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第44話 真夜中の一騎打ち

俺は柚希ねぇと一緒に斬り倒された木の幹に座る。


柚希ねぇにさっきの弱々しさは無く、普段通りの様子に戻った。


そして深呼吸してから柚希ねぇは話し始める。


「ズバッと事実を言うけど、さっきの私が戦っていた響ちゃんの姿は本来の姿なの」


「そんな事、記憶に無いんだが……」


「記憶を弄ってあるからね」


「それは酷い」


「だって記憶にあると"戻せ"って連呼するでしょ?」


「そりゃそうだ」


その感覚は当たり前だと思うんだが。


「で、なんであんな事してたんだ?」


「少し昔話になるけどさ、響ちゃんが私の守る山に降り立った時の事を覚えてる?」


「俺が向こう側から転移してきた時の事か」


「そうそう。で、私達は戦ったのよね」


「あの時は完敗だったよな………攻撃は見切られて、奇策を練っても返されて……」


俺は昔、戦った時の事を思い返す。


あの時、柚希ねぇに触れる事さえ出来なかった。


そして柚希ねぇの攻撃は全て直撃。


俺は勝てない戦いをしていたのだ。


「でもさ。あの時の戦いの最中で私は一つ気がついた事があるの」


「……それは?」


「戦った時の響ちゃんは、明らかに様子がおかしかった」


「……どういう事だ?」


「体は既に傷だらけ。目は虚ろ。フラフラしながら戦ってたのよ」


「俺、そんなに傷付いてたのか? 俺の記憶だと無傷だったんだが……」


「簡単に言うと貴方は幻覚か何かを見せられ、体の状態を偽られて、戦ってた……って事になるわね」


「まさか……そんな事があったなんて。………ってか、最初と話が違うと思うんだが……」


「焦らない焦らない。話はこれからなんだから………。で、私は響ちゃんを拉致……もとい保護した夜に少し響ちゃんの体とかを弄ったの」


「今、思い切り拉致って言ったよな?」


ツッコむもスルーされて柚希ねぇは話を続ける。


「響ちゃんの姿を金髪混じりの青髪から黒髪の青少年にして、纏ってた鎧をとある物に置き換えたわ」


「とある物……?」


「響ちゃんが持つ星穿の神槍よ。あれは元々、響ちゃんの鎧なの」


「……これが?」


俺は星穿の神槍を呼び出してみる。


「そうよ。響ちゃんの鎧を纏めて作り替えたの」


「じゃあ俺の鎧はどうなるんだ?」


「その槍が戦いの中で折れたり砕けたりすると、鎧の姿に戻るわ。その後は響ちゃんの意思で槍にしたり鎧にしたりできるようになる」


「なんか凄い仕掛けだな」


「お姉ちゃん、凄く頑張ったからね〜」


「でもこの槍、折れる気がしないんだが……」


「そりゃ、星穿の神槍はオリハルコニウム製でとてつもなく硬いからそう簡単には折れないわよ」


オリハルコニウム。


簡単に言えばとてつもなく固い金属……らしい。


「それって二度と鎧に戻せなくね?」


「そうでもないよ? 私、一回オリハルコニウムで出来てた剣を折った事あるし」


なんかサラッととんでもない事を言われた気が……。


というか話が反れてる。


「話を戻してくれるか?」


「あ、ゴメンゴメン。……なんやらかんやら弄った後に本気の響ちゃんと戦いたくなって、響ちゃんの体と脳から戦闘記録を作りだして響ちゃんのコピーを作り出したの」


「で、戦った結果……」


「私の完敗。全然勝てないんだよね。で、私は考えたの」


「何を?」


「響ちゃんのコピーと戦いまくれば強くなるんじゃないか……って。で、最近は攻撃が当たるようになってきたわけ」


「昔の俺は凄いんだな……」


「槍が折れると、その姿の記憶とかも戻るから頑張って戦いで折ってねー」


「いつの事になるのかわからないよ……それ」


「じゃあ戦ってみる? 早く折りたいんでしょ?」


「流石に時間が時間なんだが………やるか」


「おーおー。その意気。んじゃ、一発勝負でいく?」


「そうだな。スペルカード一枚ルールでいこうか」


俺と柚希ねぇはお互いに距離を取り、武器を構える。


俺は星穿の神槍を、柚希ねぇは見た事のない槍を構えた。


「なんだ? その槍」


「あ、これ? "夢操の矛"っていって夢を操る矛よ。槍じゃないからね?」


「その矛で俺の夢に干渉してきたってわけか」


「そうそう。やっぱり響ちゃんの頭は回転が凄く早いから好きよ」


「そういうのはやめような? 今は戦いだろ?」


「はいはい。じゃあ先手は譲るね」


「わかった。……はぁっ!」


俺は柚希ねぇに向かって駆け出し、槍を構えた。


そしてすぐに下から思い切り斬り上げる。


「よっと」


柚希ねぇは軽くその攻撃を回避した。


しかしこれは予定通り。


