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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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久しぶりの重労働に骨が折れそう

 聖女が魔界へと向かう少し前。

 大陸東の大地にて、国王と彼の師匠が戦闘を繰り広げていた。

 国王の持つ剣――王剣『エクスかリバー』は、大戦が始まってから使い続けたためにヒビが入り、使い物にならなくなる。代わりにと持ってきていた予備の剣を抜き、師匠へと斬りかかる。が、致命傷を与えることなく返り討ちにあい、動けなくなってしまう。

 さらに、ここまで休むことなく戦い続けたため、疲労で指1つ動かなくなってしまう。

 死を覚悟した国王は、化物と化した師匠を睨むだけだった。


「死ね」

 巨大な刀が、僕へと降り下ろされる。

 まだ死ねないのに……死んではいけないのに……!

 無情にも、刀の速度は止まらない。確実に僕を殺そうと迫ってくる。

「     」

 声もでない。指も動かない。脚も動かない。

 ここまで悔しいと思ったのは、初めてかもしれない。

 目の前の化物に勝てない。これが、ここまで悔しいとは……。

 刀が僕の腹に触れた。

 抗うことも出来ず、ただ悔しい思いで、その光景を眺めることしか出来なかった。

「うっ!? ぐわぁっ!!?」

 しかし、僕の体は斬られた痛みがなかった。

 代わりに、頭を殴られたような痛みと背中を強打したような鈍痛だ。お陰で意識を失いかけた。


「寝るなら縁で寝ろよ、バカ」

 ギリギリ保った意識で声のする方を見る。目に入ってきた情報を整理し終えたら、本当に眠ってしまいそうだ。

「たくっ……こんな奴のお守りをさせられるくらいなら、オルとのんびりしてたのによぉ……」

 辛うじて見れた光景は、二代目魔王が化物と退治している瞬間だった。




 なにが楽しくて野郎を助けなきゃならんのだ。まぁ、ここで死なれたら、俺の仕事が5倍くらいになる。

 そうなれば、愛娘のオルと遊べなくなる。……今でも充分、遊べてねぇけど。

「……なんだ貴様は?」

「あぁん? 俺か?」

 こいつ、勇者領の人間だったくせに俺のことを知らねぇのかよ。無知にも程がある。

「二代目魔王のガスターだ。覚えとけよ、この脳無し筋肉バカ」

「………………」

 この程度の暴言で黙るくらいなら、お家でおねんねしてろよ。

「さっさと帰らねぇと、土にって――」

 俺は左手1つで、鉄パイプのような刀を受け止める。

 錆びだらけの刀振るうくらいなら、その辺の木の棒を振ってた方がよっぽどマシだろうに。

「問答無用で殴ってくんじゃねぇよ。この脳筋」

「……我の一太刀を止めるか」

「この程度、屁でもねぇだろ」

 実際はドーピングしてるからだけどな。これくらいのハンデ、久しぶりに体を動かすわけだから、許して欲しいところだ。ドーピング無しなら、普通に避けてたっての。

「さっさとくたばれっ!」

 俺は右腕に握られた銃身の長い拳銃を化物に向けて、魔力の弾丸を放つ。

「『一閃』」

 化物風情は、俺の撃った弾丸ごと、俺を真っ二つにしようと刀を水平に振り抜く。

 俺の体に触れる前にカチンという火花が散った。

「うおりゃ!」

 弾丸を斬った刀へと、左手の拳を躊躇なくぶつけに行く。

 もちろん。なんの工夫もなく殴れば、俺の左手が粉々になるだろう。

「ぬっ!?」

 だが、俺の左拳は砕けるどころか、刀を空へと弾く。

「このまま、くたばれっ!!」

 人差し指を力強く握る。それと同時に(かん)高い発砲音が森の中へと響いていく。

「『ガン・ナックル』!」

 瞬間的に人差し指を弛め、さっきよりも力強く握る。2発目の発砲音が木霊し、鳴りを潜めていた鳥達が一斉に飛び立つ。

「ぶっ!?」

 化物と言えど、痛覚はあるらしい。右胸に拳大の窪みを作って、後ろへと吹き飛んでいった。

「……さすがだな」

 常時、これくらいの魔力があれば、俺が世界統一したってのによ。

「貴様……なかなかやるではないか」

「ちっ」

 さっさとくたばれってのに。

「『時雨』!」

 瞬時に距離を詰め、今にも折れそうな刀を連続で突き出してくる。

「『パレット』!」

 2丁の短銃を構え、繰り出される刀の先端に魔力弾を当てていく。普段だったら、弾くどころか、当たることすらない俺の弾は、面白いくらい当たり、弾き返していく。

「「うぅぅぉぉぉぉおおおおお!!!」」

 化物も負けじと刀の速度を速める。それに合わせるようにして、俺の人差し指の握りも速く、強くなる。

 そんな撃ち合いが開始されてから数分も経たず――


 ガキンッ!

「っ!?」

 きちんとした手入れの出来ていない刀は、(つば)付近で砕け散る。

「貰ったぁ!!」

 銃口を自分に向け、両手の拳を化物の胸にピタリと当てる。俺の使える技で、最強の近距離技だ。

「『龍の咆哮』!」

 両手の人差し指に力を入れる。


 その直後。2メートルを超す化物の体から、黒色に近い赤色の液体と繊維質な肉が溢れるように飛び散る。


 俺の使った『龍の咆哮』は、相手の体内に自分の魔力を叩きこむというシンプルな技だ。ただ、シンプルが故に使いどころが難しい。ましてや、魔力供給量のショボい俺なら、相手も選ばないといけねぇ技だ。

 今使えたのは、異常なドーピングのおかげだ。

「さてと……」

 さっさと帰ってオルとのんびりしよ♪


 虫の息となった国王を放置して、俺は攻め込まれているだろう魔王城へと歩いて向かった。

2015年最後の投稿です。

2代目魔王の実力がそこそこわかる回でした。


さて、来年も頑張って更新していきますので、応援よろしくお願いします。

それでは、よいお年を!

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