第30話 神化と退魔士の魔女
「さてさて………完全に習得してないのに使っちまったが……大丈夫か?」
俺は精神世界でそう呟いた。
すると誰も居ないはずなのに誰かの声がした。
「シンパイハイラナイヨ。ギンロウタチガサポートニマワッテクレルカラネ」
その方向を見ると深紅のオーラを纏った俺がいた。
「お前は……まさか……狂気の俺?」
「ソウダヨ。キミハボクデ、ボクハキミ」
「でも確か狂気の力は弱まってたはずだが……」
「"フラン"ッテショウジョカラ、ボウダイナキョウキヲヒキヌイタダロウ? ソノキョウキヲトリコンダンダヨ」
あぁ、あの時のフランの狂気を取ったのか。
「マァ、ソンナハナシハオイトイテ………キミニシナレテハコマル。キミガキエルトボクモキエチャウカラネ」
「わかってるよ。俺も死ぬのは嫌だからな」
「ナライイヤ。ソレジャガンバッテネ」
狂気の俺は消えていった。
「さてと……本気で行こうか!!」
俺は構えをして力を溜め始める。
「はぁぁぁぁあ!!」
力を溜めると体の周りに赤紫の霧が漂い始める。
そして霧が俺の体にくっついて、赤い鬼の鎧を作り出す。
「"星穿の神槍"!!」
俺が星穿の神槍を出現させると槍が変化して持ち手が長い大剣になった。
最後に白色の巨大な翼が生えた。
そして光が消えて視界が開けた。
「ふぅ………なんとかなったな。サポートしてくれたおかげだな」
「主……その姿は?」
「説明は後だ。とりあえず今はお前とウィルを助ける!!」
「あぁぁぁ…………」
さっきまで苦しそうにしてたウィルの声と青の霧が消えて姿が変わっていた。
ウィルは起伏の無い体だったのだが、スタイルが抜群になり黒い翼を持って、全身に白銀の鎧を身につけていた。
「ふふふ………さて始めましょうか」
「感じが変わったな……ウィルの神化のような物なのか……?」
「あら? 今回のお相手は貴方? 変わった服装をしているのね。是非名前を聞かせて貰いたいわ」
どうやら俺の事は記憶に無いらしい。
もはや別の人と仮定した方が良いだろう。
「まずはそっちから名乗るのが普通だろう?」
「あら。ごめんなさいね。私はウィル・アインス・ウェンツィアー。退魔士の末裔でありながらの魔女よ」
「俺は風戸響介。お前を倒す者だ」
「中々カッコイイ事言うのね。でも残念。貴方は好みじゃないのよね」
「まぁ雑談は後にしよう。今は戦わないとな」
「わかったわ。それじゃあ先攻は貰うわね。"フレイマーキャノン"」
ウィルは手を翳すと巨大な炎弾が出た。
「よっ……と」
俺は炎弾を切り裂いた。
しかし目の前にウィルは居なかった。
「それは囮よ。"グランドプリズン"」
「おっと」
俺は土の牢獄に閉じ込められた。
「さようなら。"ダイヤモンドブレード"」
土の牢獄の天井からダイヤモンドの剣が落ちてくる。
「"瞬間移動"」
しかし俺はそれを避けて、ウィルの後ろに回った。
「さて中身はどうなったかしらね?」
「残念ながら後ろだよ。"星薙の太刀"!!」
俺は変化した星穿の神槍の大剣………"星薙の太刀"を思いっ切り降った。
「っ!? "物理プロテクト"!! きゃっ!!」
ドォォォン!!
