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三代目魔王の挑戦  作者: シバトヨ
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久しぶりの国王に挑戦!

 建物的にも人材的にも進化を遂げた魔王城は、俺を疲弊させていった。

 もう、精神的にダメージが絶大だ。魔王の城なのに、魔王にダメージを与えるってどうなの?

 しかもその手を緩めてくれないから質が悪い。

「……それで、バカ王が何でここに居るんだよ?」

「バカ王? 誰の事だい?」

「おめぇだよ!」

 豪華な一人掛けソファーにくつろいでいる勇者領の国王。

『これがバカ王ですか……』

「なんだ、バカ王って国王のことなんだ」

 クロノワールからは呆れ果てた声が。オルからは納得したような感想をそれぞれ漏らす。

 それだけ言うと、オルは一人で城内探検のために部屋を出ていった。クサリさんもそこら中に居るから何の心配もないだろう。……ひどい扱いをしているように感じるけど、事実だからね。

「それにしても……自分の領土は大丈夫なのかよ? 一応国王だろ?」

 そもそも、こんなに自由に出歩いていて大丈夫なのか?

「……君もサタ君みたいなことを言うんだね」

 誰だよ? サタ君って?

 そんな些細な疑問は解消される事も無く、バカ王は応える。

「僕がココに来たのは、君のレベルがどれくらいになったのかを知るためだよ。一応、勇者領の人間としては、魔王領が成長するのは看過できないからね。まぁ建前だけなんだが」

