第51話 修業と衝撃的事態
平和な朝がやってきた。
「う~ん!! ……フカフカの布団はやっぱり気持ちいいぜ………」
俺は起きているが、フカフカの布団に潜っている。
まぁ平和だし、二度寝するに限る。
しかし平和な朝を乱す事があった。
「おはようございます、主。お客様がいらっしゃっちゃいますですよ?」
「………おぉ、わかった。客間に通しておいてくれ。着替えてから行く」
「かしこまりました」
俺は渋々布団から出て着替え、客間に向かった。
「お待たせ。………おっと失礼」
そこに居たのは命蓮寺在住の尼さんである聖 白蓮さんが居た。
「いえ、普段通りで構いませんよ」
「すまないな。聖さん」
俺は聖さんと向き合って座った。
「ところで何の用なんですか?」
「響介さんに少しお願いがあって来ました」
聖さんの願いって何なんだろうな………。
「ぬえが呼んだ"二ツ岩マミゾウ"と会って欲しいのです」
「マミゾウ? 誰ですかそれは?」
「佐渡という場所から来た大妖怪です。何でも復活した妖怪撲滅を目指す人に対抗する為に呼ばれたそうなんですが……」
佐渡って結構な位置にあるよなぁ………。
海の上だもんな。
でも復活して妖怪撲滅を目指す人って誰だ?
………あぁ、豊聡耳神子か。
「わかりました。そのマミゾウとやらに会ってきます」
「ありがとうございます。私はこれで失礼しますね」
聖さんは帰っていった。
「まぁ支度してから佐渡の大妖怪さんに会いに行きますか。一体どんな奴なんだろうな………」
俺は出かける準備を始めた。
朝飯食べて、水浴びて、スッキリした。
出かける準備は万端。
「それじゃ水姫。留守番をよろしくな」
「かしこまりました。早めに帰ってきて下さい」
「あぁ、善処する」
俺は玄関を出て命蓮寺に瞬間移動した。
因みにウィルは寝ていたから放置しておいた。
「さてと着いたな」
俺は命蓮寺に到着した。
「マミゾウとやらを探すとするかな?」
俺は境内を歩いてマミゾウを探し始めた。
「……おやおや、面白い男だねぇ」
向こうから狸で眼鏡をかけた人がやってきた。
「とりあえず名前を名乗って貰いたいな。マミゾウさん」
「これは失礼。儂は佐渡の二ツ岩、皆はマミゾウって呼ぶよ………ってお前さん。先に言っては意味ないじゃないか」
俺はうっかり自己紹介前に相手の名前を言ってしまった。
「名前も聞いたから俺の名前も名乗らせて貰おう。俺の名は風戸 響介。色々と力を持つ化け物だ」
「ほぅ、ところで妖怪を滅ぼさんとする者が現れて妖怪達が震え上がっているそうじゃないか」
予想通りの用件だな。
聖さんから聞いてたし、間違うはずが無い。
「ん〜。やっぱりそれか」
「それで儂がぬえに呼ばれた訳なんじゃが………そやつはどこにおるのか?」
そうか、倒した事を知らないのか。
「俺が倒したよ。何かイラッと来たから」
「えっ? それじゃあ儂は何で海を渡って来たんかの?」
「理由なんて気にしないで良いさ。そんな事よりあんたは強いのか?」
「まぁまぁ強いかの」
よし、決めた。
「……強くなりたいんだ。俺を鍛える為に戦ってくれ」
「……ふむ、何か事情がありそうだが今は聞かぬ。覚悟すると良い!!」
マミゾウとの弾幕ごっこが始まった。
「壱番勝負『霊長化弾幕変化』!!」
まずマミゾウが周りに弾を展開。
その弾が小人の姿になり弾を放つ。
それを何回も繰り返すのだ。
「やっぱり狸は化かすのか?」
「化かすのが本職だからの」
「へぇ……。やっぱり化かすんだな」
俺は会話しながらスペルを構えて唱える。
「念砲『サイキック・インパクト・ブラスター』!!」
巨大なレーザーがマミゾウに直撃した。
「いたたた………お前さんはもう少し力加減をせんとあかんぞ?」
マミゾウのスペルがあっさり終わった。
恐らくどうスペルを攻略するか見ているようだ。
「戦いに手加減なんて無いからガンガン行くよ?」
「儂の話を聞いてないようだね? まぁ次行くぞ?」
