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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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再び、太古の魔獣に挑戦!

「このっ!」

 飛び上がった魔獣に拳をぶつける。

 しかし、ゴワゴワした毛皮に衝撃を吸収された挙げ句、魔力を微量に吸いとられる。

 おかげで、『炎の鎧』も解けちまったし。

「『轟小砲(ごうこほう)』!!」

 両手を当てて魔力を叩き込む。

「ガルッ!?」

 体が宙に浮いたことに驚いたのか、短く吠える獣。

 ただ、これも大したダメージは無さそうだ。魔力の無駄遣いみたいなもんだな。

「右から来るぞっ!」

「分かってるっ!」

 俺の腰ほどの太さを持つ木すら、簡単に斬り倒す爪。それが、右前方から降り下ろされる。

「爪切りくらい、自分でしやがれっ! 『轟打(ごうだ)』!!」

 両腕の魔力を限界まで高め、左腕で爪を反らし、右腕で挟むようにして爪を殴る。

 ガリガリと音をたてる爪。小さなヒビは入ったみたいだが、折ることは出来なかったか。

「大丈夫か?」

「これぐらいなら問題ない」

 反らしたときに左腕を引っ掛かれたみたいだ。血がダラダラと流れていた。

「単純にあと4回も同じことをするのか……」

 4回で済むかどうかも怪しいが。


「大丈夫かっ!?」


 突然の掛け声。その声の方へと視線を向ける。

「クサリさんっ!? なんでっ!?」

「私の名はクサリではない。イブ・スクスだ」

「……っで、なんで来たんですか?」

 突然の自己紹介をされた俺は、再度訪ねる。

「どこぞのバカが、魔獣相手に苦戦してるようだからな。加勢に来ただけだ」

 この時代のクサリさんって、かなり口が悪いなぁ……。

「それよりも、あと数分は粘れよ」

「数分な。それ以上は無理だぞ?」

 事実、右腕一本で戦うことになるんだからな。

「ふんっ。自慢ではないが、私は冗談すらろくに言わないのだよ」

「……だろうなっ! 『剛打(ごうだ)』!!」

 飛び掛かってきた魔獣に一撃を入れて、追い返す。

 相変わらず、毛皮が邪魔してダメージは無さそうだ。

「あの分厚い毛皮がなんとかなればなぁ……あ」

「どうした?」

「いや……なんとかなるかも知れねぇっと思ってな」

 戦闘では1度も使ったことがなかったんだよなぁー。だから、完全に忘れていた。

「『風の羽衣(はごろも)』!」

「……呆れた青年だな。自分に属性付与するなど、バカのすることだ」

「まぁ、見てろって」

 俺は屈伸をするようにその場で膝を曲げて、前の方へと倒れていく。

 普通に歩くことが出来ないからな。うさぎ跳びをすれば、上に上に上がっていくだけだし。

 地面と平行に移動するには、今みたいに前に屈みで勢いをつけるしかない。

「向こうからこれば、かなり楽なんだがな……」

 とはいえ、1度でかなりの距離を移動できるようになった。日々の成長を感じるよなぁ~。

「おいっ! 上から来るぞっ!!」

「分かってるっ!」

 俺は高跳びをするみたいに背中を地面に向ける。

 空を見上げた形になったところで、正面には獣が爪を降り下ろそうとしていた。

 握り拳に魔力を溜め込み、空いている脇腹へと叩き込む。

 拳には無数の鎌鼬(かまいたち)が渦巻いており、剛毛な毛を刈り取っていく。


 ただ。こいつは、それだけに留まらなかった。


 柔らかい鶏肉みたいな感触を指で感じると、一気に魔力が破裂しようと膨らみ出す。

 俺は、魔力の勢いに逆らうどころか、背中を押すように一気に新技の名前と共に、魔力を解放させた。

「『風神・轟打』!!」


 四方に爆発するように、風の(やいば)が辺りへと飛び散る。魔獣の内臓も無事では済まない。

 俺は、『風の羽衣』によって無傷だ。

「オォォォォオオオ!!」

 肉片を散らかしながら、咆哮する魔獣。まるで、最後に力一杯煌(きら)めく蝋燭(ろうそく)のようだ。

 とにかく……

「なんとか倒せたな……」

「あぁ! おいっ!?」

 クサリさんに唖然とされながら、俺はその場で気を失った。

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