初めての旅行プランに挑戦!
同盟交渉していた国王から、紙束を受け取り、そこに書いてある領土を落とすようにお願いされた俺 棚部 亮。昨日の勇者との戦闘の様子が同多良浩太らと言い出したので怪しんでいたら……。
「あんなに激しい戦いだったのに、忘れてしまうなんて。」
「お前!!」
「やぁ。昨日ぶりだね、魔王。」
まさか、本人が直接、来るとは思わなかった。
「どうだい、これは、同盟を結ぶ前金のようなものと思ってくれていいが、その時の話を唯一覚えている人物に聞きたいと思わないか?」
国王が、不気味な笑みでこっちを見てくる。……断りたいけど、随分魅力的な話だった。
俺が、判断に物凄く困っていると、クサリさんが、国王に疑問をぶつける。
「……国王。もし、同盟の話を断った場合は、どうなるのでしょうか?」
「うん?「どう」とは?」
「……勇者領と魔王領との全面戦争になるとか……です。」
……すっかり忘れていたが、そんな話も今朝していた覚えがある。
またまた、俺の顔に不安が出ていたのだろう……。
「そうか!その手があったか!!……では、断ったら宣戦布告する。」
……誰でもいいからポーカーフェイスのやり方を教えてくれ。
もう、断れないなら少しでも俺らにプラスになるように動くだけだ!
「同盟を結ぶとして、このリストの領土を全部、俺ら魔王領側が落とすことになるのか?」
「あぁ。そうなる。ただ、期間を設けさせてもらうことになるけどね。」
リストにある全部の領土を落とすことになるのか……。
「そっちから兵士は、借りられないのか?」
「勇者領の人間が、勇者領の領土を落とすなんてことは、もはや、領土の分離と等しい。よってそれは、無理だ。ただ、魔王領の領土の管理には、人員を貸すことが出来るから、それで我慢してほしい。」
……管理に人を貸せるなら、その分、このリストに人員を避けよ。
「聞きたいことは、それだけかな?」
「あぁ。俺からはもうない。」
クサリさんに目で国王と同じ質問をする。
「…………私からもありません。」
少し考え事でもしていたのだろうか?クサリさんの返答が少し遅れた気がした。
「なら、前報酬として、そっちの勇者の話を聞かせてくれよ。」
「同盟を認めるってことでいいね?」
「あぁ。」と短めの工程をすると、国王は、勇者に向けて話すように指示した。
――――君が気絶したときに、気絶しているかどうかを確認するため、フレアソードを解いて剣をしまおうとした。そのすぐ後だった。気絶していると思っていたの君が、突然立ち上がり、俺に向けて火属性の魔法を放ったんだ。もちろん、それは回避した。たが、次は衝撃だった。
まさか、自分に精霊を宿して戦うなんて聞いたこともなかったからさ。火属性の精霊を宿した君は、全身を炎で包みそのまま攻撃を繰り出してきた。こちらの火属性の攻撃も通常の攻撃も無意味に等しかった。これ以上の戦闘は、命に関わると思ったから、煙幕を張ってなんとか逃げ出したよ。
――――
精霊を身体に宿して戦うなんてことは、ありえないらしい。
精霊とは、六属性それぞれの原点であり、その象徴だそうだ。その精霊からの加護を武具に宿して戦うのが付加術という魔法らしい。ただ、かなりの負荷が宿した対象にかかるので身体に宿せば命の危険がある。ましてや、戦うなんてことは、できない。
…………この世界にきて、一番衝撃的だった。俺の体は、大丈夫なのか?
勇者との話が終わり、同盟についての話に移った。
そんなに難しい話はなかった。さっきだされた、頼み事の件についての話と1ヶ月後にどうするのかを話し合う約束をかわして夕暮れとなった。
帰ろうと席をたった国王が、思い出したかのように言う。
「そうそう。そのリストの並びは、領土の弱い順になっている。そして、ここ『ペルン』もそのリストに書いてあったはずだ。だから、そのリストから『ペルン』を除いて5つ以上を1ヶ月で落としてほしい。もちろん、無理なら無理で構わない。」
「あぁ。わかったよ。それじゃーな。」
国王のお帰りにそっけなく返した。
もうクタクタだった。クサリさんは、今、台所で夕飯を作っている。いい匂いが、ここまで来て俺のお腹を刺激する。
グウゥゥゥー。
「もうしばらくお待ち下さい。」
……めちゃくちゃ恥ずかしかった。
今日の夕飯は、鶏肉のステーキだった。フライパンのまま出てきた鶏肉は、ジュージュー音をたてて俺の食欲を掻き立てた。ガッツリしたものを食べたいと思っていたとこだったので、丁度よかった。
食後は、リストに乗っているどこの領土をどうやって落とすかをクサリさんと話し合った。なかなかいい案が出ず、月も空高く昇ったときにクサリさんから、とんでもない妙案がでた。
「魔王様。『姫騎士領』の方達に手伝って頂くのは、いかがでしょう?」
「……いいの?」
「相手が了承すれば問題ないでしょう。国王の要望は、勇者領の人間を使わずにリストの領土を落とすことですから。」
かなりいい案だが、姫騎士領が協力してくれるだろうか?
「……この際、姫騎士領とも同盟を組むか?」
「その手でよろしいかと思います。」
クサリさんからも、了承を得た。そして、もう夜も遅い時間だったので、作戦会議は明日に持ち越しになった。
翌朝。
クサリさんの手料理を堪能しながら、姫騎士領との同盟についての話をした。
「それで、姫騎士領の方は、納得するかなぁー?」
「いえ、させるしかないと思います。同盟とそれによる、戦力の一時的増強は、リストをクリアするためにも必要ですから。」
俺とクサリさんで同盟以外にもお土産を用意した。上手くいく確率を少しでもあげるためだ。
お土産の内容は、姫騎士領のトップ、『聖女』に会ってからということで。