次は斬り上げた勢いを利用して一回転してからの刺突。


「ほいっと」


柚希ねぇは夢操の矛でその刺突を地面へ叩き落とす。


だが、まだ攻撃は繋がる。


何故なら俺が持つ星穿の神槍はもう片方にも刃がついていて連撃に向いているからだ。


俺は叩き落とされた槍の勢いを利用して槍の上下を入れ替えてまた刺突。


「ていっ」


その行動を見たからか、柚希ねぇは槍を叩き落とさずに横へ弾く。


しかし、俺にはこの対策も出来ている。


俺は体勢を低くした。


そして槍を持つ手を後ろで高く上げて槍を手放す。


こうする事で槍が弾かれた時の勢いを殺さず、槍は飛ばされないで回転し、次の攻撃に移る事が可能になるのだ。


「お、考えたね」


「まぁアドリブだから失敗するかもしれないがな」


「なら攻撃に移る前にこう弾かれたならどうする?」


柚希ねぇは俺の顔に目掛けて下から上へと斬り上げた。


俺はそれを避ける。


すると矛は槍に当たり、槍の回転が止まって上へと力が加わった。


「こうかな?」


俺は槍が吹き飛ぶ前に素早く掴み、縦の回転へと対応を変える。


体勢を直し、槍の勢いで柚希ねぇの下から斬り上げた。


柚希ねぇは半歩下がる事で避ける。


柚希ねぇが避けるのはわかっていた。


だからここでスペルを使う。


「秘伝『月架美刃』!」


本当なら念剣『サイコソード』を使ってからなのだが、今回は特例。


槍のままで振り降ろす。


「もらった!」


「甘いよ? 響ちゃん」


柚希ねぇはスペルカードを取り出していた。


「隔離『視認困難の空間格子』」


柚希ねぇがスペルを発動させた途端、槍がいきなり何かにぶつかって止まる。


「なっ!?」


俺は驚き後ろへ飛びのいた。


しかし、その進行方向にも何かあって距離が取れない。


「どんなスペルだ……?」


俺は頭を回転させた。


確か、このスペルの名称は

隔離『視認困難の空間格子』……。


……まさか!?


「俺の周囲に見えない檻が存在しているのか!?」


「ご名答ー。このスペルは相手の周囲に強靭な空間格子を作り出す技。まぁ……実際の空間格子とは全く異質の物なんだけどね」


「……あれ? 柚希ねぇ……って能力持ちだったっけ?」


「私はねー『次元と空間を操る程度の能力』ってのを持ってるの」


「何そのチート能力」


「まぁ流石に限度はあるけどね。で、どうする? 檻の中の響ちゃん?」


「はぁっ!!」


俺は槍を高速回転させて周囲に振り回す。


槍を振り回すたびに空間格子に当たるのだが砕けない。


物凄く強靭な檻だ。


「これで決着……っと」


柚希ねぇは矛の柄で俺を軽く突く。


これで俺の負けが決まった。


「また勝てなかったな……」


「でも、前より強くなったじゃない。お姉ちゃんはうれしいな?」


「あの時と結局変わらないじゃないか。俺は触れる事さえ出来なかった」


「そりゃ力を封印されてるんだからね。力が戻ったらまた戦おう?」


「あぁ、そうするとしよう」


「あ……そろそろ戻らないと寝る時間が無くなっちゃうから帰ろう?」


「そうだな。帰るか」


俺は柚希ねぇと共に命蓮寺へと向かった。


「久々の後書きだそうで。何故か私達が駆り出されちゃいました」


「まぁいいんじゃない? もう師走だし書きたかったんでしょ。とりあえず礼儀として挨拶ぐらいはしておこうね」


「わかりました。今回の後書きの担当は水姫と」


「響ちゃんが大好きな山の守り神、神代柚希です♪」


「で、何をすれば良いのでしょうか?」


「祇音が、今後の作品予定を話せ……って言ってたっけ」


「かしこまっちゃいました。……えっと、この風戸響介編。実はあとすこしでクライマックス的な状況になるそうで……」


「修正前より早くない?」


「宴会シーンはエンディングに持ち越し。幻想郷の猛者達との再戦等は希望があればアナザーストーリーで書きやがるそうです。需要があるかは知りませんが」


「やっぱり最終決戦はやるのよね?」


「あの戦いで完結じゃないですか。やらなきゃアカンとですよ」


「まぁ長いような短いような中途半端な感じだけど頑張ろうかしらね」


「そうでやがりますな」


「それじゃ、感想とか待ってま~す♪」


「失礼致しちゃいます」



―――――――――――――――――










「……山姫様は胸が小さいように見えて実はとても大きいと噂が……」


「あまりジロジロ見られるの嫌いだから布巻いてるんだよねー。だから小さく見えるわけ」


「どんだけ大きいんですか………」


「まぁ今度、一緒にお風呂入った時に見せてあげるね?」


「………機会があれば」

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