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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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メイド隊の活動記録・3

 久しぶりの短編です。

 話は、魔王が魔界に行ってから半年後。現在進んでいる本編からは、半年前に当たる内容です。

 …………っと言っても、その頃の魔王領がどうなっているのかという紹介がメインですが。

 本編に絡んでくるキャラクターも登場します!

 それでは(短編ですが)、どうぞ!

 3代目魔王こと――棚部(たなべ)亮が修行のために魔界で生活し始めてから、おおよそ半年が経った。そんなある日。


「ムーちゃん先輩は、休日に何してるんですか?」

「……お昼寝」

 ゴーレム族のメイド――ムーちゃんと、新しく雇われた新人メイドのマルクは、午後のティータイムに勤しんでいた。

 天気が良いということで、草原のど真ん中に真っ白なテーブルとティーセットを用意してまでのティータイムを女2人で楽しんでいる。


 あまりにも唐突ではあるが、ここで軽く現在の魔王領がどうなっているのか、その状況を紹介しよう。


 クサリが隊長を務めるメイド隊1班は、新しく増えた領土を統治するために各地に派遣されていた。

 しかし、たかだか15人で100近くになった領土を管理するのは不可能である。

 そのため、魔王が大陸にいる間から、大量の人員確保と新人の育成を進めていた。それでも、かなりの人数を雇い入れて使い物にするためには、かなりの時間がかかってしまう。

 結果的に魔王が修行へ旅立った時に集まった人員は135名。この新人達を各領地に分配。各地の領土で育成を進めながら管理を行うという無謀にもほどがある管理方法を無理やり進めることになった。

