第53話 終わりの始まり?
闇から引っ張られる中、聞き覚えのある声が聞こえる。
「……!! 響……ん!! 響ちゃん!!」
(…………この声は……柚希ねぇ?)
目を開くとそこには心配そうにしている柚希ねぇがいた。
「……あぁ、柚希……ねぇ……か……」
「よかった………生きてるんだね?」
「人間だったら即死だったかな……? いててて……」
「まだ無理しちゃダメ。刺し傷、相当深いんだから」
「あぁ……俺の体を貫けたからな。強化型治癒能力があってよかった……」
俺は何とか体を起こして、壁に寄り掛かった。
「ねぇ、水姫とウィルは?」
「………俺を刺して、どこかへ行った」
「えぇ!? あの二人が!?」
「しかし、目に光が無かった事を考えると操られている可能性がある……」
「……もしかして"退魔隠陽連合軍"が響ちゃんを狙って……?」
「多分な」
「許せないわね……奴ら」
「あぁ……」
俺はゆっくりと立ち上がり、壁に寄り掛かりながら歩く。
「響ちゃん? どこへ行くつもり?」
「奴らを捜しだして………水姫とウィルを取り返す」
「まだ傷も癒えてないし、今の響ちゃんじゃあいつらには勝てないのに!?」
「瞬転を使えばなんとか……戦わずに助け出せる……」
「催眠をどう解くつもり?」
「回収してから…………考えるさ」
「やめなさい!! 万全を期してからでも遅くないわ!!」
「行かなきゃ……ならねぇ………」
「バカッ!! 死にに行くつもりなの!?」
柚希ねぇは涙を浮かべながら俺を怒鳴った。
本気で俺の事を心配しているようだ。
「っ!? だが……俺は……二人を……」
「奴らは二人を殺したりしないわ。あれだけ強い二人を手中に納めたなら幻想郷を滅ぼす時に使うでしょう」
「………」
「それに奴らが動き出すのは大体3日後……それまでに万全は期せるでしょ?」
「……そうだな。……すまないな、柚希ねぇ。俺、焦っていたのかもしれない……」
「わかってくれればいいのよ。焦る気持ちはわからないけど、冷静にならないとね」
「あぁ」
俺は涙を拭いた柚希ねぇと一緒に自室へ入る。
「体はなんとかなるにしても……実力はな……」
「あれよね? 修業すればいいんじゃないかしら?」
「しかし期間が短すぎる………一週間はないと……」
「響ちゃんならすぐ出来るはず。覚えるの早いし」
「……2日か?」
「正直、2日もいらないかもね。気の使い方とかなら2時間で行けると思うよ」
「とりあえず……やるか」
「頑張って!!」
「柚希ねぇもついて来てくれ。転移に使う力を抑えたい」
「は〜い。どこへ行くの?」
「紅の館……紅魔館。その次は妖怪の山。最後は天界だな」
「…………見つけた。じゃあ行こう?」
俺は柚希ねぇと手を繋ぐ。
「あぁ……これが決戦前最後の修業だ」
ワームホールへ飛び込み、修業の地へと飛んだ。
紅魔館、妖怪の山、天界へと飛んで修業をした。
「私なんかでよかったんでしょうか………」
最初は紅魔館の門番である「紅 美鈴」。
彼女は格闘家で気を扱う力を持つ者だ。
気の集め方や放出の仕方、格闘術を教わった。
「私の教えた力、決戦に役立つといいわね」
次に図書館の主「パチュリーノーレッジ」。
彼女からは属性を持った術の使い方を学んだ。
魔法が主なパチュリーに頼み込み、俺は魔法に似た技を図書館の中から探してもらい、習得した。
「決戦が終わったら取材に付き合って下さいね!!」
その次は妖怪の山で新聞記者をやっている「射命丸 文」。
彼女からは風の扱い方や、一瞬で加速する技を教えてもらった。
これは取材に付き合わないといけないな。
「私から技を教えてもらえるなんて光栄な事よ!! 感謝なさい!!」
次は天界に住む天人「比那名居天子」。
彼女からは大地を扱う技を教えてもらった。
使い方を間違えると大変な事になりそうだ。
「決戦、頑張って下さい。私はこれから起こりうる災いを妖怪達に伝えてきますね」
最後は災いを告げる竜宮の使い「永江依玖」。
彼女からは雷の使い方と空気の読み方を学んだ。
災いが幻想郷中に伝われば、きっと協力してくれる妖怪が来てくれるかもしれない。
この内容を2日でこなした。
今、俺と柚希ねぇは自室で決戦前の休息をしている。
「なんとか……間に合ったかな……」
「出来るかどうかは実戦の中でね」
「あぁ」
怒涛の修業メニューは学んだ事を実践する時間が本当に僅かだった。
柚希ねぇなら実践は実戦の中で……とか言いそうだな。
「今、失礼な事考えなかった?」
「気のせいだ」
「実践は実戦の中で……とか考えてたでしょ?」
「何故わかったし」
「さて、なんででしょー」
「まぁいいか……」
俺は精神を集中させて星穿の神槍を呼び出す。
修業の影響か、神槍はボロボロになっていた。
「響ちゃん。一回、星穿の神槍貸して?」
「ん? 構わないが早くしてくれよ?」
「わかってるよ」
柚希ねぇに神槍を渡した。
すると柚希ねぇは槍に力を込め始める。
その行為はすぐ終わり、槍を返してくれた。
「何をしたんだ?」
「ひ・み・つ……だよ?」
こんな時でも柚希ねぇは相変わらずだな。
「とりあえず奴らの居場所を突き止めないと……」
「もうわかってるわ」
「……いつの間に調べてあるんだ?」
「響ちゃんが修業してる間にね。使いを飛ばしてたの」
「……で、場所は?」
「………私の山の頂上よ」
「柚希ねぇの山……禁じられた山か。……行こう、柚希ねぇ。……最終決戦とな!!」
「うん!!」
俺と柚希ねぇは立ち上がり、空間転移で禁じられた山へと飛んだ。
今回は短め。
次回から最終決戦開始です!!