「弐番勝負『肉食化弾幕変化』!!」
今度は弾が狼の姿になり左右から襲ってくるスペルのようだ。
まずは回避に徹する。
そして技を放って損傷を与える。
「とりあえず威力が高い技で行こうか。"青龍鱗"!!」
青龍鱗はマミゾウに当たり、結構な損傷を与えた。
しかしマミゾウは中々やられない訳で、攻撃がどんどん飛んでくる。
「ここは弾速重視かな? 充填砲!!」
俺は力を溜めて弾を放った。
放った弾はマミゾウに当たり、弾き飛ばした。
そしてスペルが止まった。
「参番勝負『猛羽化弾幕変化』!!」
マミゾウは間髪おかずにまたスペルを唱えた。
今度は鳥形の弾が飛んでくる。
「むぅ………難しいな。とりあえず蹴散らしてスペルを止めないと………」
俺はスペルを取り出した。
「移山『大山重圧撃』」
頭上に印を描き、力を送り込むと巨大な岩が出現した。
俺はそれをマミゾウにぶつけにいく。
その攻撃は当たり、マミゾウは宙を舞った。
「痛たたた………おぬしの一発はかなり重いの……それでいて隙が少ない」
マミゾウは痛そうな顔をしつつもスペルを続ける。
「なら………これでどうだぁ!! "充填砲"!!」
また充填砲を放った。
「つぅっ!!」
マミゾウのスペルが終わる。
しかし休む暇は無くスペルが飛んでくる。
「四番勝負『両生化弾幕変化』!!」
マミゾウの周りに蛙が4匹現れた。
そして4→8→12匹になった時、最初の4匹が破裂した。
しかもその破裂は弾を撒き散らしている。
「やっぱり簡単には行かないか………」
俺はそう呟きながら弾を避ける。
攻めを一旦やめてグレイズばかりしているのが現状だ。
だが影でスペルを構える準備をしている。
「避けてばかりでは儂を倒せんよ?」
「わかってるって」
「念砲『サイキック・インパクト・ブラスター』!!」
思いっきり放った。
もちろんそのサイキック・インパクト・ブラスターはマミゾウに直撃する。
普通ならもう少し弱く撃つんだが、相手は大妖怪。
威力は通常の2倍で撃っている。
「うわぁぁ!!」
強引過ぎるがスペルを終わらせる。
マミゾウ………意外と強いかも?
「やっぱり中々やるのぅ」
「まぁね。でも正直疲れてきた………」
疲れてる理由は簡単。
色々技を撃ち過ぎたからだ。
まぁ異変の時は加減してても倒せたから何とか消費は押さえられた。
それに神化や覚醒を使ったから何とかなったからね。
でも今回は違う。
月は出ていないから覚醒は無理、命蓮寺で神化したらなんか怖い。
しかも手加減したらマミゾウは倒せない。
だから【力の回復出来ない+手加減出来ない=消耗が激しい】という結果になる。
まだまだマミゾウはスペルを使って来そうだし、家帰るまで持ってくれると良いな…………俺の体力。
そしてマミゾウは新たなスペルを構えた。
「伍番勝負『鳥獣戯画』!!」
俺は浮くのを諦めて地面に立ち、避ける構えをする。
そしてマミゾウのスペルが発動した。
左右から狼弾、前からは鳥弾が迫ってくる。
そしてマミゾウの周りには蛙弾が現れては破裂していく。
「むぅ………見切れるか?」
そう呟きながらも俺は、ステップを踏みながらうまく避けていく。
もちろん損傷を与えながらだ。
力の消費を抑えながらだから普段より時間がかかっている。
「出来るだけ早く終わらせたいんだがなぁ………」
「それなら効率の良い攻撃方法を見つけるんじゃな。実戦の中でしか掴めないものもあるからのぅ」
俺は効率の良い攻撃方法を考えながら避け続けた。
「どうじゃ? 良い攻撃方法は見つかったか?」
「あと少し………これでいけるかなぁ? "爆雷符"」
これは力を込めておいた札を投げ、敵の近くで雷を大量に発生させる技だ。
音はかなりキツイ……とりあえず防音結界を展開してから………っと。
ヒュン
俺は3枚投げた。
その3枚はマミゾウの周りで起動し、雷を大量に落とす。
ドォォォォォン!!
え?
何で爆が付くかって?
