初めての反乱に挑戦!
「では、彼女が来るまでの間に出来ることを進めていこうか」
「出来ることって……何をするんだ?」
聖女との通信を切った俺は、国王にそう言われ首をかしげる。
門を潜れば10分足らずで到着できるんだが……人間によって、使用できる出来ないに分かれるらしい。
聖女と国王は出来ないらしいから、どっちにしろ片方を待つ必要が出てくる。
「まぁ……ココだけの話だね」
なんだそれ?
疑問しか募らない俺は、国王の指示で部屋の四隅に拳サイズの石を置いていく。
この石は、盗聴や盗撮を防ぐ役割を果たしてくれるらしい。ジャミング……だったかな? そんなようなもんだ。
「それで? ここまでの事をした上での話ってなんだよ?」
国王は表情を強ばらせて口にする。
「……魔王領が分断されるかもしれない」
「……………………はぁ?」
突然、何を言い出したんだ? このバカ王は?
「……ここ最近。オルちゃんの姿が見えないようだが?」
「あ……あぁ。ガスターが連れ回してると思うぞ?」
俺が魔王城を出発してから戻って来るまでの間に、他のメイドさんから聞いた。クサリさんとは、まだ会話してないからな。
「なら……もう手遅れかもしれない」
国王はどんどん表情を曇らせていく。
「手遅れ……って、そもそも、なんで分断されるんだよ? それにガスターが関連してるのか?」
意味が分からず、俺はイライラしながら国王へと問う。確かに役立たずな人間だけど、仲間なんだ。それなのに、堂々と裏切るかもしれねぇ……なんて。
その問いに、国王は真面目な顔をして頷く。
「恐らく、彼が先導しているのだろう。……それだけじゃないのが、また厄介なところなのだがね」
「……全部、推測で言ってるのか?」
「………………あぁ」
なんだよ……それ…………
「だが、可能性は十分にある」
そんな可能性……
「何が動機なのかが分かれば、納得のいく説明が出来るんだがね……」
「納得いく、いかねぇの問題じゃねぇだろっ!?」
俺はかっとなり、国王の胸ぐらを掴む。
「今がどういう状況かっ! 知ってるだろっ!!」
そんな俺の手を外そうと、国王が俺の手を握る。
「あぁ。……だからこそだ」
無理矢理、外された手を宙に浮かせたまま。俺は国王の言葉に耳を貸してやる。
「この戦争に乗じれば、魔王領を簡単に落とせる」
「魔王領を落としてどうするんだよ? 同じ領土を落とす必要なんか! どこにもねぇだろ?」
怒りしか湧かない俺に、国王は言葉を紡いでくる。
「確かに分からない。彼……いや、彼らがなにをしたいのか。それさえハッキリすれば」
「ならハッキリさせてやるよ」
国王の言葉が遮られ、その直後に壁が爆破される。
「っ!?」
「ガスター……」
砂埃が舞っている中。
その灰色の煙幕の中に居たのは、オルの手を握っている二代目魔王だった。
「おい、そこのバカ。悪いが、魔界に来て貰うぞ?」
魔界? 今がどういう状況か分かって言っているのか?
「それは無理な相談だ」
俺が返答に迷っていると、隣にいた国王が代弁をする。俺の意思はガン無視だ。
「……俺はそこのバカに聞いてるんだが? 化け物は引っ込んでろよ」
「おい、ガスター。今がどういう状況か分かってるのか?」
俺は返答の代わりに質問を投げる。
「あぁ。今はなーー」
ガスターは、自分の手の血管が浮き出るほど、オルの手を強く握りーー
「初代魔王を復活させるための下準備だろ?」
と。答えた。
「『アンリミテッド』!」
ガスターが言うと、オルの姿が煙のように消える。
「させないっ!」
飛び掛かってきたガスターに対して、腰に下げていた剣で応戦する国王。
2人はそのまま、斬り合いを続けながら、部屋の外へと出ていく。
「…………どういうことなんですか? シェリーさん」
俺は部屋の外に居るシェリーさんへと問う。
もう、何もかもが分からない。
……なんで、シェリーさんは……いや、シェリーさんだけじゃない。
「なんで……メイド隊の皆が…………臨戦態勢なんですかっ!?」
「魔王様……いいえ、棚部。貴方を拘束指せていただきます!」
シェリーさんだけでなく、レムちゃんまで居る。他にも、鎌を持っているメイドに杖を持っているメイドもだ。
……共通しているのは、オルが全部出せるモノーー魔王七つ道具を持っているってことだ。
ここに居る4人にクサリさんと太刀のメイドさん。それから、オル自身で七つ道具が全て揃うってことかよ。
「無駄な抵抗はしないでください」
「………………………………」
俺は無言のまま。身体中の魔力を高めた。