 それでも、管理しきれない領土は、姫騎士領と勇者領の2つからの支援でなんとか成り立っている状況であった。


 それが、おおよそ5ヵ月前。魔王が旅立ってから1ヶ月のことだ。

 今では、全ての魔王領をメイド隊が管理することに成功している。多少の問題はあるが、わずか半年で自分たちの領土を自分たちで管理出来るようになったのだ。


「ムーちゃん先輩、お茶のおかわりです」

 リスのような丸い尻尾を生やしたマルクは、軽くウトウトし始めたムーちゃんにお茶のおかわりを注いで渡す。

 後輩の声に目を擦りながらも、注がれたばかりのカップを受け取るムーちゃん。

「……うん、ありがと」

 お礼を呟いて、注がれた熱いお茶を冷ますことなく喉に流し込んでいく。ゴーレム族である彼女は熱に強いのだ。

「そういえば、ムーちゃん先輩はいつからメイドをしているんですか?」

 尋ねられたムーちゃんは、コップを白い机に置いて両手を広げる。

 数秒見つめたあと、ピンと伸ばされた指を1つずつ折っていく。そして、3本だけを伸ばしたまま口を開く。

「…………70年くらい」

「…………先輩って何才なんですか」

 見た目は10才くらいのムーちゃんであるが、ゴーレム族の平均寿命が1000年であることから考えれば充分幼いのだ。

「まぁいいです。それよりも、こーーーんなに、のんびりしてていいんですかね?」

「問題ない……ここは平和そのもの」

 目を細めながら言うムーちゃん。

 それに賛同するように頷いては、ふーふーとカップを冷ますマルク。風を起こしていた口をお喋りへと割り当てる。

「確かに。窃盗とかの犯罪はもちろん。痴話喧嘩すら聞きませんからねぇ~」

 マルクはアツアツの紅茶を冷ましてから、カップに口を付ける。

 彼女らのティータイムは、始まったばかりのようだ。




「リン先輩! サボってばかりいないで働いてください!!」

「サボってないでしょ!?」

 ムーちゃんらの領地から馬車を乗り継いで5日ほどの距離にある新領地では、ゴブリン族のリンと同じくゴブリンの新人メイドが管理を任せられていた。

 褐色肌の少女は、紙切れとにらめっこしているリンへと頭を下げる。

「あっ! す、すみません! いつもサボっているので……つい」

「ひ、人聞きが悪いなぁ……」

 本人は言うが、心当たりもあるので強く言い返せないでいるリン。

 実際、書類整理は新人であるノンの方が捗っている始末だ。

 基本的にリンは、町の巡回警備に当たっている。

 しかし、町の巡回などに赴いては、買い食いで財政を圧迫しているのでは? と疑いたくなるほどサボっているのだ。後輩からサボり疑惑が出てしまうのは仕方ない。

 もちろん税金からでなく、リンの給料から出ているので、サボってる時間が長いということ以外は問題ない。

「それより……ここのところモンスター駆除の依頼が多いな。傭兵達はなにしてるんだ?」

 愚痴をこぼすリンは、ノンから簡単に事情を説明される。

「なんでも、モンスターのレベルが上がったせいで、なかなか討伐が追い付かないようです。傭兵の方々から、武器防具の新調申請が来ていましたし、思うように進んでないそうです」

 幸い、怪我人が出ていないと付け加えるノン。

「実際にあたしが行って、どれくらいの強さか確認した方が良さそうね。武器を新調するにしても、どれくらいの武器でいいのか分からないし」

「……ただ単に外に出たいだけでは?」

「…………そんなことないし」

 目を反らしながら言うリンにノンは、ダウト! と心の中で叫ぶのであった。




「そ、それでは、よ、よよ、よろしくお願いします!」

 ガチガチに緊張しながら話している彼女は、クサリ率いるメイド隊1班の副隊長のシャーナである。

 極度の人見知りであった彼女だが、ここ数年でかなり改善された。しかし、元々アガリ症でもあるため、人前で話すと噛みまくりである。

「「「はい! かしこまりました!!」」」

 そんなシャーナであるが、メイドの教育となれば隊で1位2位を争うほどの腕だ。

 もちろん、教えるだけでなく、その技術や精神もピカイチなのである。

 故に新人メイドからは『カミ様』と呼び親しんでいる。本人は不快感よりも羞恥心の方が上らしい。

 そして、彼女のもとには30人の新人が割り当てられている。

 領土を5つも管理している彼女はかなり大変であるが、マミー族特有の伝達方法で各領土の異変や問題を察知、現場に急行するという方法で、それぞれの領土を納めている。

「でで、では、早速げげ、現場に向かってくだだだ、さい」

 このアガリ症さえなんとかなればと、周囲も自身も思うのであった。


 シャーナが指示を出していたのは、近隣の領土にて不可思議な盗難が相次いでいるから、その調査に向かうようにとのことである。

 不可思議というのは、盗まれたものが1週間後に帰ってくるのである。

 実害が無いと言えば無いのだが、これに乗じて本当に窃盗が行われるかもしれない。

 そのため、シャーナを司令塔として、近隣領土の警戒と犯人の確保をクサリから任せられたのだ。

 クサリの方が優秀ではあるが、彼女は彼女でやらなくてはならないことが山のようにある。そのため、直接乗り出したいが、後輩のレベルアップと言うことでシャーナにと回ってきたのだ。

「それにしても……なんで私が」

 誰もいなくなった部屋で独り愚痴るシャーナ。

 なにも任せられるのが嫌なわけではない。むしろ、クサリから頼られるというのは、メイドとしても隊員としても嬉しい限りだ。

 問題なのは、アガリ症で恥ずかしがり屋なシャーナが、『司令塔』という周りをまとめなければいけないということである。

「はぁー……」

 思えば思うだけ憂鬱(ゆううつ)な気分になる彼女は、それでも思い悩んでしまうのであった。

 3代目では、初の三人称視点で書いてみました。

 馴れていないので、なかなか苦労しましたが、誰か1人にスポットを当てない場合は、この方式の方が都合が良いと思いました。

 今回は、メイド隊の3人(➕新人2~5人)を出しましたが、次回短編も他のメイドの紹介しながら書けたらと思います。

 もちろん、本編の方も進めていきますので、首をながーくして待っていてくださると、作者も嬉しく思います。

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