初めての国外旅行に挑戦!
国王からの依頼を達成するために姫騎士領に行くことになった俺 棚部 亮は、昼前に新領土『ペルン』を出た。
俺とクサリさんは、『聖都フィノ・ベルン』で『聖女』と直接同盟の交渉をするために『姫騎士領』の一領土『カルサス』へと向う。その町で『聖都フィノ・ベルン』までの馬車が出ているらしい。
「クサリさん。馬車なんか使って大丈夫なんですか?」
「と、言いますと?」
「……お金とか。」
『魔王領』の財政は、あまり芳しくない。税金だとかを取っていないからだ。これにはちょっとだけ複雑な理由がるのだが、それは別の機会に……。
「問題ありません。確かに現在の魔王領は、財政難ですが、そこの馬車は、良心設計なので。」
はぁー。そうなんですか。
そもそも、「1Gっ払え」って言われても、どの硬貨を渡せばいいのかいまだに、わからない。
「それにしても、大丈夫だろうか?うまく交渉できるといいのだけど……。」
「問題ないでしょう。魔王様は、いざとなれば出来るお方ですから。」
他愛もない話をしながら歩いていると、昼を少し過ぎたあたりで町に着いた。そこそこの活気にあふれている。ぱっと見た感じは、西部劇に出てきそうな建物と舗装されていない地面だ。
初めての『魔王領』以外の領土についた感想は、
「…………スゲー人ごみだな……。」
……人ごみに圧倒されたものだった。
馬車の交差点と言われてるだけはある……。そこらじゅうに馬みたいなのがいっぱいいる。
さらに、馬の10倍もの人が行きかっている。それでも通れるくらいのスペースがあるので道は、かなり広めに作ってあるのだろう。
「はい、魔王様。ですが、聖都となれば、もっと人が増えることでしょう。」
「マジで!これ以上に多いの!!」
さすが、本領でもあり、ユーマキラ大陸唯一の聖都だ!
魔王領の本領も…………あれっ?『ペルン』と大差ないような気が……。
まぁ、人が多ければ必ずしもいいことがあるわけじゃないだろうし!気にしない、気にしない。
「すみません、魔王様。次の聖都行きの馬車が、もうそろそろ出ますので観光は、帰りにしましょう。」
「了解です!」
ちなみに、これを逃すと、夕方まで出ないらしい。日本の都会と比べると、交通の不便さは、否めない。
馬車には、俺とクサリさんと他に4人ほど乗っていた。4人は、家族で聖都の観光だそうだ。まぁ、俺も観光気分であるけど。気が弱そうな父親と逆に気が強そうな母親、それと、子供が2人。上が女の子で下が男の子。ぱっと見た感じどこにでもいそうな家族だ。そんな家族と旅は道連れ……を習って会話をしていた。
「どこの領土出身なんだい?」
っう!魔王領と本当のことを応えるのは、まずい気がした。仮にも魔王が、聖都に向かうわけだから。
そんな心配をしていると、クサリさんがそっけなく応えた。
「『ペルン』です。そちらは、どちらからでしょうか?」
「あぁ。私たちは、『アルベルク』だよ。聖都もいいけど、『アルベルク』もいいところだよ。自然が豊かで、海が近いから魚料理がおいしいんだ。」
…………魚料理がおいしいのか……。よだれが垂れそうになってしまった。
「そうか、お宅らは『ペルン』からか。勇者領からの聖都の観光とは、結構珍しいね。大概《たいがい》は、王都に行くもんだろ?」
どうとも言えないので、クサリさんに返答を丸投げする。
「そうですね。ですが、最近流行の書物で聖都の話が出てきたので、その観光をと思いまして。」
「あぁ!あれね!あれは、面白いね!!あれを読んでるなんて、同士ね!!もう、あれ同士ね!!」
……「あれ、あれ」言いすぎでしょ!ホントに読んでるの!?話を合わせてるだけなんじゃ……。
そんなふうに考えていると、子供らがこっちによって来た。
「うん?どうした?」
なるべくやさしく声をかける。
「…………。」
「…………。」
「……どうした?」
いきなり黙ったままジーとみられる……。なんだろ、前にもあったような気が……。
「えい!」
男の子がいきなり俺の頭を叩く。どうして叩かれたんだ?
「あぁあ……。逃げちゃった……。」
女の子が残念そうにつぶやくので俺は、何が逃げたのか聞いてみた。
「何が逃げちゃったんだ?」
「虫さん!」
「そうか。虫さんに逃げられちゃったのか。」
元気がいい男の子だなと思いながら話す。
「でっかい蛾みたいなの!」
「蛾かよ!!」
蝶々じゃないのかよ!しかも、区別がついていてなお「蛾」かよ!!
あまりの勢いで驚いてしまったようだ。2人の顔に「絶賛驚き中!」と張り紙でもしてあるかのような顔をしていた。
そんなこんなで一晩あけて、昼頃に『聖都フィノ・ベルン』に着いた。町をぐるりと囲む城壁は、5メートルはあるんじゃないかと思う。町の様子はわからないが、大きな建物がいくつかあり、中央らへんに城が立っている。クサリさんに聞くと、あの城の中に『聖女』がいるらしい。
領土内では、馬車を走らせることが出来ないので、門の近くで降りた。
「「ばいばい!」」
乗合で一緒に来た家族の人たちに別れを告げてから、俺たちは、ここからどうするかを簡単に話し合った。
「で、クサリさん。これからどうします?」
「まずは、宿屋を探しましょう。お昼頃なので昼食をとりながらの作戦会議といたします。」
とりあえず宿屋を探すためにも門をくぐろうとした。
その時、
ウゥゥゥゥゥゥーーーーーー!!
「なっ!なんだ!?」
俺が先に門をくぐり、クサリさんがくぐろうとしたときに、消防車のようなサイレンが鳴り響いた。
「そこの女!止まれ!!」
近くにいた門番2人が、クサリさんをとらえようとした。
クサリさんを助けよと振り返ったら、
!?なんでクサリさんが、俺をぶっ飛ばしたんだ!?
クサリさんに思いっきり飛ばされた。
「……なんで?」
困惑していると、門番達がクサリさんを連行していってしまう。
「ク…………。」
名前を叫ぼうとしたら、睨まれてしまった。
……ひょっとして、俺は助けられたんじゃないか?
俺たちの目的は、姫騎士領と同盟を結び、リストにある勇者領の領土を少しでも多く落とすこと。そして、そのためにも聖女とあって直接交渉しなければならない。今ここで2人ともが捕まるのは、最悪の事態と瞬時に判断したんだろう。
「……とりあえず、宿屋を確保しよう。」
事前に話し合っていた通りに宿屋を探すため、俺は、立ち上がった。
それにしても、俺は情けない。女の子1人すら助けられないばかりか、逆に助けてもらうなんて。汚名返上するためにもまずは、クサリさんを助ける方法を得なければ!
宿屋は、比較的すぐに見つかった。俺は、自分の分ともしかしたら、追加で1人来るかもしれないことを宿屋のおばちゃんに伝えた。部屋を案内されてから、荷物だけを置きすぐに街へと繰り出した。
とりあえず、ここまでです。
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