「……今から戦うのか? 1対1で?」

「戦うのは明日の昼ぐらいに。1対1でが基本だけど、君のお姉さんとのコンビなら最初から本気を出してもよさそうだと考えている」

「残念だけど、姉さんがどこに居るのか知らねぇんだよ」

「だろうね。こっちも行方を捜しているところだよ。……間違っても神界に入ってなければいいのだが」

 神界ってのは、陸続きになってるのか? 俺は一度も言った事も無いし、行ったら早速捕まりそうだ。

「ってことで、オルちゃんと組むのも構わないが……個人的には魔王君単体の実力が知りたい。いつもどこでも一緒に居られるとは限らないからね」

「まぁ……そうだな」

「え!? 一緒に居られないの!?」

 部屋の中をウロチョロして居たオルが、タイミングよく戻って来た。この場合は、悪いタイミングだけどな。

「いやいや。オルと俺がいつでも一緒に戦えるわけじゃないからな。例えば……姉さんと一緒に行動することもあるかもしれねぇし」

 姉さんも俺と同じように魔力使いたい放題だから、オルが一緒に居る可能性は考えられる。もちろん、戦う事も。

 それに、戦いを覗いても、必ずオルと一緒に居られるわけじゃないしな。

「そんなに心配しなくても、明日の昼間、ここに居るバカ王と戦うときは1対1でやるってだけだから」

「……うん、それならいいの」

 新・魔王城を探検していたテンションは、すっかり下がってしまったみたいだ。

 シュンとしながら俺の隣にあるソファーに身体をうずめている。

「それじゃあ、今日は僕が魔王城を案内してあげるよ。どうせやる事も無いのだろう?」

「……………………」

 全然、腑に落ちない腹ただしい事を軽々と言われたけど……一番突っ込みたいのは、

「勇者が魔王城を案内するってどうなんだよ……!」

 これだな。


「ココが食堂だ。床は、勇者領にある採掘量1位の山から品質の良い石を取り寄せた」

 そんな解説付きで城の説明を受ける俺とオル。

 食堂を利用する時間帯もメイドたちの間で別れているらしい。そのため、食堂は比較的すいている。それでも、以前の広さなら満員だっただろうけど。

『大陸ではアダモンタイトが獲れるのかぁ』

 頭の中で感心する様に呟くクロノワール。

「かなり有名な石なのか?」

「あぁ。アダモンタイトと言ってね。武器や防具に加工するには、かなりの技量がいる。ただ、床に使うだけなら、中堅の鍛冶師でもできるからね」

 クロノワールに聞いたつもりだったのだが、国王が応えてくれた。

 そういや、クロノワールの紹介をしてないもんな。まぁ、からかわれるだけだろうから言わないけど。

『魔界では、ミスリルやマルリルなどの魔法鉱石の方が取れますからね。初代様の頃は、魔王軍の一部をそういった防具を装備していました』

「へぇー」

 大陸と魔界のうんちくが程よく混ざっているから、なかなかに楽しい解説だ。

「それで、一番初めに食堂に来たわけだが……もうこんな時間だから、お昼でもどうかと思ったわけだ」

「うん。お腹すいたの」

 オルもお腹をさすって空腹をアピールしている。

「丁度いい時間だし、まぁいいんじゃねぇの? 働いている人たちには悪いけど」

 城の拡張がされたためか、かなりの人が働いている。

 以前が少なすぎたってのもあるんだろうけど、それでも50人くらいの人が、この魔王城で働いているらしい。なんだか申し訳ない。

 そんな俺達だけど、真っ白なテーブルを陣取って遠慮なく食事を頂いた。……クサリさんが厨房に居るんじゃないかと疑うくらい美味しい料理が出てくるとは思ってもいなかった。


 美味しい食事を終えた俺達は、屋上へと赴いていた。

「家庭菜園を始められるようにと、姫騎士領から肥料や作物の種を貰ってね。庭でやるのもいいが、屋上ならば場所を獲らないということで、このような土造りにしてある」

 床というよりは、地面って感じだ。作物もそれなりに育ってきているみたいだ。

「こんにちはです! バカ王様!!」

 作物を眺めていると、1人の女の子が元気よく罵倒してきた。思わず笑っちまったよ。

 頭には大きな葉っぱが花びらのように広がっている。四葉のクローバーみたいな頭だ。いかにもドリアードって感じがする。

「やぁ、ドリちゃん。今日も元気がいいね」

「うん! ……そっちの小っちゃい子と頭の悪そうな男の人は誰?」

「頭の悪そうなって……そんな顔に出ているだろうか」

 魔界での勉強はそれなりに頑張ってたんだけどなぁ……?

 精神ダメージを軽く感じて凹む俺に代わり、バカ王が紹介をする。

「3代目魔王様だよ。君の憧れの人でもあるんだろ?」

「えっ!? この人がそうなの!?」

 おっ? 意外と好感触な感じなのか?

「こんなに頭の悪そうな顔の人が、3代目魔王様で大丈夫なの!?」

「ぐはっ!?」

「ま、魔王様!?」

 あまりの精神ダメージに膝をついてしまった。

「まぁまぁ。ドリちゃんは根っこから素直だからね。思った事を口にしちゃうんだよ」

「それって何のフォローにもなってねぇよな……?」

 本心から頭が悪そうって思われてるって事だろ? 全然フォローになってねぇよ。

 反撃しないと、気が収まりそうにねぇな。

「……このバカ王は、どういう風に見えるんだ?」

 俺はドリちゃんと呼ばれた女の子に聞いてみる。相当な酷評を得られるはずだ。

「うんとねぇー。……凛々しくて、何でもできそうで、女の子にモテモテな感じだよ」

「ぐはぁっ!!?」

「ま、魔王様!? ホントに大丈夫!!?」

 ボディーブローをノーガードで喰らったみたいだ。凄い衝撃だった。

「って言うように言われてるの! 本当は、遊び人みたいな間抜けそうな感じなの!!」

「ぐはっ!?」

 すぐさまドリちゃんは、裏事情を暴露した。

「……そんなことをしてたのかよ」

 最低な国王だ。

 少なくとも分かった事は、ドリちゃんに隠し事や秘密を守らせるのは無理そうだって事だな。握られた瞬間、城中に広まっていると思ってもいいだろう。

『彼女は魔界出身ですね』

「そうなのか?」

 いまだに沈んでいる国王に気付かれないように、小声で話をする。隣に居るオルにも聞こえていないだろう。

『はい、大陸では見かけることは無いでしょう。彼女達ドリアードは、基本的に根付いた土地から動こうとしませんから』

「へぇー」

 まるでどこかの粗大ゴミみたいだな。まぁ、ドリちゃんはココにある植物を管理しているから、アレと比較するのは失礼極まりないけど。


 そんな自然体なドリちゃんがいる屋上を後にした俺たちは、5階の重要施設を巡っていた。

「『魔力抽出室』は、旧式のタイプだったからね。新型のモノを導入させてもらったよ」

 俺が初めて魔力なる得体のしれないモノを絞り出した、思い出のある部屋も豪華になっていた。

「この赤いプラグと黒いプラグは残ったままなんだな」

「それは残して置いて欲しいと頼まれてね」

「え? 誰に?」

 クサリさんは魔界に来ていただろうから、そんな注文は無理だろ。

「まぁ、それは内緒にしておくよ。僕が言っても分からないだろうからね」

「ふぅーん。まぁいいや。それより握ってみてもいいのか?」

 俺が期待に満ちた目をしていると、国王は黙ってうなずく。

 俺はそれを許可したとみなして、黒と赤のプラグを思いっきり握る。

『ま、魔王様!? いきなりそんなに飛ばされると、身体に差し支えます!!』

「大丈夫大丈夫」

 最初の頃は楽しんでやっていたからな。……1年前の俺を超えてやるぜ!

