初めての魔王様救出に挑戦!
久々の連日投稿!
俺が捕まえられてから、数時間後。どれくらいかは分からねぇが、体感時間で2、3時間といったところだろうか。
俺は檻の外から魔王城の書斎へと移されていた。
赤い絨毯の上に、黒い炭のような粉で魔方陣が描かれている。正しく、儀式に用いられるモノだろうな。
そんで、
「俺が儀式に必要な生け贄ってところか? ガスター」
「まぁ、そうだな。アホの癖に理解が早くて助かるぜ」
俺の肩に体重を預けながら快調に口を滑らせるガスター。
「それで? 後はなにが必要なのよ?」
俺の背後には、ピリピリしたリリンさんの姿が。
俺が魔界を離れてから、本当に何があったんだよ。
そんな状態のリリンさんを刺激するように、ガスターは続ける。
「そう慌てんな。脳筋バカが持ってくるまで、何も慌てる必要はねぇんだからよ」
「…………っ」
舌打ちをするリリンさん。それとは正反対のガスター。
与えられた情報から、クロノワールが来るってことは理解できた。
…………あれ?
なにか忘れていると思ったが、今になって思い出した。
ミカエルって、どうしてるんだ?
というより。
俺は1度気絶させられたから、あの2人が俺の元に戻って来ているはずだ。
魔力によって生み出した人形は、術者が気絶するか、人形の魔力が尽きるかで消滅する。
俺の場合、人形の魔力を遠隔で送っているため、完全消滅させられない限りは問題ない。2人の実力から考えると、完全消滅なんて状況になり得るとは思えない。
この場合、俺が気絶させられているから、俺の頭の中に、どっちか(あるいは片方)が、戻って来ているはずだ。
……ちょっと呼び掛けてみるか。
『ミカエル? クロノワール? どっちか居るか??』
頭の中で、声に出すようなイメージで呼び掛けてみる。しかし、誰からも反応がない。
まだ術が解除されてないのか?
……ダメだ。俺の頭では、これ以上考えても仕方ない。
同じ考えるなら、この状況から抜け出すことを考えよう。
「クロノん!」
扉を吹き飛ばしたのは、おつかい? に出ていたクロノんだった。
「魔王様はどうした?」
「……ごめん。あたしも分からないの」
「……そうか。なら、何でココに居る? 魔王城で何かあったのか?」
クロノんは、あたしの両肩を掴み、激しく揺さぶってくる。
「メイドさん達が、あたし達を襲ってきて、葵ッチが戦っているところ……だと思う」
それを聞いたクロノんは、無言のまま、部屋の窓ガラスをぶち破って外へと出ていった。
「クロノん……」
この部屋の修繕費、後で請求するからね?
魔王様のもとへ戻ろうと、何度も術を解除しようとした。
この術を使用するときに、術者以外でも解除できるように組まれている。
そして、その動作に問題はなかった。どこかの心配性が何度も試したからな。
だが……現状はご覧の通り。
術を解除しても、すぐに生成され、魔王様のもとへ戻れなくなっている。
おまけに、役立たずは姿を消す始末だ。
「ほんとに使えん奴だ」
愚痴を溢しながら走ること、2分。
魔王城に到着した私は、庭で魔法を行使していた国王へと問い詰めた。
「クロノワールさん、通信魔法を行使してるところに割り込まないでくれないかな?」
「そんなことはどうでもいい! それよりも、魔王様はどうされたんだっ!?」
国王の胸ぐらを掴みあげ、まるで憎悪をぶつけるように問い質す。
「魔王君なら、恐らく魔界に連れていかれた」
「誰にだっ!?」
「シェリーさんを始めとするメイド隊隊長格の4人にだ」
メイド隊……が…………?
「なぜ、魔王に仕えるはずのメイド隊が、魔王様を拉致するのだ?」
訳が分からない。
「だから、苦手な通信魔法で聖女に連絡をとっていたのだが……」
国王に白い目で見られるも、「そんなもの知ったことか」と言い返す。
「第一。お前ならエクスなんとかでひとっ飛びだろうに。なぜ、まだこんなところに居る? 助ける気があるのか?」
「無茶苦茶言うねっ!?」
なにが無茶か。いつもは便利そうに使っているくせに、こういう一大事な時に使えんとは……
「無能か?」
「いい加減にしないと、僕も怒るよ?」
一悶着あったものの。
私と国王は、『デモンズゲート』を行使して、魔界の魔王城付近へと移動した。
このあと。
魔王様が死ぬとは、思いもしなかった。




