二人の聖域
林とは言い難い木々の間を、一組の男女が歩いていた。長らく歩いていたのだろうか、二人とも服の端が破れており、男性に手を引かれて歩く女性の顔には疲れが見えている。
「レオーネ、本当にここで合っているの?」
「もちろんだよ、クラウディア。」
終わりの見えない道にクラウディアが不安になりレオーネに尋ねると、レオーネは振り返り笑顔で答えた。
「もう少しで着くから頑張って。」
レオーネはクラウディアを励ましながらその疲れを見て、繋いでいた手を離して支えるように腰に回す。
クラウディアはそんなレオーネの言葉を信じたのか、小さく頷くと先ほどより少しだけではあるが足に力をいれて歩き始めた。
「ここだ。」
「綺麗…。」
どこまでも続いているかのように錯覚するほど広がっている花畑を見て、疲れるまで歩いた以上の価値があるとクラウディアは思った。
「俺も見つけた時は暫く呆然としたよ。どうやら自生しているらしく、人を見かけたことはない。」
「信じられないわ。」
「そうだよな。」
目の前の風景が自然のものだということに驚くクラウディアに、レオーネは頷く。
「ここは俺達だけの場所だ。」
「まるで聖域みたいね。……最期にここに連れてきてくれて有難う、レオーネ。」
「こちらこそ、ここまでついてきてくれて有難う、クラウディア。」
二人は互いに見つめあって微笑み、花畑の中へ入って行った。
「もう少しで時間よ、レオーネ。」
「もうそんな時間か。」
まるで待ち合わせの時間が来たかのように世界に終りの時間が来ようとしていることを話す二人。クラウディアはレオーネの頭に花で作った冠を乗せながら言葉を紡ぐ。
「最期まで貴方と一緒に居られて嬉しいわ。」
「俺もだ。」
二人は花畑の中心に横になりながら終末を待った。
最後までお読みいただき、誠に有難うございます。
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作者にはまともな話は書けません。