第36話 人里で寄り道
魔法の森の前に降り立った。
「よっ……と。到着」
「主。少し人里に寄ってみては? 空腹時の時の食料を買っておきたいので」
水姫が指を差した方向を見ると人里があるのが見える。
「それもそうだな。少し寄ってみるか」
「人里………私は初めてですわね」
ウィルは少しウキウキしていた。
初めて行く場所だからだろう……きっと。
「んじゃ行くか」
俺達は一旦、人里へ向かった。
人里に入り、食料が売ってる店に到着、現在形で。
「さて、水姫とウィルは買ってきてくれ。俺は少し用事があるからな」
「用事ですか? なら後で落ち合いましょう」
水姫がそう言って、少し考え込む。
どうやら落ち合う場所を考えてるようだ。
「とりあえず人里の入口にしますか? わかりやすいですからね」
「それでいっか。ならまた後でな」
「かしこまっちゃいました。では後ほど」
俺は水姫達と別れ、単独行動を始めた。
まぁ意外と目指す場所は近かったりする。
「おや? 響介じゃないか」
「こんにちわ。慧音さん」
「寺子屋に何か用でも?」
そう、寺子屋だ。
なんとなく来たくなってしまったのだ。
「いや、少し見学したくなってね………色々と」
「別に構わないぞ。今は昼休みだからな」
「わかりました。それじゃ見学させてもらいます」
俺は慧音さんの後ろを歩き、寺子屋に入る。
するといきなり大きな声が教室から聞こえた。
「覚悟しろ!!」
「なんだと!?」
元気な少年達の声だ。
喧嘩か、チャンバラごっこか、それとも他の何かなのかな?
「慧音さん。この声は?」
「最近、新聞紙でのたたき合いが流行っていてな。恐らくその一部だと思う」
「へぇ。そうなんですか」
「で、入ってみるか?」
慧音さんは教室を指差してそう言った。
「もちろん」
「前から入るぞー」
扉を開けて、俺と慧音さんは教室に入る。
すると中では一騎打ちが行われていた。
「さぁ、この一撃を!!」
「甘いぞ!!」
見ているとなんだか和む。
そう思っていると、一人の子が俺を指差して、
「あ、手品のお兄ちゃんだ」
と言った。
するとどうだろう。
一騎打ちをしている少年達、それを見守る観客が一斉に俺の方を向いてきた。
「よっ」
「お兄ちゃん!! 覚悟ぉ!!」
いきなり一騎打ちの少年2人が襲い掛かってきた!!
何故?
「太刀筋が甘いぞ。そんなんじゃ当たらないぜ?」
俺は二人が持つ新聞紙を受け止めた。
そして、そのまま……
「瞬間移動」
「「えっ!?」」
新聞紙だけを消す。
すると子供達は騒ぎ出した。
「新聞紙どこ?」
「さぁ?」
「手品のお兄ちゃん。本当に凄いねぇ」
襲ってきた2人の少年も驚いている。
「ど、どこ行った?」
「ちゃんと持ってたのになぁ…………」
俺はそこで指を鳴らす。
すると2人の少年の頭に新聞紙が落ちてきた。
「いたっ」
「あたっ」
それを見ていた観客からドッと笑い声が巻き起こっていた。
慧音さんは少し驚いていたようだ。
「相変わらずだな。響介」
「まぁ、得意技ですから。空間座標を弄って対象となる物を選択して…………」
「すまない。それは色々と難し過ぎる」
慧音さんが白旗を振ったように手を横に振った。
まぁ難しいのは認める。
そこへ1人の少女がやってきた。
「お兄ちゃん。なんか他の手品無い?」
「そうだな………ならこの匙を使った手品をやろう。みんな注目〜」
俺は子供達を集めてスプーンという名の匙を取り出し、見せる。
「慧音さん。この匙に何も仕掛けが無い事を確かめてみて下さい」
慧音さんに匙を向けた。
「わ、私か。…………うむ、何もない、ただの匙だ」
慧音さんはそれを受け取り、しばらく観察したり力を加えたりして俺に渡した。
「じゃあ…………そこの女の子。ちょっと来てくれ」
「私? わかったー」
力の弱そうな少女を呼び、俺の横に立たせた。
「この匙を曲げてみてくれるかな?」
「うん。わかった…………んー!!」
少女は頑張ってみるが、曲がらない。
当たり前だろう。
「……曲がらないよぉ」
「ではここからが本番だ。今からこの娘に力を与えて、簡単に匙を曲げられるようにするぞー」
俺がそういうとみんな驚いていた。
意外とスプーン曲げって知らないんだね。
「じゃあまず、利き手で匙の首の部分を持ってー」
「うん」
「それで反対の手で匙の掬う部分の先端を摘んで擦るんだ」
「こう?」
少女は俺の言った通りに持ち、構えた。
そこで俺は少女に耳打ちをする。
「で……ゴニョゴニョ…………わかった?」
「うん。わかった」
「それじゃ、みんなは匙の先端を見ててくれ。慧音さんも生徒達の方へ行って下さい」
「あぁわかった」
慧音さんが生徒達の方へ行ったのを確認して、少女を見やすい位置に立たせた。
「しっかり見てろよー」
「はーい」
少女はしばらく擦り続けた後、俺が指示した通りに匙に力を加えた。
するとどうだろう?
匙が柔らかく曲がってしまったでは無いか。
まずは少女が驚き、次に観客である生徒達と慧音さんが驚いた。
「えー!?」
「すげぇ!!」
「なんで曲がったんだ!?」
教室全体から驚きの声が聞こえた。
「はい。ありがとうねー。あ、この手品のタネは内緒にしておくんだよ?」
「はーい」
俺は匙を受け取り、少女を戻した。
そして教壇に立ち、生徒達に向かっていった。
「以上!! これで手品を終わりまーす」
「ありがとうございましたー!!」
生徒達から元気な挨拶が返ってきた。
ノリが良くて助かったと思った瞬間である。
慧音さんは小走りで近づいてきて、俺の傍で囁いた。
「なぁ、一体どんなタネがあるんだ?」
「慧音さんはテコの原理の3点ってわかりますか?」
「あぁ。支点、力点、作用点の事だろ?」
「そこまで分かるならタネがわかりますよ」
まぁ説明すると匙の首が支点、匙の先端が作用点。
これだけじゃテコの原理は成り立たない。
そこで心理学を使って、匙の先端に意識を向ける。
最後に曲げるところだが、匙を持つ部分があるだろう。
そこに曲げる瞬間に小指を当てて、先端に力を加えると曲がるのだ。
意外とスプーン曲げは物理学と心理学が使われて成たっている。
ちなみにこれは本気で簡単に出来る手品だと思う。
「なるほど………確かに先端を見てると持ち手には集中が向かないからな。よく考えられたものだ」
慧音さんが感心していた。
「そういう事です。あ、時間なので今日はそろそろ………」
「うむ。わかった。また遊びに来いよ」
「わかりましたー。それでは失礼します。みんな、じゃあなー」
「「「ばいば〜い!」」」
俺は寺子屋を出て、歩き出した。
「………さっさと水姫達と合流するか」
そう呟きながら歩いていると、人だかりが出来ていた。
中々の規模だと思うが、一体何があるんだろうか?
「上から見てみるか」
俺は高く飛んで、人だかりの中心を見てみるとそこには謎の美女が居た。
何かを話しているようだが…………。
するといきなり、
「そこの貴方。降りてきてはいかがですか?」
美女に話しかけられた。




