表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
179/179

大陸同盟の危機に挑戦!

「前衛っ! いったん下がれっ!!」

「下がれって! どこに下がればいいんだよっ!?」

 混乱が混乱を呼んでいる。そんな激しく乱れた戦場は、聖都フィノ・ベルンの城門から十キロも離れていない地域まで迫っていた。

「ねぇ、イタコっち?」

「なに、葵っち?」

 混乱している兵士らを誘導しつつ、私は疑問を意気投合したメイドにぶつけてみる。

「いつになったら聖女様に会えるのよ? 亮の指示でコッチに来てるはずでしょ?」

 鎌を振り回すデスイーターなるメイドは、敵を屠りながら言う。

「世界美食巡りじゃないデス?」

「それはアンタのことでしょ……」

 私達は余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)で、混戦の中を待つことにした。




「くっ!?」

「ちょっとっ! 前に出すぎよ!?」

 矢を膝に受けた国王を援護するように、私は槍を突き出す。

 突き出された矛先は、神界の兵士をかすめるだけ。致命傷には程遠い一撃。

 けど、この槍には、傷を与えた相手の魔力を奪う力がある。かすったような一撃でも、敵は地面に倒れて動かなくなった。

「そう言うけどね……わざわざ兵士を犠牲にするにも、いかないだろう?」

 前方に視線を向ければ、いまだに交戦している兵士は数百といる。その兵士らの後ろには、二百か三百か……倍を越える敵兵の数。

 助けるのは困難とはいえ、見捨てるのは後味が悪い。

「だからって! 今あんたが倒れたら、後ろに逃がした兵士らも道連れになるのよ?」

 魔界で合流した時には、すでにボロボロ。剣を振れっていうのがあまりにも酷い命令に聞こえるほどだった。

 そんな体調でありながら、すでに十分以上も戦っている。

「……分かっているよ」

 本当に分かってるのかしら?

 私には焦っているようにしか見えない。

「……そりゃ、バケモノみたいな奴等が、敵味方にいれば焦るでしょうに。でもね」

 そんなのは、私が魔王討伐の旅に出たときから思っていたことだ。

 敵もバケモノ。私の仲間もバケモノ。バケモノがバケモノを退治する。そんな旅に放り込まれたのよ。

 その上、私も人間とは大きくかけ離れたバケモノになってしまった。

「バケモノ……か」

 鼻で笑うように呟く国王。

「なによ?」

「いや……なんでも、ないよっ!」

 少しは冷静になったのか、今度は放たれた矢を剣で叩き防ぐ。

「こんなところで、へばっているわけにも、いかないねっ!」

「だからって、あんまり跳ばすと、最後まで持たないわよっ!」

 周囲の敵を切り刻みながら、少しずつ兵士を後方へ逃がしていく。

 沢山の兵士を助けるには、スピードも必要だけど、後ろに抜けさせないように気を張る必要もある。

「後ろは任せるわよっ!」

 それだけを伝え、私は槍を握りしめ前に出る。

「……分かった」

 短い了承を受けたところで、両脚に魔力を流し込む。魔力による筋力強化。それにより、通常よりも速く、力強く地面を駆けることが出来る。

 そして、槍を体の側で力強く握り、固定する。

「『猪突猛進』!」

 娘の得意技を使い、直線上にいた兵士らを吹き飛ばす。

 両サイドは無傷だが、そいつらは後ろの国王が倒す。間違いなく倒すはず。

「なるべくまとまって! 後方に退きなさいっ!」

「あ、ありがとうございます! 聖女様!」

「ご武運を! 聖女様!」

 次々と口にしながら、傷付いた体を引きずってでも退避していく兵士達。

 今までは崇められるだけだったんだけど……

「たまの戦闘も、悪いもんじゃ無いわねっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