それをウィルは防御術でダメージを軽減させたようだ。
だが中々大きいダメージが入っていたようで白銀の鎧に傷がついていた。
「……中々やるわね……。こんなに強い人は久しぶりだわ」
「そいつはどうも。だがウィルも中々だぞ?」
「さて……そろそろ本気でやらせてもらうわね」
「本気じゃなかったんだな。まぁ読めてたけど」
「魔女の本気を見るが良いわ。"インフィニット・ゼロ・ブラスト"!!」
ウィルは巨大ブーメランを3つ取り出して輪の形を組み合わせて作り出し、ゆっくりとその輪の中心に片手を添える。
「はぁぁぁぁあ!!」
そして力をその輪に注ぐと巨大なレーザーが出てきた。
魔理沙のより太いかもな。
「"歪曲障壁"!!」
俺はウィルの攻撃を白い翼を盾にして空間を歪めて作った障壁で防ぐ。
ついでに腕も前で交差させている。
しかしかなり威力が高くて徐々に押されていく。
「中々耐えるわね。殺すには惜しい存在だわ」
「そいつは光栄だな…………だが俺は殺される訳にはいかないんでね」
「なら私と手を組みましょうよ。そしたら私は貴方を殺したりしないわ」
「すまないが断らせてもらうよ。俺が必要としてるのはその姿になる前のウィルだからな」
「私とは別の私? あぁ、あの娘ね。あんな娘が良いの? 私の方がスタイル抜群よ?」
「…………でもな、こんな俺でも必要としてくれて、この未開の楽園"幻想郷"までやってきて。俺が人では無くても心から慕って尽くしてくれて、俺と一緒に居たいから頑張って戦ってくれて、無茶な事を言っても付き合ってくれて、どんなに弱くても強く在ろうとしてくれるウィルが俺は家族として……友人として……仲間として……人として好きだ」
「あら? 愛の告白? でもあの娘にその告白は届いてるのかしらね」
「いや、届かせるさ。この力にかけてぇ!!」
俺は体の力を解放して巨大なレーザーを打ち消した。
「なっ!?」
「俺は念じる事で自らの力を増大させる事が出来るのさ。さて、ウィルはドイツ語と並行世界の戦争を知っているか?」
「……えぇ。並行世界での戦争も分かるわ。私には並行世界を見る魔法があるからね」
「なら"古"をドイツ語にしてみな」
「……!? もしかして貴方は!?」
「その通り。だがまだ言わないでくれ。秘密にしてたいんでね」
「でも何故? 何故生きているの? 確か全員滅んだはずじゃ…………」
「まぁ色々あってな。さてとお話はここまでだ。そろそろ決着をつけようじゃないか」
「……そうね。まぁ勝つのは私だけど」
「さぁお互いに最後の一撃をぶつけ合おう」
「もちろんそのつもりよ」
俺は巨大な翼を広げて〇イングガン〇ムゼロ(EW〇)的な感じで空高く舞い上がり、ウィルはあるだけ全部のブーメランで輪を作った。
輪は6重ぐらいでウィルの元へ向かう程小さくなっていってる。
「究ぅぅ極ぅぅ!! ゲシュペンストォォォ!!」
「"アルティメット・オーバー・ブラスター"!!」
「キィィィック!!」
翼を消してウィルに向かって蹴りで急降下していく。
そしてウィルの超極太レーザーと俺の蹴りがぶつかり合う。
「うぉぉぉぉぉお!!」
「はぁぁぁぁぁあ!!」
最初は俺が少し押された。
その後は拮抗してお互いに譲らない。
しかしその拮抗を破ったのは俺だ。
「おらぁぁぁあ!!」
「え!? 私の最高威力の魔法が押されてる!?」
そしてレーザーを打ち消しながらウィルとの距離が少しずつ縮まってくる。
「貫けぇ!! 奴よりもぉ!! 速くぅ!!」
最後に展開されたブーメランの輪の中を通り、ウィルを蹴り飛ばした。
「きゃあっ!?」
「どんな攻撃でも……蹴り貫くのみ……」
戦いが終わった直後に水姫がやってきた。
「勝ちやがりましたか……しかも何やら告白しやがりましたし……」
「でも恋人とは言ってないから問題ない」
「………私の負けね。お望み通りこの娘の体を返してあげるわ」
「また機会があれば会おう」
「その時は味方である事を願うわ。……じゃあね」
ウィルは気を失った。
「さてとウィルを運ばないとな。よっ……と。近場の魔法の森に向かうとしよう」
俺はウィルをお姫様抱っこして魔法の森を目指した。