、ポケットから塗り薬を取り出し、刺された部分に塗る。
止血と痛み止めが配合されている宿屋のおばちゃん特性の傷薬だ。
修行をすると聞いたおばちゃんが、用意しておいてくれたものである。
「さて、反撃と行きますか!!」
右手で自分を包んでいる炎を振り払う。その動作とともに炎が消える。
「『炎の鎧』!」
……決まった。
俺の体に火がともされる。傷薬も聞いてきたのか、傷もあまり痛みを感じなくなる。
「小賢しい真似を!」
さて、クサリさんを助けて、取りあえず町を出ますか!
「クサリさん!今助けます!!」
「させません!!」
クサリさんに成りすましていた奴が、剣で切りかかろうとしてきたが、
「遅い!!」
即座に背後に回り込み、背中から一撃を入れる。
「うおりゃ!!」
「ぐふっ!!」
敵を中央の処刑台から、闘技場の壁へと吹き飛ばしてやった。
ドン!とぶつかった音を聞くと少々気の毒に思えてしまった。
そうこうしている間にわらわらと兵士が、処刑台へと攻めてきた。
「なるべく早く助けないと!」
クサリさんの居る方を確認して、ダッシュで行こうとするが、弓兵の矢が狙いを定めて飛んでくる。
「あぶねっ!!」
何とか避けるものの矢が次々と俺を襲ってくる。
これじゃ、進みたくても進めない。
今の状態なら、矢に当たっても炎の鎧を再度燃やす時に魔力が消費される程度で特に問題がない。だが、魔力を消費すればするほど俺の体力が、削られていく。別に魔力を体力で補われているわけじゃないが、魔力を体中に送るのに少しだけ、集中力が必要になる。その必要とされる集中力が半端なく疲れる。昨日までの修行でソコソコの集中力があれば、部分的な修復ができるけど、それでも疲れがたまる。
あまりにも疲労がたまると、十分な魔力を体中に送れなくなり、全身大火傷を負うことになるのであまりダメージを受けたくない。
「……仕方ない。とっておきを出しますか。」
俺は、弓矢を放つような格好をしながら、弓兵に狙いを定める。左腕を垂直に伸ばし、右腕を上げ、弓矢を引くイメージとともに魔法名をとなえる。
「『フレアアロー』!」
炎が弓と矢を形作り、右手を話すと炎の矢が、飛んでいく。
放ったのと同時に狙いを定めた場所が、炎のドームで包まれる。ドームの大きさは、直径3メートルくらいだろうか?
かなりの弓兵を巻き沿いにしながらドームは、消えていった。
以前よりもかなり威力が上がっている。
これも、『炎の鎧』の効果のおかげだ。
この状態で放つ火属性の魔法や技は、かなりの威力で放たれる。
……修行のときに森を火の海にしそうになったのを少しだけ思い出してしまった。
「よし!いくぞ!!」
「させん!!」
俺は、体を覆い隠すほどの大きな四角い盾を担いだ兵士に、正面からタックルをくらう。
「ぐふっ!!」
どっから出てきたんだ!?
「今だ!全員で囲め!!」
正面の兵士の合図で、周囲に同じような兵士が出現する。
あっけにとられていると、盾でガッチガチに固められてしまった。
「くそっ!どけよコラ!!」
「退く分けねぇだろ!」「ここでお前には死んでもらうんだからよ!!」
くそ!こんなところで立ち止まってる場合じゃねぇのに!!
仕方ない。あまりやりたくなかぅったけど、
「はぁぁぁぁぁぁああああ!」
俺は、体中に大量の魔力を注ぎ込む。
魔力の量におおじて、体にまとっていた炎の火力が、増していく。
そして、これ以上はもう無理というところまで、魔力を高めてから魔法名を叫ぶ。
「『エクスプロージョン』!!!」
魔法名とともに俺の体が、発光する。
光が最大限になった時に大爆発が、俺を中心に起きた。
「うわぁ!」「きゃ!!」
大爆発が起きたことにより、俺を囲んでいた兵士らが、周囲に吹き飛ぶ。
「……いってぇぇぇ!!」
俺を起点に爆発するので、爆破をもろに受ける。
大爆発なのにもかかわらず、致命傷とならないのは、炎の鎧のおかげだ。
「こんどこそ!助けに行きますよ!!」
2度も阻止されて、しかも痛みと疲労で集中力が、切れかかってきた。
なのにもかかわらず、津波が八方から、俺に向かって襲いかかってくる。
「げっ!」
まずい!今の状態で、水はかなりきつい!!
炎の鎧の欠点は、水を浴びると、呼吸が苦しくなり、集中力が切れやすくなることだ。
ただでさえ、疲労で集中できていないのに、ここで津波に飲まれたら!!
そんな考えもむなしく、逃げることさえできずに俺は、津波にさらわれる。
「ごぼぼ……あふぉえ…………」
やばい!うまく息ができない!!
クサリさん……ごめん…………。
俺は、クサリさんへの謝罪をしながら、意識を手放した……。




