第31話 香霖堂の中で制作活動
魔法の森の目の前に建物があった。
「お、ちょうど良いところに店が」
「外で良く見た事ある物がありますね」
「まぁ良い。中に入ろう」
俺は念で扉を開いた。
すると中も外の世界の物ばかり置いてあった。
「いらっしゃい。何をお求めかな?」
そこに居たのは眼鏡をかけた男だった。
「とりあえずこいつを寝かせたい。良いか?」
「その前に君達の名前を聞かせて貰いたいな。見ず知らずで身元も知らない人に部屋とか貸す訳にはいかないからね」
やはり警戒はされるか。
「風戸響介」
「……あぁ君が噂の人間か。なら別に構わないよ。奥の部屋を使ってくれ」
「すまないな。……店主の名前は?」
「森近霖之助だ。ここで適当に商売をしている」
「なるほど……よっと……売れ行きはどのくらいだ?」
「余りね。名前と用途は能力で分かるんだけど使い方が分からず売れない物が多いのさ」
「能力持ちか。どんな能力だ?」
「"道具の名前と用途が判る程度の能力"さ。ただし欠点としては使い方がわからない事でね。自分で調べないといけないのさ」
「中途半端だな。まぁ中々簡単だと思うが………」
「それじゃあこのパソコンの使い方を教えてくれ」
霖之助は机の上にあるパソコンを指さした。
デスクトップ式か。
「電気はあるか?」
「電気は無いなぁ……それが無いと駄目なのかい?」
駄目だな。
少し無茶があるだろう。
ま、意地でなんとかしてあげるか。
「少し待っててくれ。……店にある物でなんとか出来るかな?」
「あぁ、わかった」
燃料式の発電機はあるみたいだな。
燃料は……無い。
「なら代わりとして……自転車と………あ、人力でよく使う変換機だな。しかもでかいけど蓄電器まである。ラッキー」
「主。何か手伝う事は?」
「そうだな………よっと。この工具箱の中に色々なコードがあるから合うコードを探してくれ」
俺は工具箱を出現させて水姫に渡した。
「わかりました。……コードの量、多いですね」
「まぁな。色々と外の世界では使う事が多かったからな」
「さっさと見つけてきます」
水姫はパソコンのところに向かった。
「さてと……俺は組み立てだな。まずは自転車のチェーンを変換機と繋げて……さらに蓄電器と接続させて……」
俺は少しずつ繋げていく。
「………こういう時、念動力って便利だな。手は汚れないし……。蓄電器の接続部分は……………」
「主。合うコード見つけましたよ」
「お、ナイスタイミング。ちょいとさっき工具箱、取ってくれないか?」
「はい。何が必要なんですか?」
「…………これだな。このコードと……パソコンに合うコード貸してくれ」
「はい。どうぞ」
「……接続!! よし、これで動くかテストだな」
意外とあっさり人力発電機が完成した。
結構スペース取るなぁ。
「テストですか?」
「水姫。体は動くか?」
「いつでも行けちゃいます」
「ならしばらく自転車を漕いでいてくれ」
「発電しておけと?」
「まぁな。俺は一戦交えた後だから頼む」
「わかりました。で、どのくらい漕げば?」
「2分だ。とりあえずパソコンを起動して操作するならそれぐらいで充分だろうな」
「了解です」
水姫は自転車を漕ぎ出した。
それと同時に"ジジジジ"というかんじの音が聞こえ始めた。
「………ん? あら? ここは?」
ウィルが奥の方から歩いてきた。
「お、ウィル。起きたか」
「あ、はい。で、ここは?」
「とあるお店さ」
「………私は勝負に負けたんですよね?」
「どうしてそう思う?」
「ほんの僅かですが……勝負の時の記憶があるんです。魔女の私と姿を変えた響介様の戦いの記憶が…………」
「まぁな。勝負は俺が勝った。本当なら約束を守ってもらうところ……だがな? お前は禁じられた力をコントロール出来てない。そんなお前を野放しには出来ない」
「…………どういう事ですか?」
「他の所に被害を出さない為に俺の所へ居ろ」
俺って不器用だな。
……あれ?
ウィルが泣いてる?
「どうした? 俺と居たくないのか?」
「ひっく………ぐすっ……い、居させて……いただきますわぁ……ひっく……えぅぅ……」
「泣くなよ。そんなに泣いてたら許婚失格だぞ? いつも笑顔を見せてくれよな?」
「ぐすっ…………はいっ!!」
そこへ水姫が歩いてきた。
「主……もう終わりましたよ。あ、ウィル殿。私は鼬の妖怪の水姫と申しちゃいます。以後お見知りおきを」
「これから色々とお世話になりますわ。よろしくお願いしますね。水姫さん」
「……さてパソコンを起動してっと……あぁ、ちゃんと動くみたいだな」
霖之助が覗きこんできた。
「へぇ。こういう物なのか。で、一体どんな事が出来るんだい?」
「ネットが接続されてないから……デジカメの写真を保存したり…………」
ここからしばらくパソコンの説明が続いた。
説明終了。
……疲れた。
「なるほど。理解したよ。まさかパソコンとデジカメが繋がるなんてね」
「まぁ暇な時とか使う時には漕いでおかないとパソコンが使えなくなるから気をつけてな」
「わかった。ありがとう」
「よっ。こーりん。遊びに……って響介じゃないか」
魔理沙が店に入ってきた。
「おぉ、魔理沙か」
「どうされたのですか?」
「遊びに来ただけだぜ」
「あら。その方も魔法使いなのですか?」
「そういうあんたも魔法使いだろ?」
「まぁ力を解放したらそうですね」
「魔法使い同士仲良くしようぜ? 名前は?」
「ウィル・アインス・ウェンツィアーと申しますわ」
「私は霧雨魔理沙だぜ。よろしく頼む」
早速ウィルに友達が出来たみたいだな。
良かった良かった。
「魔理沙。見てくれ。パソコンが動いたんだ」
「おぉ。やったな!! しかしなんかでかい物が付属してるみたいだな」
「まぁバッテリーの代用品さ。俺が作った」
「響介はそこまで作れるんだな。流石私と霊夢に勝っただけあるぜ」
「それ関係ないだろう?」
「それで主。今日の寝床はどこに?」
水姫が忘れていた事を思い出させてくれた。
「……どうするか?」
「なら私の家に来いよ。片付ければ全員寝れるぜ?」
「とりあえず様子見だな。後で案内してくれ」
「おう。ここでの用事が終わったらな」
「俺達は外で待ってるな」
俺と水姫とウィルは店の外に出た。
「そういえばウィル」
「はい。なんでしょうか?」
「お前の禁じられた力への印象を教えてくれ」
この質問をした理由はウィルの禁じられた力をコントロールする為に必要なのだ。
「………不要な力だと思っていますわ」
「なるほど……。で禁じられた力を使うとどうなるんだ?」
「どうなると言われましても…………」
「例えば自分以外の意識に体が支配されるとかな」
「あ、そんな感じですわ」
「他は?」
「自分以外の意識に支配されない場合は力が暴走して周囲1Kmを吹き飛ばしたりします」
「ならウィルは別の意識の人と話した事は?」
「無いですわ」
俺はここで確証を得た。
ウィルがもう一人のウィルとまだ会った事がない→お互いの力を知らない。
だから知らない人の力を急に得ると力が暴発して周囲1Kmを吹き飛ばしたりする。
ようは二人を会わせれば良いわけだ。
「なるほど……理解した。とりあえず夜とか特訓だな」
「かしこまりましたわ」
俺達は話し終えた後、しばらく日の暮れる茜色の空を眺めていた。