第37話 命蓮寺へ行く
「皆さん。今日は終わりです。困ったり悩んだりしたら是非………………」
「…………」
俺は美女が人混みに何か言っているところを見つめた。
自分なりの善か悪かを見分けるために。
「そこの方………特に何もしませんよ。ただ降りてきてほしいのです」
人混みへの話を終えた美女はそう言って、俺の事をじっと見つめてきた。
俺を見る目は純粋で真っすぐだった。
どうやら悪ではないようだ。
俺はそれを確信すると高度を少しずつ落として着地する。
「これでいいか?」
「えぇ。ところで貴方は何者ですか? 見た感じでは里の人間じゃなさそうですが………」
「俺は通りすがりの旅人だよ。人里に寄ってただけさ」
俺がそう返答すると美女は暫く俺の事を見続けた。
「まぁいいでしょう。嘘はついてないみたいですし………で、貴方は何を?」
「人混みが出来てたもんで何やってるか気になって上から見てた」
「やっていたのはただの布教活動ですよ? 宗教に興味があるのですか?」
「ない」
「はっきり言いましたね…………」
そんな会話をしてると後ろの方から声が聞こえた。
「主。こんなところに居やがりましたか」
「何をやってたんですか?」
買物袋を持った水姫とウィルだった。
「あら妖怪。主って事は召し使いですか?」
「あぁ。大体そんな感じだ」
「で、もう一方は?」
「私、ウィル・アインス・ウェンツィアーと申しまして……響介様の許婚です」
「許婚までいるんですか。それはすごい」
美女はそういうと考え事を始めた。
そしてすぐに口を開いた。
「響介って言ってましたよね? という事は噂の霊妖魔神の使い手ですか?」
「あぁ。多分それは俺の事だな」
「まさか会えるとは思いませんでした。霊妖魔神を従える人は初めてでしたから会ってみたいと思ってたんです」
なんかめちゃくちゃ目が輝いてるんだが……。
「あ、そういえば名前聞いてなかったな……」
「これは失礼いたしました。私は命蓮寺の尼をやってます"聖 白蓮"と申します」
聖さんは深々と頭を下げた。
なんとも美しい体の姿勢…………って何を考えてるんだ俺は……。
「ところで響介さん達は旅をしていらっしゃいましたね」
「あぁ。幻想郷を巡ってる………いわゆる行脚みたいなもんさ」
「是非私の寺に来てみませんか? 泊まってくださってもかまいませんし……」
「俺は良いが……水姫達はどうする?」
「私はかまいません。主についていくだけです」
「私もかまいませんわよ。見聞を広げていきたいですし」
二人とも賛同してくれた。
正直、寺って言ってたから妖怪は入れないとか思ってたんだが………良い人でよかった。
「んじゃ、頼みます」
「はい。それではついて来て下さい」
俺達は聖さんに連れられて命蓮寺へ向かった。
目の前に中々大きい寺があった。
ここが命蓮寺のようだ。
「ここです」
「中々立派だな」
「中は妖怪だらけですね……変わったお寺です……」
「お風呂入りたいですわ」
俺達はそれぞれに感想を言った。
ウィルだけは要望だけど。
「じゃ中へ入りますか」
「あぁ」
聖さんの後ろをついていく。
その道中、何か不思議な感覚と封印に似た力を墓地の方から感じとった。
足を止めて、墓地の方向を見るが何もない。
なにか……土の下とかに封印されてるのだろうか……。
「響介さまー。おいていきますよー?」
「あぁ、今行く」
俺はその不思議な感覚を体に感じながら、ウィル達のところへ走った。
「聖。おかえりなさい……おや? お客様ですか?」
俺が追いつくと、金髪の女性がいた。
「えぇ。響介さん、水姫さん、ウィルさんです」
「いらっしゃいませ。ようこそ、命蓮寺へ」
女性は深々と一礼して顔を上げた。
「私はこの命蓮寺に住む"寅丸 星"と申します。以後お見知りおき下さい」
「俺は風戸響介」
「私は水姫です」
「ウィル・アインス・ウェンツィアーと申します」
「星、彼らに部屋を貸してあげて下さい」
「わかりました。それでは皆さん、ついて来て下さ……」
星は立ち上がろうとした。
だがその瞬間、星はふらついて倒れそうになる。
「きゃっ!?」
「大丈夫か?」
俺はそれを瞬間移動して受け止めた。
「あ、ありがとうございます。助かりました」
「気にするな」
「こほん……それではご案内致します」
星は気を取り直して部屋へと案内してくれた。
「そういえば響介さんって有名な方ですよね」
「まぁ知らず知らずに有名になってしまったがな」
「知らず知らずって……そんなものなのですか?」
「博麗神社に行って、盗み聞きして、戦い挑まれて、勝っただけ。結構簡単だろ?」
俺は出来事を簡単に包み隠さず話した。
「簡単じゃないですよ。霊夢さんと魔理沙さんは幻想郷でもかなり強い人ですから」
「そんなもんかね?」
「そうですよ。あ、ここの部屋です」
星は襖を開けてくれた。
部屋は中々広くて綺麗に掃除されている。
「ありがとう」
「いえいえ、それでは失礼しますね。どうぞごゆっくり」
星は俺達が入ってから襖を閉めて歩いていった。
「……泊まるところも見つかって飯も食べれて……よかったよかった」
「そういえば主。墓地にとまってましたが何をされちゃっていたのですか?」
「ん? 墓地からなにか不思議な感じがしてな……少し眺めていた」
「響介様も感じましたか? あの感じ……」
ウィルが共感を得たという表情をして言った。
「ウィルも感じたのか?」
「はい。あの背筋がヒンヤリする感じ………あの感じは絶対に出ますね……幽霊が」
気味悪そうに言うのを見て、俺はコケそうになった。
「………まさかのそっち? ってか幽霊が嫌いなら冥界に行けないな……」
「め、冥界……ですか? そんな簡単に行けるものでは無いと思いますが……」
「人里付近の上空に冥界と幻想郷を繋ぐ扉があるんだよ」
「幻想郷とは不思議ですね…………」
「そうだろ? ここには元の世界には無い楽しさがある」
話していると水姫が話に入ってきた。
「主、話がズレてます」
「あぁ、そういえばそうだな。………話は簡単。この寺の墓地には何かあるという事だ」
「何か……という事は特定は出来てないのですか?」
「あぁ。調べるにしてもまだ封印と似た力があるから無理だろう。封印が解けたら調べに行く」
「予定が立ってるようで安心しちゃいました。もしも「残念ながらまだわからない」とか一言で済ませたら「駄主が」とかなんとか馬鹿にしたりするところでした」
「なんか遠回しに馬鹿にされてる気が……」
俺がそう問い掛けると水姫は……
「気のせいです」
キッパリ否定した……目を反らして。
うん、きっと馬鹿にしてたな…………きっと。
「とりあえず封印が解けるまでは調査は無し。幻想郷巡りを続ける」
「わかりました」
「響介様。難しい話はこれぐらいにしておいて簡単な話をして下さいよ」
ウィルが寝転がりながら言った。
難しい話は聞いてて飽きるから仕方ないが……もう少し集中力、持ってほしかったな……。
「なら簡単な話をするか」
俺は暇そうなウィルに話を始めた。




