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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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初めての闇属性に挑戦!

「あぶねっ!?」

 今の俺は超絶ピンチだ。

 戦っている相手は、国王や聖女、その娘のカルラにクサリさんと俺の5人を相手にして逃げた機械兵だ。

 しかも厄介なことに、この機械兵は魔力が使える。

「『剛打(ごうだ)』」

「ぐっ!」

 魔力の乗った一撃を、魔王七つ道具の1つである盾で防ぐ。もうさっきから、これの繰り返しだ。


 普通に戦うだけでも厄介なのに、今の俺は闇属性の魔法や技しか使えないという、全然嬉しくない縛りプレイを強いられている状況だ。おまけに、俺が指定した魔王七つ道具も上手く出現してくれねぇ。今持ってる盾だって、本当なら太刀を出現させようとして失敗したやつだ。

 それもこれも、安易にアンリミテッド状態になったのが原因なんだが。

『魔王様、『炎の鎧』を使いましょう! 闇属性バージョンの!!』

「それ、1度も成功してねぇんだよ!」

 嬉々として叫ぶクロノワールに、俺も叫び返す。こっちは全然嬉しい状況じゃないのに、喜びやがって!

 『炎の鎧』が完成してから少しあと。正確には、『水の羽衣』を会得したときだな。

 水属性以外の技も、同様に試してみた。

 だけど、火と水以外の属性は発動することが出来なかった。

 そこでクサリさんに相談した結果。俺が気絶して出てきた人格に左右されてるんじゃないか。という話だった。

 そんな俺だが、ついこの間、『風の羽衣』が発動できると思ったのは、この話を思い出したのと、オルの話を聞いたからだ。

 風属性を操る人格者が出てきたなら、風属性もいけるようになると思ったんだ。俺の思惑通り、成功したんだけどな。


 しかし--闇属性と光属性だけは、いくらやっても発動しなかった。

 クロノワールが体を乗っ取っているときは出来てるんだから、俺の体に問題がある訳じゃない。

 なら、何処に問題があるのか。それが分からねぇのが目下、一番の問題だ。

『大丈夫です! 今の魔王様なら、バシッと決められます!!』

 何を根拠に言ってるんだよ!?

『さぁ! さぁ!!』

「あぁ! 分かったよ!! 1回だけだぞ!? 『(ごく)・剛打』!!」

 攻めようとして来た機械兵を追っ払うために、闇属性の拳を放った。

 当たりはしなかったが、それでも後ろに大きく下がったから、距離は大分開けた。

「マジで1回だけだからな! 『暗黒の鎧』!」

 身体中を黒い煙が覆い始める。ここまでは、同じだ。

 魔力の流し方も、いつも通り。『炎の鎧』とかなら、100パーセント成功する。

 そして、体を完全に覆い尽くす前に、足元から煙が消えていく。

 魔力は常に流しているのに、固定化される前に消えていった。……失敗だ。

「ほら、やっぱ、無理なんだよ」

 俺が諦めて、魔力を切ろうとした瞬間。


『いや、まだです! まだ諦めずに魔力を流し込んでください!!』

 クロノワールが頭の中で叫んだ。

 そう言われても、どう考えても失敗だろ? 黒い煙は、完全に消えてるし。

 とは言え、闇の精霊と化したクロノワールの言うことだから、信じて魔力を維持し続ける。

 しかし、機械兵は待ってくれないようだ。

「『フレアアロー』」

 火矢を放つ機械兵。その矢は、一直線に俺へと向かってくる。

「ヤバイ!?」

 フル詠唱された火矢だ。今の俺が当たれば、アンリミテッド状態が解除されるかもしれねぇ!?

 そうなれば、こっちの敗けだ。問答無用で昏睡状態に陥るから、煮るなり焼くなり好きにしてくれって状態になる。

 十中八九、殺される。

『大丈夫です、魔王様。『暗黒の鎧』は発動されています』

 火矢が当たる瞬間。クロノワールの声が聞こえた。

 胸の辺りに当たるはずだった火矢は、俺の体を通過して消滅した。

 消えた原因は、火矢に込められた魔力が無くなったからだろうけど……俺の体をすり抜けたのはなんでだ?

『魔王様』

「お、おう。なんだ?」

『この『暗黒の鎧』なのですが、常時発動される『ファントム』と同じ効果があるようです』

「『ファントム』!?」

 いまだに、俺1人では発動できない魔法名に驚いた。クロノワールの手助けがあれば、なんとか発動はできる。まぁ、それでも、魔力の制御が難しくて、10秒くらいが限度なんだが。

『はい。黒い煙が見えなくなったのは、その副作用が原因かと思われます。魔王様がお1人で『ファントム』を扱えるようになれば、黒い煙が常時見えるようになるかと』

「それじゃあ、今も発動してるんだな?」

 いつもと変わらない服装だし、体が何かに覆われている感じもない。

『はい。私には見えております。恐らく、『ファントム』が使えるかどうかが基準になるみたいですね』

 ……ってことは、今まで失敗だと思ってたとのは、見えなかったからってことかよ。

「ま、まぁいい。これで戦える!」

 むしろ有利になったくらいだ。

 相手の攻撃は、無効化されたようなもんだしな。

「クロノワール! 制御、頼んだぞ!」

『はっ!』

 本当なら、体を明け渡してやりたいところだが、アンリミテッド状態だとそれが出来ない。

「オル! オルは、魔王七つ道具の方を頼んだ!」

『……えぇー』

「え? そこはブーイングじゃなくて、『うん! 分かった!』って返事をするとこだろ?」

 なんで拗ねてるの?

『だって魔王様……さっきからヘタレワールと仲良さそうに話してるんだもん。オルが居るのに、ガン無視だし』

 そんな感じに見えたのか?

「分かった分かった。この戦いが終わったら、食堂でデザート買ってやるからな? 機嫌直してくれよ? な?」

 最近、抵抗がかなり付いてきた『食べ物で誤魔化す』をオルに対して実践する。

『……一番高いやつ、2個だよ?』

 ぐっ!?

「わ、……分かった」

『魔王様! なにボサッとしてるの!? ガンガン攻めるよ!!』

 了解したとたんにテンションが、ハイテンションに切り替わりやがった。

「お、おう……」

 もう、アンリミテッドなんて……懲り懲りだ。

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