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第66話 対 混沌 戦 Ⅴ

「4つ目の大罪……"エターニティ・グリーティ"」


これは"不滅の強欲"。


倒れている混沌の全身に赤い膜が張られた。


「消えない強欲は、幾度も立ち塞がる障害へ向かう」


「い、痛みが引いていく………?」


不滅の強欲は、術を受けた者のあらゆる傷を治し、全ての痛みを感じる前に癒す術。


効果は術を受けた者が、立ち塞がる障害へ立ち向かう限り続くという強力な回復術だ。


「回復技か……悪いな!! 癒してもらってよぉ!!」


「礼を言われる事はしていない。この技も大罪の一つなんだからよ」


「だが、回復しかしてねぇぜ!? 他に何があると!?」


「ふっ……さぁな」


響介は彼の言動を鼻で笑う。


"不滅の強欲"は、立ち向かい続ける限り回復する技。


だが、裏があった。


立ち向かう事をやめた場合に裏の効果は発動する。


「いつまで、その余裕が続くか楽しみだ」


「そいつはこっちの台詞だぁ!! 回復させた事、後悔させてやるぜ!!」


混沌は裏など知るわけもなく、響介へと向かう。


響介は攻撃を全て紙一重で避けて、数万にも及ぶ突きを混沌にワザと掠らせる。


だが、その突きによる痛みは"不滅の強欲"により混沌が感じる前に癒された。


混沌は痛みを感じずに鎌を振り回していて響介を攻める。


「どうした!? お前の攻撃、痛くも痒くもないぞ!!」


「そうか……なら痛みをくれてやるよ」


響介は一旦、距離を置いた。


そして技を繰り出す。


「2つ目の負の衝動……"シヴァ・メロディ"」


これは"戦慄の旋律"


