初めての反乱に挑戦よ!
久しぶりの三人称と姉さんの登場です!
ついでに新キャラも……。
3代目魔王が拉致される1時間ほど前。国王と聖女と魔王の3人での会議の最中のことである。
魔王筆頭メイドであるクサリが寝ている寝室にて、聖女の娘であるカルラと、3代目魔王の姉である葵は、クサリの看病をしていた。
「熱とかは治まったみたいだから、あとは目が覚めるのを待つばかりね」
葵は、クサリの額に堅く搾った濡れ布巾を置く。
助け出されたばかりのクサリは、魔力や体力の消耗が激しく、それこそ危篤患者の様相だった。
回復魔法などで傷を塞ぎ、魔力抽出器を応用した機器にてクサリの体内魔力を補給。
あとは、体力の回復を待つばかりの状態である。
「うん! 早く元気になってほしいの……」
クサリに毛布を掛けている葵の横では、激しい戦闘を終えたばかりだとは思えない、元気一杯のカルラ。
彼女は、もはや私服と同等の扱いとなったメイド服を着ては、せっせと看病に必要な水やタオルを用意している。
なお、薬の類いは、彼女達では分からないため、別室で寝ているモルモーの指示にしたがって用意した。
話が前後するが、アカネに斬られたモルモーは、リンに連れられて医者のもとへと運ばれた。
幸いにも、彼女がヴァンパイア族だったことと、担ぎ込んだ医者の腕が良かったため、一命を取り止める事が出来た。
その医者のもとで2日ほどベッドを借り、呼び寄せたレムちゃんによって魔王城に運ばれたのである。
それからは、クサリを連れ戻すための話により、彼女らは放置プレイに処されていたのであった。
「作者がサボっただけの話だろ?」
「……リン? どうかしたの?」
「いや……なんか声に出したくなっただけだ」
それにしても、色々と大変よね。
つい半年前までは、こんな世界に無理矢理連れてこられた挙げ句、戦争に巻き込まれるなんて思ってなかったもの。
それに、弟は魔王として、皆を引っ張っていくような立場だし。
「ほんとに……大変よね~」
「葵ッチ?」
カルラちゃんが、私の顔を見上げながら、不思議そうに首を傾けている。
「ううん。なんでもないわよ」
こんな可愛い子までが、剣を持って戦っているのよね。大人の私が、弱音を吐いてる場合じゃないわ!
「さて。モルモーちゃんのお世話もしないとね」
「うん!」
今、出来ることをちゃんとやらないとね。
そう思い、立ち上がったのと同時に、寝室のドアがこっちへと跳んでくる。
「『剛打』!」
反射的に、重たそうな色をしているドアを殴って砕く。
ドアの先には、2人のメイドさんが立っていた。……この展開で、クサリさんのお見舞いなわけ、無いわよね。
「すみませんがぁ~、クサリをこちらに渡して頂けますかぁ~?」
語尾がだらしない女性。
「悪いけど、クサリさんは寝ているのよ。ノックするなら、もう少し静かにして欲しいんだけど?」
「あらあらぁ~ごめんなさいねぇ~。てっきり起きてると思ったからぁ~」
あぁー! イライラするっ!!
私よりも胸が大きいくせに、なんてだらしない話し方をするんだっ!!! もぎ取ってやりたくなるわっ!
……っと。そんなことよりも。
「カルラちゃん」
「……手伝うよ」
後ろで魔力を高めているカルラちゃん。デュランダルを出す準備をしているんだろう。
でもーー
「私が退路を開くから、クサリさんを連れてってくれない?」
「うん、わか……え?」
驚いてるところ、本当に申し訳ないけど。
私は早速、行動した。
「『デモンズゲート』!!」
カルラちゃんの後ろに漆黒の門を開き、2人を引きずり込ませる。
「デス!」
「分かってますよぉ~!」
おっとりとした口調とは裏腹に、1人のメイドが距離を詰めてくる。彼女の持っている鎌は、天井を切り裂きながら振り下ろされる。
「させないわよっ!!!」
腹から大声を出し、空気を押し固める。
「……こ、この……距離……で、こ……の…………『いあ……つ』!?」
「師匠直伝の『威圧』だけど……お喋りできるほどの実力者か」
まぁ、師匠は平然と格闘戦に持ち込んでたけど。……痛かったなぁー。あのパンチ。
私はその場で腕を伸ばし、巨乳なおっとりメイドの額に掌を当てる。
「『轟小砲』!」
ドンっという大砲のような音を響かせるが、目の前の女性は身動き1つしないで気絶した。たぶん死んでないでしょ。
「はぁ……とりあえず。降伏を薦めるけど、どうする?」
「そ、れ……きぜ…………つ……させる……前に」
……途切れてて、よく分からないわね。
私は、体から放出させている魔力を弱め、杖を持つ彼女の口を自由にする。
「……降伏を薦めるなら、攻撃する前に言うべき」
「……目の前の巨乳に、降伏を薦めると思う?」
「………………そこには同意」
どうやら、彼女とは話が合いそうだ。
「でも、降伏はできない。初代様の復活を遂げるため、クサリには魔界へと来てもらう。デス!」
「さようならっ!」
「っ!?」
「ったく、この女っ! 頭が吹き飛ぶかと思ったわよっ!!」
鎌を携えた女は、床に倒れた葵の頭を2度、3度と蹴る。
「ほら、口調に気を付けないと」
「あらあらぁ~! 私としたことがぁ~ごめんなさいねぇ~」
「「いいわよ、別に」っ!?」
蹴られていた葵は突然、鎌を持っているメイドの左足首を掴む。
そしてーー
「『轟小砲』!!」
片足から魔力の向きを無理矢理変えられたメイドは、勢いよく天井へと跳ね上がる。
数秒間。宙に浮いたメイドは、ぐったりと床へと倒れ込む。代わりに葵がゆっくりと立ち上がる。
それはまるで、死人が蘇ったかのような、ゆったりとした動作だった。
「……化けも」
最後まで口を利く前に、杖のメイドは、廊下の壁へと叩きつけられ、壁画のように埋め込まれてしまった。
「誰が化け物よっ!?」
いや、十分化け物でしょ?
「お前も壁画にしてやろうか?」
遠慮しておきます。
かくして。
クサリを連れ去ろうとしたメイド2人は、葵のてによって拘束された。