「……さすが魔王君だね。化け物じみた魔力量だ」

「うん! さすが魔王様なの!!」

 ガンガン魔力が液体となって蓄えられていく。

 ただ、昔よりもかなりの魔力を流しているつもりだけど、溜まっている量は昔と変わっていない気がする。むしろ、遅くなってる?

 そんな疑問を抱いていると、扉が急に開かれる。

「誰ですか!? ただでさえ飽和状態の魔力を垂れ流しにしているのは!!?」

「く、クサリさん?」

 怒りマークを頭に付けたクサリさんが、文字通り怒鳴り込んで来た。

「やはり魔王様ですか! それよりも、なぜ国王がいながら止めないのですか!?」

「魔王君がどうしてもやりたいと、退け座までしてくるからさ。ここで無下に扱うのは、人間としてどうなんだと思ったからね。仕方なくだよ」

「おい、嘘つくなよ」

『全くだ。たかが魔力くらいで大袈裟なクサリだ』

 あれ? クロノワールは、クサリの方を攻めちゃうの?

 まぁ、聞こえていないだろうから、責められてもいないだろうけど。

「はぁ……貴方なら現在、この城にどれくらいの魔力があるか分かるでしょうに」

「あぁ、知っているとも」

「そんなに凄い事になってるのか?」

 ってか、人が増えたから魔力が減っていないにしても、飽和状態になってるとは思えないんだけど。

 人が増えれば増えた分だけ、エネルギーを使うと思うんだけどなぁ。

「……魔王様が知らないのも無理はありませんね。いいでしょう、現在の魔王城、もとい魔王領がどのようになっているのかを説明いたします」

「う、うん。頼むわ」

 そんな感じで、魔王領がどうなっているのかを説明されるため、3階の教室へと向かった。ってか、教室まであるんだな。魔王城って。


「さて、魔王様」

 クサリさんが、黒板の前に立って俺を指す。

「魔王様が魔界から戻られた時は、城下町へと移動したようですが、その理由は何故だかお分かりになりますでしょうか?」

「えっと……確か、コッチの門が使用できないからって聞いたけど?」

 そう応えると、クサリさんはうなずいた。どうやら正解したようだ。

「そうです。正確には、門の場所が移動されているのと魔力が飽和状態になっており、別の場所に魔力を流しているからです」

「「別の場所に魔力を流す?」」

 俺とオルがハモリながら疑問を口にする。

「はい。門を通じて魔王領全土に魔力を流しております」

 そんな事も出来るのか。……うん?

「だったら、なおさら足りないんじゃねぇのか?」

 俺がいて、定期的に魔力を抽出してたなら話は別かもしれねぇけど。

「……それがですね」

 クサリさんが言い淀む。なかなかに珍しい現象だ。

「世界樹が目覚めたんだよね」

 そんなクサリさんが言い辛そうな内容を国王がペロッと口にした。

「えっ!? 世界樹が!!?」

「その世界樹ってなに?」

 いや、凄そうなのは分かるんだけど、実際どう凄いの? 大きさ? 太さ?

「はぁ……はい。国王の言う通り、世界樹が目を覚ましたのです」

「いやだから、その世界樹ってのはなんなの?」

『世界樹とは、世界を支えるほどの大樹です』

 誰も説明をしてくれないと思っていたら、クロノワールが頭の中で補足説明を入れてくれた。

『ただ、唯一魔力を生成する樹木というのが、他の樹木と異なるところです。推測でしかありませんが、魔王様を除けば、世界で唯一魔力が使いたい放題な木……といったところでしょうか』

 す、すげぇなぁ。そんなのが存在しているのか。

「その世界樹なんですが、……裏山に生えまして」

「へぇー。良い事じゃん」

 これから魔力が使いたい放題……なるほどな。

「……お気づきになられましたか? 魔王様?」

「うん。気づいちゃったよ」

 そりゃあ、枯渇どころか余るよな。

「ってか、どうやって魔力を貰ってるんだ?」

 最悪、それを壊すなりすれば、止まるんじゃないのか?