それはな………気分だ。
音はかなりうるさかったがなんとかスペルは終わらせた。
「やっぱり余り効率は良く無いなぁ………近距離戦なら良いんだが………流石に無謀か」
「まぁ地道に作れば良いと儂は思うぞ。それじゃ次行くから覚悟するんじゃな」
「六番勝負『狸の化け学校』!!」
次は人弾が横一列になって迫ってきた。
しかも後からドンドンやってくるし…………
「合間を縫うしか無いのか………面倒だな」
俺は力を溜めていく。
そして槍から細くて速くて威力の高い弾を放った。
狙撃を思い出してくれればいいと思う。
「くうっ!?」
うまく当たった。
「はぁ………はぁ………やっぱり燃費が悪いなぁ………」
「余り無理してはならんよ」
どうしようかな……?
まだスペルはあるみたいだし………。
「仕方ない。少しリミッターを解除するか」
俺は力を溜める構えに入る。
そして俺の中にある念のリミッターを少し解除した。
「はぁぁぁぁぁ………さぁ、やろうか」
「ほぅ。力を増したようじゃな」
マミゾウは恐れる様子は無く、スペルを構えた。
「七番勝負『野生の離島』!!」
今度は大量の鳥弾が左から迫ってきた。
「それにしても量多過ぎだろ………危なっ!?」
鳥弾だけかと思ったら狼弾もやって来た。
数は鳥弾とたいして変わらないの量だ。
「こいつはヤバいなぁ………まぁ気楽に行こうか……充填砲!!」
俺は念の力だけで撃てるスペルを放つ。
その攻撃はマミゾウに当たった。
しかしまだ威力が足りない。
「もう少し力を増さないと駄目かな?」
「まだ気を抜くで無い!! スペルは終わってはおらんぞ!!」
マミゾウに喝を入れられた。
おっと、そうだった。
とりあえず………力を余り消費しない攻撃方法を見つけないとな……。
「だが、今はスペルを終わらせる!! 充填砲!!」
その弾は以前より弾速が上がってマミゾウに当たる。
そしてスペルが終わった。
「痛たた………お主、その技好きじゃのぅ。しかし同じ技を使ってばかりでは駄目じゃ」
「今のはとりあえずスペルを終わらせる為に使ったんだよ。まぁ次から別の技を使うつもりだ」
俺は槍を構えた。
そしてマミゾウがスペルを発動させる。
「変化『まぬけ巫女の偽調伏』!!」
変化? 巫女? ………まさか!?
「それじゃ行くぞ?」
マミゾウが霊夢に化けて弾幕が放ってくる。
マミゾウは移動しながはお札を投げつつ、蛙弾を置いていく。
そして蛙弾はしばらくしたら破裂して4枚の札を撒き散らした。
「とりあえずどうにかして仕留めないとな」
「念砲『サイキック・インパクト・ブラスター』!!」
俺は範囲の広くて高出力なスペルを使った。
高出力という事は力の消耗は激しい。
しかし移動ばかりしている偽霊夢に普通の技では避けられてしまう。
だから高範囲に撃てるこの技を選んだ。
それに俺の予想だがマミゾウの残りスペルは今のスペルを含めて3枚。
そのうち1枚は耐久スペルのはずだ。
耐久スペルは弾幕を撃たないから力を温存・回復が出来る。
という事は実質、力を消耗するのは2枚。
だからここは素早く決めて回復したい為にスペルを使ったのだ。
ドォォォォォォン!!
範囲が広いから当たったのだが………スペルが終わっていない。
「やっぱり威力が足りないのか?」
「お主は自らの力に制限をかけておるからのぅ………あくまで儂の見た感じだがのう」
(見破られているのか………まぁ今はそんな事より決めないと!!)
俺は一撃を撃ち込む為に構えた。
「貫け!! "ブレイクショット"!!」
とりあえず弾速が高い弾を放つ。
弾速が速うと自然と威力があがるから中々の威力がある。
「痛っ!!」
その弾はマミゾウに当たった。
スペル終了。
マミゾウの変化も解ける。
「だ、大丈夫か?」
「まぁ大丈夫じゃ、これでもまだまだ若いからのぅ」
どうやらマミゾウの喋り方は癖らしい。
うん、なら無意識な手加減が外れるな。
俺は構えてマミゾウを見る。
「『マミゾウ化弾幕十変化』!!」
(来た!!耐久スペル来た!!これで回復出来る!!)
