初めての神界に挑戦……!
なかなか更新できなくてすいません。
これからも頑張って更新していきますので、応援してください!
それでは、本編の方をどうぞ!
クサリさんが連れ去られてから、10日が過ぎた。
俺の頭には、一刻も早く助けたいって気持ちがあった。ただ、クロノワールとミカエルが無理矢理にでも俺の気持ちを別の方に向けてくれてたから、いきなり飛び出すような真似はしなかった。
『では、3代目』
「あぁ……」
やっとだ。やっと、クサリさんを助けに行ける……!
「それじゃあ、みんな……」
俺は深呼吸をして、後ろに居る皆へと声をかけ――
「行くぞ……!!」
神界の大陸へと、力強い一歩を踏み出した。
「はぁ……はぁ……」
「流石。初代魔王のお気に入りだ。なかなか倒れませんね」
これで80人……ここに連れられてから、休むまもなく戦い続けさせられている。
周りには木々が生えているものの、身を隠せるような状況でもない。もう少し魔力が残っていれば、話は別なのですが。
「昼夜問わず戦える人材は、なかなか居らんからな」
目の前には、巨大な鎌を肩にかけた岩のような男。その隣には、枯れ枝のようにヒョロヒョロとした男。どっちも幹部候補だろうか。明らかに魔力量が違う。
全快の私ならば、どちらか片方には、相討ち覚悟で勝てる可能性がある。それくらいの強さだ。
幸いなのは、奴等が戦闘に参加してこないことだ。
「はぁ……はぁ……」
今日で何日経ったのでしょうか。
空を見上げても、常に明るい星が地上を熱してくる。昼も夜も関係がない。
「はぁ……はぁ……」
魔王様は大丈夫でしょうか。私を助けるために、無茶をされてなければ良いのですが……。
「…………そうですね」
無茶をされる前に――
「ここから出ていかせてもらいます! 『バインドチェーン』!!」
細い男を串刺しにしようと、金色の鎖を伸ばす。
しかし、いつものキレがない。疲労のせいですね。
枯れ枝のような男は、避けることもせずに、片手で払い除けてしまう。
「私達よりも先に、周りの兵士を相手にしてあげてくださいな」
「っ!?」
枯れ枝の男の声が聞こえたのと同時に、地面が揺れ始める。
普段なら倒れることのない小さな地震だが、私はその場で両手をついてしまう。
「死ねっ!!」
両手両膝を付いた私。その隙を狙うように、周りにいた雑兵が飛び掛かってくる。
「『バインドチェーン』!」
撃退しようと鎖を伸ばす。しかし、地面が小刻みに揺れているため、狙いがブレてしまう。
「ぐっ!」
「とどめだっ!」「死ねっ!」
鎖が当たらなかった兵士らが、私へと一撃を入れる。
私は咄嗟に体を右に傾けたため、致命傷は避けられた。
ただ……疲労がたまっているせいか、そのまま転がるように仰向けになる。
そこを別の兵士が剣を降り下ろしてくる。私の首を狙って振り下ろされる錆び付いた剣が、視界に入り鎖で撃退しようと試みる。
「っ!?」
しかし、ここで悪い事に、魔王七つ道具を使うだけの魔力が切れる。
私は身を守るように、両手を顔の前でクロスさせる。もちろん、何もしないよりはマシな程度の効果しかない。
「ぐっ!!」
憎しみによって振り下ろされた剣は、私の肌を荒く傷つける。再び振り上げられては、振り下ろされる。
「がっ!!! あぁっ!!!!」
何度目かの単純作業で、右腕が居られた。
「死ねっ! 死ねっ!! 死ねっ!!!」
それでも、目の前の兵士は剣を振り続けてくる。ボロボロの左腕が折れるのも、時間の問題でしょう。
「がぁっ!」
私は、この場で死んでしまうのでしょうか。
こんな……憎しみしか蔓延していない土地で…………
「申し訳ありません……魔王様…………」
約束を守れないことを……お許しください…………
「『猪突二刀』!!」
意識を失いかけた私。その上を豪快な風が吹き荒れていく。
「クサリん! 大丈夫!!」
「カルラ……様?」
どうして、ここに……?
白金の鎧を身に着けたカルラ様の後ろ姿を見た私は、そのまま意識を失った。
「クサリん! 大丈夫!!」
ぐったりと横たわるクサリん。ずっと戦い続けていたのか、無傷な場所が全くない。
服も肌も、全てがボロボロだった。
「カルラ……様?」
「大丈夫! あたしが来たからには、もうクサリんに手を出させないよっ!!」
周りの雑兵を薙ぎ払い、クサリんを守るように6人の私が、相棒のデュランダルを構える。
「「先手必勝!!」」
2人の私がそれぞれの方向に走り出す。
「うんしょっと……」
残った4人の内、1人がクサリんをおんぶする。ただ、身長差のせいで、脚だけ地面を擦っている。
「行くよ!」
残り3人で、クサリんを運ぶあたしを守るように囲む。
「このクソガキッ!」「行かせるわけねぇだろっ!!」
飛び掛かってくる兵士。
「邪魔っ!」
その兵士らをデュランダルで真横に両断する。兵士達の真っ赤な血は、黄土色の地面を染めていく。
「流石に雑兵では、歯が立ちませんか……」
亡骸を踏み潰して降り立ったのは、さっきから高みの見物をしていた枯れ枝のような男だ。
強い……少なくとも、10日前のあたしなら、相討ちで良い方かもしれない。ただ……
「今のあたしなら……全然問題ないっ!!」
私はデュランダルを突き出して、一気に距離を詰める。
「『猪突』!」
「速いだけで、簡単に避けられる」
まるで突風に煽られる布切れのように、ひらりと避ける男。
もちろん。
「予想済みよっ!」
男の横を通り過ぎたあたしは、地面を思いっきり蹴り宙に舞う。半円を描いて、男の脳天へとデュランダルを突き出す。
「上空からの奇襲というところでしょうが……点のような攻撃では、当たる訳がありません」
枯れ枝のような男は、半歩下がってカウンターの準備をする。
男の言う通り。このままなら当たらない。それどころか、もろにカウンターを受けることになる。
そう……このままならば。
「デュランダル!」
全身に送り込んでいた魔力をデュランダルに注ぎ込む。
魔力を過剰に受け取ったデュランダルは、分厚い刀身を鋭く、細くしていく。だけど、長さも質量も変わらない。なんとも不便な状態だ。
「なんの小細工か分かりませんが、これで終わりです」
男は、あたしの落下に合わせて回し蹴りを放つ。
かなりの魔力がつぎ込まれた……生身で受けたら間違いなく戦闘不能になる……そんな一撃だ。
それをあたしは、白金の鎧越しに受ける。
「スパイク!」
ただし、全身をトゲトゲにした状態でだ。
「なっ!?」
男の回し蹴りは、あたしのお腹に見事命中する。
当たったのと同時に、あたしは空中で止まる。ちょうど、枯れ枝に実った木の実のように。
「ぐっ!? 小娘風情が……何を!!?」
「……教えてあげないっ! デュランダル!!」
右手に持っていたデュランダルを男に向かって突き出す。
「させんっ!!」
右足にくっ付いているあたしを踏み抜こうと、枯れ枝の男は、魔力を込めながら地面へと脚を振り下ろした。
あたしはデュランダルを元のサイズに戻し、体中の魔力を一気に高めた。
「『轟突』!!」
魔王様直伝の近距離必殺技が、あたしを中心に轟音と化して周囲を震わせた。




