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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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魔王様の救出に挑戦します!

「こんなのに……どうやって勝てばいいのだ」

 床に座り込んでしまった私は、獣に殺られると覚悟を決めている最中だった。

 いや。精霊である私はまだいい。恐らく、魔王様のお体に戻ることになるだろうからな。


 だが、リリアーデは違う。


 死ねば2度と会うことが出来なくなる。

 魔王様を拉致した人物でもあるが……私の親友だ。死んでもらっては困る。


「グリモワール……力を貸してくれ…………」

 家宝の剣を杖代わりにして、なんとか立ち上がる。

 だが、脚に力が入らない。

「つまらねぇな……」

 獣は唸るような声で呟くと、私の肩を軽く押して、横を素通りしていく。

 たったそれだけなのに、私はその場で崩れ倒れてしまった。

「ま、待てっ!」

 獣は、叫ぶ私を無視して、上の階へと上がっていってしまった。

 この上は、魔王様が捕まっている書斎だ。

 如何(いか)にガスターが強かろうと、アレに勝てる筈がない。

「リリアーデ、動けるか?」

「無理よ……」

 だろうな。

 最上級魔法を放った直後だ。魔王様のように無限大の魔力を所持しているのであれば、すぐに動けるであろう。

 だが、リリアーデは普通の魔族だ。

「……くそっ!!」

 今の私では、震える右手で床を叩く事しか出来ないのかっ!?




「カルラっ! なにがあったのっ!?」

 魔王城へと着いたはいいものの、廃屋のようになっている城を見て、すぐそばに居た娘へと尋ねる。

「ママ!? クサリんがっ!! クサリんがっ!!!」

「大丈夫よ。まずは、落ち着きなさい」


「クサリんが、ボヨンボヨンのスベスベになって、何処かに行っちゃったの!?」


 この時初めて、我が娘の頭を心配になったわよ。


 娘が落ち着いたところで、なにがあったのかを詳しく聞いた。

 私がこっちに着く30分ほど前に、メイドが魔界へと向かったみたいね。

「それなら入れ違いになってもおかしくないのに……」

 魔王城の門は機能しないみたいだから、あとは、あたしみたいに陸路を進むくらいしかない。

 最短距離で移動をしているならば、私とすれ違うはず。

「でも、クサリん。自分で門を開いて魔界に向かったよ?」

「……あのメイド、そんなに体内魔力があったかしら?」

 以前会ったのは、半年以上前のことだ。

 成長しているって言われれば、それまでなんだけど……。

「とにかく、あたし達も魔界に向かうわよ」

 事の真相を確かめるべく、あたしはカルラの腕を引いて魔界へと引き返した。




「こいつ……誰だよ…………?」

 両腕を後ろで縛られたままの俺は、隣にいるガスターへと聞く。

「知るかアホ。お前の仲間じゃねぇのかよ?」

「こんな獣が、仲間にいた覚えはねぇっての……」

 階段を登ってきたのが、クロノワールか、国王だと思ってたのだが…………

「おうおう……そっちの白髪頭の方が殺りがいがありそうだなぁあ!!」

 こんなチンピラのような喋り方のライオンなんて、知り合いに居ない! 心当たりもない!!

「ちっ。俺をご所望かよ」

「手伝って「要らねぇよ、雑魚」…………」

 無性にチンピライオンを応援したくなってきたぞ。


 だか、俺が応援するまでもなく、チンピライオンは半端ない強さを見せた。

「オラオラオラオラッ!!!」

「ちっ! うるせぇ咆哮だなっ!!」

 拳銃で魔力の弾を打ち続けるガスター。

 全弾命中しているものの、ダメージを受けている様子がない。

「オラッ!!」

 腰回りほどある左腕を振り抜く獣。ガスターは、紙一重で避けるものの、凄まじい風圧でふらついてしまう。

「このやろう……!」

 明らかに力量差がある。

 このままガスターが負ければ、俺は解放されるんだろうか。


「魔王様っ!」

 台風のような戦いが繰り広げられている最中。呼ばれたような感じで、階段の方へと視線を向ける。

「クロノワール!!」

 満身創痍(まんしんそうい)という状態のクロノワールが、剣を杖代わりにして階段を登りきる。後ろにはリリアーデさんの姿。

 2人は攻撃を食らわないように縁を進んでくる。

「魔王様! ただいまお助けいたします!!」

「させると思う?」

「リリアーデ!? ここまで来て、私の邪魔をするのかっ!?」

「旦那が生き返るかもしれないのよっ!? 邪魔するに決まってるじゃないっ!!」

 ……訂正。取っ組み合いをしていた。




『実に微笑ましい光景じゃないか……』

 不意に目の前が暗くなるまでは、確かに同じ感想を抱いていた。

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