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第38話 暇潰しの会話

「え〜っと……昔々あるところに…………」


「それは流石に馬鹿にし過ぎですわ響介様!!」


ウィルが突っ込んできた。


ナイスツッコミ。


「え? 簡単な話っていうから………」


「でも昔話は馬鹿にしすぎです!!」


「わかったよ。………そうだな………なんのジャンルがいい?」


俺がそう問うとウィルは考え込んだと思ったらすぐに口を開いた。


「そうですね………悲しくない話で」


「ウィル殿。なんですか、その中途半端な注文は」


「だって泣きたくないんですもの。だからと言って面白い話と言えば難題になりますからねぇ……」


「そうだな…………ならこんな話でどうだ?」


俺は異空間からノートを取り出した。


題名は……


「ウィルの日記」


「駄目ぇぇぇぇえ!! 響介やめてぇぇぇぇ…………こほん。やめて下さいよ、響介様」


ウィルは慌てて突っ込んだ後、落ち着いていった。


「あ、やっぱり? まぁこれは冗談。本題はこっち」


俺は新たにノートを取り出した。


「今度はなんですか?」


「まぁ聞いてればわかるさ」


俺はノートを開いて、読みはじめた。


「"この世界は神によって創造された。太陽や月、空の星にこの我々が住む地球も。ありとあらゆる物が創造された。"」


「"神は全ての物に名前を与えた。物は名前があるからこそ存在出来る。人間も例外ではない。"」


「"そして創造した神は全てを終えて、長い眠りについた。楽園と、多くの動物達や人間を二人残して。人間は男と女の二人だけだっ。"」


「"二人は考えた。何故、他の生物は数が多いのに私達はたった二人なのだ……と。"…………さて問題。二人の名前はなんでしょう」


「はい!!」


ウィルは問題を聞くと元気よく手を上げた。


「アダムと………」


「アダムと?」


「エヴ〇」


「それ……違う方だな」


「え? 某新世紀アニメの話じゃありませんの?」


「違うな。まぁ……似てるけど」


俺はとりあえず仕切り直して話を続ける。


「"そして二人はある考えにたどり着く。我々が新たに仲間を創造すればいいじゃないかと。"」


「"しかし二人は仲間の作り方を知らなかった。まだ知識が少なかったのだ。そこへ頭の良い動物がやってきた。人の言葉が喋れる動物だった。その動物は言った。"」


「"知識を得たいのであれば善と悪の知識の果実を食べるのです。そうすれば莫大な知識が手に入るでしょう。"」


「"二人はその話を聞いて立ち上がった。その果実を探しに行こうとした。それを見た動物はさらに言った。"」


「"落ち着きなさい。まずは善と悪の知識の果実を想像するのです。"…………さて第2問。二人が想像した果実はなんでしょう?」


俺はまた問題を出した。


正直、顔も知らぬ人物の考える事はわからないだろうな……と考えながら。


「はーい」


するとウィルは某動画のように手を上げた。


「答えは?」


「ドラゴンフルーツ」


「とりあえず理由を聞こうか………何故?」


「私の好物だからですわ。あんなに甘いなら、その物語の中の人も考えたはずです」


自慢げに胸を張って言った。


しかし少し疑問が残る。


「甘い? あれって味薄くないか?」


「あぁ。響介様は食べた事ありませんでしたよね」


ウィルはドラゴンフルーツについて解説を始めた。


「普段、日本のお店に並んでいるのは未熟成のものなんですよ。追熟しない果実なので味が薄いと言われています。ですが、私の家では領地の農家さんに頼んで熟成したものを食べてるのです」


ウィルの家は一国を治めているうえに有名な巨大会社を経営している大富豪。


ウィルはその大富豪の一人娘なのだ。


だから国民とかに頼めば大体の事ができる。


一般人からしたらすごいとしか思えない。


「で、しっかりと熟したドラゴンフルーツを食べると……とても甘いんですの。科学者に調べてもらったら糖度……でしたっけ? 甘さを数字にしたところ20ぐらいまで行きましたの」


