成長したあたしが挑戦なの!
予告通りカルラ回です(カイの字ってこれであってるのかな?)。
クサリの元で修行していたカルラの成長ぶり。ご覧あれ!
「『猪突』!」
デュランダルを構え、地面を蹴る。それだけで、直線上にいた敵は吹っ飛んでいく。
「もう! 数が多いよ!!」
さっきから、わらわらと、蟻の大群みたいに攻めてくる。
「カルラ様!」「私達も戦います!」
「だめ! 皆は先に行って!!」
ただでさえボロボロなのに、ここで戦わせる訳にはいかない。
今戦えば、失うはずのない命を失うかもしれない。
だったら……
「あたしの本気……見せてあげるわよ! 『デュランダル』!!」
『デュランダル』を大きく振りかぶり、止めどなく体を流れている魔力の速さを上げる。息を止めているみたいに、少しだけ苦しくなる。
でもまだ。……もう少しだけ、速くできる。
あたしは、限界ギリギリまで、魔力量を上げる。
「クサリん直伝! 『分身』!!」
技名を口にすると、視界が3つに分かれた。
初めの頃は、2つになっただけで気持ち悪くなったけど、すっかり馴れてしまった。
最大4人までは分身体を出せるけど、成功率は格段に落ちる。3人までは、魔力を全開にしてあげれば、高確率で成功するようになったの。
「「「いくよ!」!」!」
3人のあたしがバラバラに行動する。『デュランダル』は武器の性質上、1つしかない。
だから、こんな技を閃いたんだけどね。
「「「『蹂躙』」」」
ちょうど三角形になるように移動した2人のあたし。それぞれが配置についたのを確認したら、体を回転させて『デュランダル』を投げて、即座に走り出す。
回転を加えて投げられた『デュランダル』は、空中で回転しながら、軌道上にある物体を次々と斬り倒していく。その軌道の先には、分身したあたしが居る。
そのあたしが、『デュランダル』の柄を握ると同時に回転。さらに次のあたしへと投げる。そして走る。
これをひたすら繰り返すだけの単純な技。
だけど、何でも斬れる武器は、いかなる障害物もお構い無し。縦横無尽に移動していく。おまけに、繰り返すほど威力が増していく。
「せいやぁ!」
また、あたしが『デュランダル』をぶん投げる。
回転する凶悪な武器は、敵を次々と斬り倒していく。
だけど、
「神器を玩具のように扱いおって……ふんっ!」
「「「なっ!?」」」
なに!? あのお爺ちゃん!?
あまりの速さで、円盤のように見えてた『デュランダル』を片手で掴んじゃったよ!
「ま、マズイ……」
なんてね
「『起爆』!」
あたしは分身を解いて、『デュランダル』へと魔力を送る。
すると、お爺ちゃんの握っていたあたしの武器が、粉々に吹き飛んだ。
「くわっ!?」
お爺ちゃんは、とっさに武器を手放した。けれど、破片で怪我をしたようだ。
「来なさい! 『デュランダル』!!」
再び、『デュランダル』を手元に顕現させる。
「ふむ。噂通りのお転婆ぶりじゃのぅ」
「えへへぇ」
「いや、なにも誉めておらんぞ?」
見た目がお爺ちゃんだから戦い難いけど……
「全力でいくよ! 『猪突』!!」
あたしは老人でも手を抜かない!
脚に魔力を流し込み地面を力強く蹴る。一直線に突っ込む猪のように、お爺ちゃんへと牙を突き出す。
「直線ならば、この耄碌でも避けられるのぅ」
風に煽られる紙のように、ひらりと回避するお爺ちゃん。
もちろん。クサリんと戦闘訓練しているときも、この点を注意された。
だから、体を大きく捻って、
「パス!」「キャッチ!」
お爺ちゃんの後ろに居るもう一人のあたしへと『デュランダル』を投げ渡す。
「なんじゃとっ!?」
受け取った太剣をお爺ちゃんへと向ける。後は踏み込むだけ。
「『猪突』!」
「ぐはぁっ!?」
あたしの力強く踏み出した1歩で太剣が、お爺ちゃんの体を貫いた。
クサリんとの訓練で編み出した新技。名付けて……
「「『猪突二刀』!」」
大して成長してなくね? そんなことはないので、ご心配なく!




