表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
156/179

再び、復活に挑戦

 魔王城の中に入ると、シェリーとか言うリリアーデの娘が床にうずくまっていた。辛うじて息はしているようだ。小刻みだが、胸が上下している。

 視線を奥へと向ければ、壁に叩き付けられたかのようなひび割れとレムちゃんの姿がある。向こうも気絶をしているだけのようだな。

 それにしても……バカ王がやったにしては、どうも不自然極まりない。

 シェリーの方はともかく、レムちゃんの方は人間業では無理だ。

 レムちゃんの体重は、人間の力でどうこうできるレベルじゃない。初代様が口にされていた『しょべるかー』とやらならば、運ぶことが出来るらしいが。

 ベッドなどの家具や床で支えられているのは、循環効率の良い体内魔力のおかげだと聞いた覚えがある。種族の恩恵といったところだ。

 そんな超重量のレムちゃんを吹き飛ばしたのだ。

「……他に誰かいるのか?」

 まぁどうでもいい。考えたところで誰かは、分からないからな。

 それに、今の私には魔王様をリリアーデの魔の手から救い出すことが最重要だ!

 私は、2人を無視してそのまま階段へと脚をかけた。




 シェリーが倒されたことは、なんとなく気付いてしまった。母親の直感というやつかしら。死んではいなさそうだから、そこまで怒っていない。

 ただ……目の前にいる金色の毛並みを持つ獣との戦闘は、一方的だった。

「この化け物っ!」

「いいぞ! お前のような奴が、まだ生きていた事に感謝しねぇとなぁ!!」

 さっきから全力で上級魔法を放っているというのに!

「無傷ってどういうことよっ!?」

「お前の魔力が弱いんだよっ! オラッ!!」

 手を振り抜いた風圧で、窓ガラスが割れる。体も吹き飛ばされそう!

「おらおらっ! もっと攻めてこいよっ!!」

 ここに着たのは、国王とクロノワールの二人。それは、『デモンズゲート』を使用して飛んできた時の魔力で把握できている。

 そして、この獣が国王だったってことも、推測できる。

「『デモンズゲート』!!」

 無詠唱で発動する。


 しかし、


「その程度じゃ、俺様には効かねぇぞ!!」

 咆哮するだけで魔法を掻き消してしまう。

 他の場所に連れ出そうにも、これでは連れ出せない。

 狙いが魔王である以上。私が囮になっても、付いてくる保証がない。

 頭の中で思案しているとーー

「リリアーデ!」

 階段の方から私の事を呼ぶ声が聞こえる。

「今はコイツで精一杯なのっ! あんたの相手なら、ガスターに任せるわよ!!」

 イライラをぶつけるようにクロノワールへと告げる。

「余所見の余裕があるなら、全力を出しやがれ!!」

「しまっ!?」

 クロノワールの方を向いている間に、獣がカギヅメで私へと襲いかかる。

 決して、気を抜けるような相手ではなかったのに……私は、完全にやらかしてしまった。


 正直、死んだと思ったわよ。


 でも、

「リリアーデ!」

「っ!? な、」

 なんでっ!?

「ぼさっとするなっ!!」

 気が付けば、クロちゃんが目の前でカギヅメを魔剣で受け止めていた。

「おうおうおうっ! 2人で丁度良いぐらいだろう。その調子でドンドン来やがれっ!!」

 咆哮する獣。

 その大砲のような風圧によろめきそうになる私。

 非力な私と、獰猛な獣の間に立ち塞がる旧友。


 今は敵対していると思っていたのに……


「美女と野獣って話には、ナイト様なんか出てこないわよ?」

「そんな冗談を言ってる場合じゃないっ!? こいつを倒すぞ!!」

 ……どうやら、闇の精霊になったクロノワールでも不味い相手のようね。仕方ない……か。

「アレを使うから、時間稼ぎ……頼んだわよ?」

「1分だっ! それだけなら、ならなんとかしてやるっ!!」

 1分かぁ……ちょっと足りないかも。


 でも……

「分かったわよ!!」

 私はつばぜり合いをしている2人から少し離れて、最上級魔法を詠唱し始めた。




 金色の獣。それを一目見たときに、ある昔話を思い出した。

 昔のことなど……全て忘れていたと思っていたのにな。


 昔話と言っても、童話のようなものだ。父に聞かされた、グラム家に伝わる古い物語。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