『禁忌の時代』に挑戦
目の前の生物は、『禁忌の時代』に産み出されたものだ。
これは偶然なのだが、その時代に産み出したグラム家に伝わる伝書にも、この生物の記載がされていたのを覚えている。
死ぬほど覚えさせられたからな。忘れたと思っていたが、実物を見て思い出してしまった。
「はははっ!! いいなっ! お前もなかなかの強さじゃねぇかっ!!!」
咆哮するように言葉を話す金色の獣。
そして、刃を交えながら、ずっと頭の中で渦巻いている疑問。
なんで、バカ王の体に宿っていたのだ。
この獣の特徴は、死なないことだ。
正確には、死んだ瞬間に別の肉体を求めて移動を始める。
そして、自分の魔力でも問題ない丈夫な生物を見つけては、体を精神ごと乗っ取る。それをひたすら繰り返す。
ここでこいつを殺せたとしても、また別の奴に取り付くだけだろう。
そもそも、実力差の問題で殺せるかどうか。かなり怪しいところだがな。
「『黒龍剣劇』!」
魔剣グリモワールをレイピアのように細長くし、獣へと不規則な動きで振る。
「はははっ!! もっとだっ!!!」
「ぐっ!」
全ての剣を両腕で弾き返す獣。化け物にもほどがある。
「リリアーデ! まだかっ!?」
これ以上は私の方が持たないぞっ!?
「準備オーケーよ! クロノワール!!」
よしっ!
リリアーデの返事が来たところで、私はグリモワールをクレイモアのように太くする。
その幅の広い面の部分で獣を殴り付ける。
「おいおい、戦い方が雑くなってきたぞ?」
獣は吠える。
だが……
「これで終わりよっ! 『サタン・ゲート』!!」
闇属性最上級魔法『サタン・ゲート』を発動するリリアーデ。
この魔法で逃れられる生命体は、この世に存在しない。現に、獣もゲートの方へと引き寄せられている。
これで勝った。
そう……私達は確信していた。
「つまらねぇえ事をしてんじゃねぇぞぉおお!!!」
「「っ!?」」
まさか……!?
まさにその一言しか思い浮かばなかった。
最上級魔法をただの咆哮で掻き消しただと!?
「あ、あり得ん……!」
「さぁて……続きをやろうじゃねぇかっ!!!」
こんなのに……
「「どうやって勝てばいいのよ!?」のだ!?」
あまりの力量差に、私の腰はスルリと床に落ちた。