「ココの地下に、根っこが伸びて居まして……私達の意思とは別にドンドン魔力を流してくるのです」

『だから、あんなに元気なドリアードがいたのか』

 どうやら、見慣れない種族が元気に過ごしていたのは、世界樹のせいらしい。


 クロノワールの説明を簡単に説明しなおすと、この世界のドリアードには複数種類に分かれるらしい。

 ただ、どの種類でも、自分で選んだ土地以外に根を下ろす事はしないらしい。しかも、人間が手を加えたような土地には絶対と言っていいくらい住みつかないとか。

 彼女らドリアードは、魔力を栄養源に生活をしている。こんな人の手の込んだ土地なんかに、魔力が流れ込むなんてのは、考えられないわけだ。おまけに、屋上だし。

 それでもあんなに元気なドリアードが根を下ろしている。魔王に憧れてって言うのは本当だろうけど、魔力の無い場所に根を下ろすほど命を張れるとは思えない。大袈裟な気もするけど。

 しかし、裏に膨大な魔力を秘めた世界樹が生えた。何の因果か分からねぇけど、それがこの城まで伸びてきて、魔力を常時補給している。それこそ、使いきれないくらいだ。

 どうやって根付くのかは知らねぇけど、ドリちゃんが元気に過ごしているのは世界樹が原因だと言う事だ。

 簡単にと言いながら、ダラダラと話しちまったな。


「それで……なんで世界樹がそんなとこに? 1年前は何もなかったんだろ?」

「1年前どころか、初代魔王様がココに城を建てた時もありませんでした」

 ……かなり前から無かったんだな。

「それが生えたんだろ? 何か心当たりってねぇの?」

 それを口にした途端に睨まれた。

 えっ? 俺なの? 心当たり?

「魔王様。魔王様が1年前に裏山に行ってみたいと仰って案したことがありましたよね?」

「お、おう。そうだな。そんな事もあったな……」

「その後、夜中にこっそりと裏山まで向かわれていましたよね?」

 げっ!?

「し、しら、知らないなぁ~。何の事か分からないなぁ~」

 まさか気付かれてたとは。

「あの時は私達メイドの為に身体を鍛えられているのかと、感動すら覚えました。本当に頼もしい魔王様が来られたと」

「クサリさん……」

 思わず感動に泣きそうになった。

 そんな涙も、鋭い刃を思わせる瞳に引っ込んでしまった。

「……まさか夜中に楽しんだ魔力を処分されているとは思いませんでした」

「……もしかして、気付いてた?」

 はぁーと今日一番大きな溜め息をつくクサリさん。

「まさか、夜中に魔力抽出をして、その分を気付かれないよう裏山に流しているとは思いませんでした」

「なるほど。それが原因で世界樹が生えたんだね。……実に魔王君らしい話だね」

 国王から生暖かい目で見られる。正直いたたまれない。

『さすが魔王様です。世界樹まで目を覚まさせるとは……!』

 それ、褒めてるのか? (けな)されているように聞こえるぞ?

「世界樹が生えたのは、不自然に蓄えられた魔力が原因です。つまり、魔王様が1年前に垂れ流しにした魔力が原因で生え、1年と言う時間をかけて成長したのです。……一体どれだけの量をあの裏山に投棄したのですか?」

「……ボトル100本くらい? かな?」

「まったく、あんな小さなボト「いや、一番デカい奴」ル……はぁー」

 溜め息の大きさが更新された瞬間だった。


 その後。クサリさんに飽きられながら、世界樹がどうやって生えるのかとか、どういう方法で魔王領全土に魔力を送っているのかなどを説明された。

 とにかく言えることは、……もう迂闊に魔力を撒き散らさないようにしようっと思った事だ。

 やっぱり、魔力と言えど、物を捨てるには細心の注意を払うべきだな。うん。




 そして、翌日。

 朝はゆっくりと食事を済ませ、今は11時くらい。

「よし。それじゃあ、力試しをさせて貰うよ」

「望むところだ。修行の成果を見せてやるぜ!」


 国王との戦いに向けて、体中を魔力で満たしていた。

 ファンタジー系の物語では大概出てきますよね? 世界樹って。

 ぶっちゃけ、どんな木なんですかね? 作者的には、気になる木です。

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