比較のために言うがメロンの糖度は16ぐらい。


ウィルの話から推測すると熟したドラゴンフルーツはメロンより甘いと言える。


「ですが熟してしまうと日持ちが悪くなってしまうのです。なので日本のお店へ輸出している間に腐ってしまわないようにするには熟していないのを出さないと駄目なんですの。ですから日本には余り出回らないんです」


ウィルは詳しく説明してくれた。


ウィルの家が経営する会社は子会社が貿易もやっているため、様々な物の流通に関してとても詳しい。


「へぇ………。なるほどな。日本の市販は未熟なやつでトロピカルフルーツと呼ばれるのは完熟なやつという事か」


「そういう事ですね。完熟したのは本当に甘いんです。響介様が私の国へ来て下されば食べさせてあげましたのに」


「悪いな。日本から離れるわけにはいかなかったんだ」


「わかってますわよ。守りたいものがあったのでしょう?」


ウィルは笑顔で言った。


そう。


俺は守らなきゃいけないものがあった。


それ故に日本を離れられなかったのだ。


「そういう事だ」


「……で、主。答えはなんなのですか?」


水姫が話の焦点を戻してくれた。


危ない……話が戻らなくなるところだった……。


「あ、あぁ。答えは林檎だな。なんか良く言われるだろ? 林檎は善悪の知識の実だって。まぁ俺みたいに善と悪の知識の果実って呼ぶ人は少ないな」


「確かになんか良く言われてますね」


「まぁ何故、林檎を善悪の知識の実と呼ぶのかは不明だがなにかしらのわけがあるんだろうな」


「へぇー」


俺はノートのページをめくり、続きを読むことにした。


「んじゃ、続き行くぞー」


「はーい」


「"想像した二人は笑顔になった。とても素晴らしいものだと思ったのだろう。そして言葉を喋る動物は言った。"」


「"さぁ、探しに行くのです。その果実を。二人はその言葉を聞いて、歩き出した。まずは二人の住む楽園の外に近いところ"」


「"楽園はとても広く、全て回るのに1年はかかります。ですが二人は諦めませんでした。仲間を増やしたいから。種族を断絶させたくないから。"」


「"二人はあくる日もあくる日も様々な食糧を食べ続けました。果実、肉、野菜、魚、穀物………色々と食べてきました。そして二人は遂に見つけたのです。"」


「"善と悪の知識の実を。楽園の中心に存在していたのです。しかし只で手に入るほど世の中甘くありません。黒い粘液状の生き物が立ちはだかるのです。"…………この黒い粘液状の生き物は?」


もう話がおかしくなってるが気にせず進めて問題を出した。


「はーい」


「答えは?」


「テラーフィー「おい、ちょっと待て」はい?」


ウィルが危ない事を言いかけたので遮り、ウィルに改めて質問する。


「いいか? 生き物だぞ? お前が言おうとしたのは違うからな?」


「あら。そうでしたか…………う〜ん…………。スライムですか?」


ウィルは少し悩んだ後に答えを出した。


「正解。それじゃ続きな? "黒い粘液状の生き物は言葉を喋りました。俺はここを守る者。ここを通りたければ私を倒していけ"」


「"その言葉を聞いて二人はある行動に出ました。スライムをフライパンのような物で掬い、焚火を起こして焼き始めたのです。スライムの半分以上は液体なので蒸発していきます。"」


「"そして二人はスライムとの戦いに勝利しました。ただし、善と悪の知識の実は創造神に創造された神によってなっていた実を取られていました。この実がつい食べたくなったから食べたそうです。"……おしまい」


「まさかのスライムを蒸発させるとは……中々やりますね……」


「ってか神様は何ちゃっかり善悪の知識の実を持っていきやがってんでしょうかね……」


「まぁいいんじゃない? 人間らしさがあってさ」


「失礼します」


そんな感じで話をしていると襖の向こうから声がした。


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