俺はそう心の中で喜んだ。
そしてスペルが始まる。
まずは二つの弾がマミゾウになり、本体のマミゾウは姿を消した。
「うまくステップで避けれるかな?」
まず第1波。ゆっくりと狼弾が左右から横一列で迫ってくる。
これはゆっくりだから避けれた。
そして次の第2波も避ける。
そしてしばらくしてから弾が止まる。
二人のマミゾウが二つ弾を出して、またマミゾウに化ける。
陣形は俺を取り囲む長方形。
そしてまた弾が飛んでくる。
角に新しく現れた4人のマミゾウは鳥弾を放ってきた。
なんとかステップで避けれているが、少しキツイ。
(まだ終わらないのかな?)
とか思っていたら弾が止まった。
また角じゃない左右のマミゾウが二つずつ弾を出し、マミゾウを増やす。
合計10人………これを乗り越えればスペルは終わりのようだ。
角マミゾウより内側に出されたマミゾウは人弾で行動を制限してくる感じに弾を撃っている。
狼弾より短いが平行だ。
俺は頑張って回避と回復に専念した。
ちなみに避け続いて一つ気がついた事がある。
(人弾が徐々に迫って来てる?)
大体の人は良く見ても見なくても分かるのだが、俺は横への動きが制限されてきて気が付いた。
縦しか動けないので地味に辛い。
(早く終わってくれぇ!!)
俺は心の中で思いっきり叫んだ。
その時、偶然に耐久スペルが終わった。
「よく耐えたのぅ」
すべての偽マミゾウが消えて本物のマミゾウが戻ってきた。
あぁ、なんかマミゾウって連呼し過ぎた………色んな意味で恐ろしいスペルだな………。
「まぁ、最後はやばかったけどな」
「次が最後じゃ。耐えきってみせぃ!!」
マミゾウはスペルを構えた。
「狢符『満月のポンポコリン』!!」
マミゾウが円形に弾を放つ。
マミゾウを中心に赤と黄色、二種類の弾が広がった。
そして黄色の弾が蛙弾になり、その場で止まる。
赤い弾はそのまま広がった。
そして第2波。
同じ円形の弾幕が広がった時、蛙弾が破裂した。
しかし、弾は一匹から一つしか出ない。
しかも全部俺狙い。
そしてその後ろから赤い弾幕が飛んでくるが、あっさり避けた。
「簡単やら難しいやら………まぁ久々にあれをやろうかな?」
俺はひっそりとスペルを持つ。
「撃符『究極!ゲシュペンストキック』」
弾を避けて、上空に舞い上がる。
そしてこのスペルの特徴の行為をした。
「究ぅぅ極!! ゲシュペンストォォォォ!!」
そう、叫びが無ければ始まらない!!
「キィィィィィィック!!」
今、マミゾウの周りには入る隙間のカケラもない円形の弾幕がある。
しかし弾幕なんてこのスペルに関係無い!!
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
何故なら、弾幕を脚で消していくからだ、
そして弾幕を貫き………
ドガァッ!!
「つぅっ!! ぬわぁぁぁぁ!!」
マミゾウも貫く。
「これが、究極の蹴りだ」
まぁ、決めセリフも決まってスッキリした。
そしてマミゾウの元へ駆け寄る。
「流石じゃな。この儂が負けるとは………」
「いや、耐久スペルが無かったら負けてたさ」
うん。体力が回復できてなかったら負けてた。
「よいしょっと。また会おうの、響介」
「あぁ、またよろしく頼む。じゃあな」
俺は急いで家に飛んで帰った。
飛びながら俺は考えごとをする。
「あとで、水姫やウィルに新しくスペルを渡してやろうかな? ………っと早く帰らないとな」
俺はさらに加速した。
俺は家に帰ってきて扉を開けた。
「ただいま」
しかし反応が無くて誰もいないのだろう。
「買い物かな?」
俺が家の中に上がろうとした時、
ドスッ!!
「………なっ? どういう………事だ?」
刀が俺の体を貫通した。
しかも刀が水姫の使う刀である双牙……これは水姫が俺を刺した事を示す。
俺は膝から崩れ落ちてしまう。
「さようなら、主。いえ、風戸 響介」
「もう会う事は無いでしょう。さらばです。響介様」
俺の後ろには水姫とウィル。
「ちくしょうめ…………」
しかし俺は崩れ落ちながらも水姫達の瞳を見た。
正気では無く、何者かに操られている虚ろな目。
俺はそれだけを確認し、とても深い眠りについた。