再び、機械兵に挑戦!
「『獄・剛打』!」
「『剛打』」
俺の拳に合わせて、機械兵が拳を放ってくる。
しかし向こうの拳は、俺の体をすり抜け、俺の拳をもろに喰らう。
『暗黒の鎧』は、相手の攻撃をすり抜けさせるという特殊能力を兼ね備えてえる。おかげで、機械兵の攻撃は全然効かない。
こっちの攻撃は防御すら、すり抜けるから常にクリティカルヒットだ。
どんだけ強いんだよ、この技。
「どんどん、いくぜ! 『獄・剛打連拳』!!」
「ガード不可、回避優先」
俺の拳に合わせるようにして、機械とは思えない軽やかなステップで全ての拳を回避される。
「ちっ! オル、た『はい!』ち……ありがとう…………」
さっさと倒して、おやつタイムに入りたいオルは、俺が何を使いたいかを瞬時に察して、すぐさま出現させる。
俺の右手には、散々呼んだが出てこなかった太刀が握られていた。
……こんなにあっさり出てくると、オルが意図的に妨害をしてたんじゃないかと疑っちまうな。
「よ、よし! いくぞ! 『猪突』!!」
刀を突きだし、一気に距離を詰める。
「回避」
これも防げないと思ったのか、鋭く突きだした一撃は、右足を軸に回転して簡単にかわされた。
「『火炎・剛脚』」
さらに続けてカウンターだ。だけど今の俺なら問題
「いっ!?」
がら空きの背中に重い一撃を喰らった。
そのせいで、大きくバランスを崩して転ぶ俺。
「ど、どうなってんだ!?」
さっきまですり抜けていた攻撃が、突然当たるようになった。
『推測ですが……』
困惑している俺に、クロノワールの推察が頭の中で響く。
『恐らく、属性攻撃あるいは、魔法は防げないのかもしれません』
「……そういや、さっきから打撃ばっかりだったな」
そうか。そこまで万能じゃねぇよな。いや、十分すげぇけどな。
「属性攻撃有効。魔法の行使・検証を開始する」
向こうは向こうで1つ学習しちまったようだし……
「次で決めるぞ……!!」
気合いを入れ直した俺は、魔法を詠唱し始めた機械兵へと距離を詰める。
「せいっ!」
太刀を両手で持ち、横に大きく薙ぐ。
機械兵は、体を動かさずに後ろへと下がる。よく見れば、足元にはキャタピラが通ったような跡が残っている。
「それなら……これでどうだ! オル!!」
『『バインドチェーン』!』
地面から金色の鎖を突きだし、機械兵の足を絡めとる。
身動きはとれなくなったようだが、詠唱は継続している。
かなり長い詠唱だから、発動されたときのダメージが酷そうだ。早急に片を付けねぇと……!
「『黒龍剣技』!」
俺は両手持ちのまま、太刀を上下左右に振る。
デタラメに振っているような気分だけど、クロノワールから教えられた通りに、規則正しく体を動かしていく。
『黒龍剣劇』の入門に当たる剣術だ。これを覚えるのにも、かなりの時間がかかった。今ではこうして出来るようになったけどな。
「回避不可。防御します……『硬』」
両腕をクロスさせ、身体中の魔力を固める機械兵。
元々の素材が鋼鉄だからか、太刀で斬った部分から火花が飛び散っている。
「これで……どうだ!!」
最後の一刀を降り下ろし、機械兵を大きく吹き飛ばす。
機械兵の体からは、ところどころ火花を散らしている。あと一息ってところだろうか。
「損傷率70パーセントを超えました。これより、逃亡を図ります」
呟いた機械兵は、唐突に右腕を切り離した。
『魔王様、しゃがんで! 盾!!』
「えっ!?」
いきなりの指示に戸惑いながらも、出現した盾に隠れるようにしゃがむ俺。
その直後――
空気を震わせるほどの凄まじい衝撃が、俺に襲い掛かった。
「結局、アイツは何をしてたんだろうな?」
俺達は、機械兵の戦闘で荒れ地と化した地域に立っていた。
あの爆発のあと、アンリミテッド状態を解除。その直後に逆らうことが出来ない程の眠気に襲われて気絶。
起きたときには、俺達が借りている部屋で眠ってたわけだ。
運んだのはクロノワール。俺の体を使って、オルと一緒に帰ってきてくれたみたいだ。
そんで、事情を理解した俺とオルは、こうして戦った場所を訪れたわけ。
「う~ん……分かんない」
『魔方陣も消えておりますので、何をしたかったのかは全く分かりかねます』
そりゃあ、オルもクロノワールも知らないよな。もちろん、俺も。
『ただ、こっちの手の内は、ある程度知られてしまいました。今後の戦闘に影響がなければ宜しいのですが……』
「そこは、しょうがねぇだろ? だいたい、全力を出して勝てるかどうかって所だったんだ。今回は撃退出来たけど、次も出来るとは限らねぇしな」
もっと鍛えねぇとな。
「当面は、『黒龍剣劇』を独りで使えるようになることかな?」
『……それならば、ビシバシ指導しなければなりませんね』
えっ?
顔は見えないけど、頭の中で輝かしいキラキラしたクロノワールの姿が浮かんだ。
『特訓あるのみです!』
「そ、それよりも! 視察進めないとな!!」
俺はなんとか誤魔化すように、大声を張り上げた。
機械兵の行動は謎だが、ここでの視察は一通り、終わった。