響介が手を叩くと、ハーブや鍵盤楽器、フルート等の楽器を持つ女神が数人現れた。


「お前を戦慄させてやる………これから奏でる旋律でな」


「音楽なんかじゃ戦慄なんて出来ねぇなぁ!!」


「……ならば聞け」


響介がタクトを振るように手を動かした。


それと同時に女神達は曲を奏でる。


♪〜♪〜♪〜♪〜


女神達は酷く暗くて、気分が沈んでいく曲を奏でていく。


ただ聞くだけなら問題はないが、この技は負の衝動を扱っている。


しっかりとした効果があるのだ。


「うがぁぁぁあ!?」


突然、混沌は耳を塞いでうずくまった。


彼は小刻みに震えている。


奏でられる旋律を嫌い、恐怖しているのだろう。


「戦慄するだろう? この旋律はお前のトラウマを脳内に呼び起こすのさ」


「ぐぅっ……や、やめてくれ!! もう思い出したくない!!」


「立ち向かう事をやめるのか? 奏でられる旋律に負けて」


「立ち向かえないだろ!! こんな事されたら!!」


その返答を聞いて、響介は手の動きを止める。


"戦慄の旋律"も止まり、女神達は消えていった。


「……精神の次は肉体だ。"不滅の強欲"……発動」


響介がそう言い放つと、混沌の体から血飛沫が上がった。


全て響介の突きを掠らせた場所から上がっている。


「がぁっ!? な、なんだこの痛みはぁ!!」


響介が混沌に与えた"不滅の強欲"の裏の効果が発動したのだ。


その効果とは……"術を受けた者が立ち向かうのをやめた時、癒した全ての痛みがその者を一度に襲う"という効果。


つまり、立ち向かう事をやめた場合……それまでに癒した傷の痛みが同時に術を受けた者を襲うわけである。


混沌はその効果を受け、突きによるダメージを同時に喰らったのだ。


あまりの痛みに混沌は倒れ込む。


「あと3つの大罪、2つの負の衝動か……まだまだ苦しんで貰うからな?」


「も、もう嫌だぁ!! 苦しみたくねぇ!!」


突き付けられた宣言に混沌は響介から逃げるように這っていく。


「悪いが一つでも受けた時点で棄権は不可能だ。強制的に受けて貰う」


だが、怒りに満ちた響介が逃がす訳もない。


武器を構え、混沌に狙いを合わせる。


「3つ目の負の衝動……"グリーフ・アイソレイション"」


これは"悲嘆の孤立"。


「強き悲嘆は外界との接点を断ち、心を閉ざす」


混沌と響介の周りに壁が現れていく。


壁の高さは2メートルを軽く越すだろう。


その壁が何十にも重なり、壁を分厚くしていく。


「あぁ!! 逃げ場が!!」


「俺とお前の持つ外界との接点を断たせて貰った」


そして完成した。


巨大な壁を使い、作り上げた響介と混沌だけが存在する孤立空間が。


「これでお前は逃げられない。……苦しむしかないのさ」


「そ……そんな……こんなところで、死ぬのか……なんで……どうして……」


混沌の瞳からは黒い涙が流れている。


今まで自らが行った行為を後悔し、悲嘆しているのだろう。


これが"悲嘆の孤立"の効果である。


ここに閉じ込められた者は悲嘆の感情が抑えられなくなり、悲しみに沈むのだ。


他の感情が悲嘆を超えない限りこの効果は続く。


「……どうした? 懺悔でもするのか?」


「くそっ……お前がいなければ、俺は……俺はぁぁぁあ!!」


混沌は鎌を構えて、痛む体を酷使し、響介へ飛び掛かった。


混沌の怒りが悲嘆を超したのだろう。


向かってくる混沌に向け、響介は無言で武器を構えた。


「………5つ目の大罪"レイジ・リストリク"」


これは"憤怒の拘束"。


「荒れ狂う怒りはその者の心を縛りつける鎖となる」


鎖が地面より現れて、混沌へ巻き付く。


強く締め付けるかと思えば、軽く巻き付いただけで鎖は地面から抜けて消えてしまう。


「覚悟ぉぉぉぉお!!」


「……届かない」


「ぐぅっ!?」


混沌は鎌を振り上げた状態で動きが止まった。


彼の体が細かく震えている。


どうやら止めたわけでは無く、いきなり体が動かなくなったようだ。


「お、おぉ……!! う、動けぇ!!」


「無駄だ。"憤怒の拘束"は気持ちが荒れ狂うほどに動きを封じる技だ。……荒れ狂う限りお前は動けない」


「うぉぉぉぉお!!」


混沌は全力を以って、縛り付ける鎖を断ち切ろうとする。


だが、その行為をするために混沌は気持ちを高ぶらせるため、"憤怒の拘束"で動きがさらに封じられる。


「残るは『暴食』『嫉妬』の大罪と『絶望』の負の衝動の3つか」


「……お前みたいな力があればこんな鎖など……」


「……なら次は『嫉妬』でいこうか」


響介はそう言うと、"憤怒の拘束"を解除するのに必死な混沌に槍を向けた。


「6つ目の大罪……"サルトリィ・ジェラシー"」


これは"灼熱の嫉妬"。


「心で燃え盛る嫉妬はその体をも焼き尽くす」


その言葉と同時に混沌の体から炎が上がる。


「うぁぁぁぁあ!! 体が焼ける!! 熱い!!」


この技の効果……それは嫉妬の炎で体を焼くのだ。


体が焼かれる痛みが動けない混沌を襲う。


だが、この炎では服が燃えたり、火傷をする事は無い。


そうしないと、相手を長く苦しめる事が出来ないのだ。


「『焼く』と『妬く』を合わせてみたのさ」


「け、消してくれ!! 焼け死ぬぅ!!」


「その炎はお前自身の嫉妬だから俺にはどうにも出来ない」


「ちくしょう!! お前のせいで全てが台なしだよ!!」


「その気持ちも嫉妬。俺の力量を妬んでる発言だな」


混沌の体を焼く炎が、火力を増した。


「ぐぁぁぁぁあ!!」


「随分と燃え盛る。どれだけ俺を妬むんだ?」


「も、もう殺してくれぇ!! 苦しみたくない!!」


「……もう終盤だ。……すぐに終わらせてやるよ」


響介は燃え盛る混沌に武器を向けた。


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